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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

春を踏む

作者: 狐鞠
掲載日:2026/04/13

 

 ドラマのような美しい思い出で終われなかった、思い出す度にどうしようもない殺意が込み上げてくる恋をしていた。

 絶対に幸せになんてならないで、一生不幸でいてね。

 私が一生呪ってやるから。




 生まれた時から女の子が好きだった

 今でこそ色んな呼び方があるけど、学生の頃の私はレズビアン、百合、それくらいの知識しか無かった。

 好きになるのは決まってあざとい子。惚れっぽい私は、ねえねえなんて抱きつかれただけで好きになったりしてた。告白はしなかった。何となく、女の子が女の子を好きになるのはいけないんだって、わかっていたから。


 コミュニティがあるのを知ったのは、バーに行けるような年齢になってからだった。


 バーの名前はLily。ビアン専用のバーで、男性は禁止。月に1度はクラブイベントもあって、交流を深めやすい。

 あっという間にハマって、私はいつの間にか常連になっていた。だって、同じ悩みを持つ同士ばかりが来るんだよ? そんな居心地のいい場所ないでしょ。


 そこで出会ったのが、金髪巻き髪のアイドルみたいに可愛らしい顔立ちの、フリルが良く似合う女の子。桜だった。

 一目惚れだった。


 桜はメンヘラ過ぎて重たいと振られたばかりだった。毎日夜電話して、連絡しないと寂しくて死んじゃうと泣き言を言っていた。

 メンヘラ上等! と推しに推して付き合えて。メンヘラ舐めてたな、とため息を着くまでが1ヶ月。

 突然夜中に電話、死にたいと言われ切れなくて朝。そんなことが何回もあった。


「前は男の人が好きで。女の子は初めて好きになったの。男の人なら結婚しちゃえばいいのに、いくらでもつなぎとめられるのに、女の子はそれができないから不安でしかたない」


 そんな事、わかってて付き合ったんでしょ? なんて言えないし。


 桜の友達に会えば決まって。


「このひと、私の彼氏!」


 と紹介されるし。私は男の人っぽいガサツなところがあるからなのかもしれないけれど。体も心も女で、それでいて女の子が好きだった。彼氏、って紹介されるのが嫌だった。


 それでもこたえてあげた。好きだったから。




 ある日を境に、連絡の頻度が落ちた。

 まあ、最終的に浮気をされていた。それも男と。


「子供ができたの」


 言われた言葉が、音として耳に入る。さっきまで賑やかだった店内のBGMも、話し声も、一瞬で消え失せた。


「……は?」


 言葉が出てこないってこういうことを言うんだなと、体験した。


「別れて欲しい」


 ぐっ、と吐き気を催す。私が女の子しか愛せないと知っていて、それでも好きって言ってくれて、付き合っていたのに。


 男と、浮気? 子供ができた?


 視界がグラグラゆらついて、白と黒の点滅した世界になっていく。割れるように頭が痛い。言葉を続けようと息を吐くけど、何も言葉が出てこない。呼吸は乱れて、金魚のようにパクパクと口を動かしていた。

 桜は視界に私を映さずに、女の私だからこれが出来ない、あれが出来ないと言い訳を並べ出す。

 握っていたフォークに力を入れる。このまま腹を、自慢の顔をズタズタにしてやりたかった。


 桜は言い訳を並び終えた満足したのか、ごめんね、と謝る。


「それで終わり?」


 立ち上がってグラスに注がれた水をかける。妊婦だから?知るかそんな事。


「子供共々不幸になれクソビッチ」


 そう言い放って店を出た。




 堤防沿いは春の桃色で鮮やかに満ちていた。


 今、この瞬間3人並んで幸せそうに笑っているなんて、思い出しただけで呪い殺したくなる。


 地面に落ちていた桜の花を踏んで踏みつけていく。ザリザリと砂に混ざって透き通った桃色の花びらが薄汚れてちぎれていく。


 私と幸せになろうって嘘をついたその体が、どうか一生呪われてぐちゃぐちゃになればいい。

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