表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【天使】養殖・第二話(9)

作者: AMAKA

「手指など心やさし」


 て、心から楽しげに【神女しんにょ】は言うた。


「全身の関節をはずしてやるべしそかり。軟体にされたとて、そやつの破格の身体能力ならば陸にあがったタコ以上にふるまえるかもしれぬ」


 ここに至って【天使長】、眉尻下げて草地に手えついた。


「すんまへん【神女はん】、わての心得違いでおました……!」


 うむ、て【母性の仙女】がうなずき、その髪を重力に逆らわすんをやめる。


 扇をふたたび鼻に近づけてた【くしゃみの仙女】も、腕をおろした。


「あーあ、ばり弱い」


 て、【関節撃の仙女】が笑い、かかげたトースト色の手のひらを元の抜けるような白色に戻す。


 これら三人の【仙女】が退き、自分のかたわらに控えるのを待って、【神女】は草原につくばったままの【天使長】に、


「罰そかり。そこな【準民】の娘どもに知らしめよ。たれがこの『畜人の住まう牧場』の『牧場主』であるかを」


「それは……」


 うろたえきった顔あげた【天使長】、「それだけは堪忍しとくれやす、【神女】はん。わての口からはよう言いまへ……」


なむちれ!」


 大喝した。「それが、あれの汝に課す唯一の償いそかり」


 立て、て【神女】に命じられ、【天使長】はのろのろ身を起こし、少女と襟紗鈴えりざべるへ振り返りよった。


「これ、絶対に言うたらあかんことやねんけど」


 心底つらそうにしゃべりだしよった。


「【上位日本】。それがこの一極地方やその他の地域を『標準弁漬け』にして、住民の自由意志を根から奪った『国家内国家』の名前や。……わてはそこから来た」


 言うた途端、何かを失うたように顔ゆがめて、


「古くは『内つ国』や『天下』て呼ばれてた場所で、今は近畿とか関西て表記されとるエリアに、その勢力は存在する。古来、この【上位日本】がその前身たる【日下ひのもと】時代ふくめて、日本ちゅう国のありかたを全部決めてきた。それがええか悪いかは別として」


 言葉切って、ふたりの表情をわずかにながめてから、


「【上位日本】の目的はただひとつ、『自己の保身と温存』や。東国の人間の防人さきもり化も、幕府による開拓や鎖国も、一極に維新政府を置いたんも、すべてはおのれの安寧安穏を守りつつ、他を動かすために考えられた方策やった。なかでも一極地方は日本最大の平野部、まさに『駒場』にふさわしかったんや。……じょじょにグローバル化および人口増大する世界の歴史の流れの中、『御恩と奉公』や『富国強兵』で動いてくれる『兵力労働力』がどうしても欲しかったから」(『【天使】養殖・第二話(10)に続)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ