予想外の推薦
──学園は試験結果を待つ生徒たちでざわついていた。
リオもその一人で、結果が発表されると、試験結果が予想通り、選抜試験には進めなかったことを確認した。
「やっぱりな……」
試験での自分の魔力操作に対する不安は、見事に現実の結果として返ってきた。
周囲の生徒たちは合格を喜び、リオはその反応を黙って見つめていた。
──その日の午後、学園の掲示板には「推薦生徒名簿」が掲示されることとなった。
生徒会と教員が推薦する優秀な生徒が選ばれ、次の試験に進むための推薦を受けることができるというものだ。
リオは何となく、その名簿を見に行った。
「まさか、俺が推薦されるなんて……」
呟きながら掲示板を眺めていたリオの目に、驚くべき名前が飛び込んできた。
「リオ・クロス……?」
その名は、選抜試験には進めなかった自分の名前だった。
推薦を受ける理由に思い当たる節がないリオは、ただただ驚愕の表情を浮かべる。
(推薦……? でも、どうして俺が選ばれたんだ?)
──その後、教員室で、リオは学年主任のシルヴァ先生から、思いもよらない話を聞くことになる。
「リオ・クロス、君に推薦を出すことになった」
リオは一瞬、その言葉を理解できなかった。
「は? でも、俺は試験の結果が良くなかったんですけど……」
シルヴァ先生は静かに答える。
「確かに試験結果は芳しくなかった。しかし、それだけで全てが決まるわけではない。君が示した可能性には、他の生徒にはない何かがあった」
リオは驚きながら、どういうことか説明を求めた。
「俺に、そんな可能性が?」
「君が先発試験で行った魔力操作には、他の生徒たちとは違う“独自の何か”があった。試験を通じて、魔法の使い方が他の生徒たちとは根本的に異なっていたんだ。君が発揮した魔力には、正直なところ予想外の可能性を感じた」
リオはその言葉に戸惑いながらも、少しだけ自分の心の中で希望を抱き始めた。
「でも、俺にはまだ魔法がまともに使えないじゃないですか」
シルヴァ先生は優しく微笑む。
「君が魔法を使うために必要なのは、完璧な操作だけではない。君の魔力には、他の誰も持っていない“本質的な力”が秘められている。それが試験を通して少しずつ見え始めたんだ」
リオはその言葉に驚き、少し考え込む。
「本質的な力?」
「そう。君の魔力には、これから大きな成長を見せる可能性があると、私は感じた。そのため、他の生徒たちと同様に、君にも推薦を与えることにしたんだ」
リオはしばらくその言葉を噛みしめながら考えた後、決意を固めるように言った。
「分かりました。推薦を受けることにします」
シルヴァ先生は満足げに頷く。
「いい返事だ。君の力を引き出せるように、私たち教員もサポートするつもりだ」
──その日の夜。
リオは自分の部屋で、一人考えていた。
推薦された理由が分からないまま進むことに不安はあったが、同時に少しだけ希望を感じていた。
(本当に、俺に何かがあるのか? それとも、ただ単に偶然なのか?)
リオは再び《アルカノス》を取り出し、そのページをめくった。
だが、その中に書かれている言葉は、依然として理解できる部分が少なかった。
それでも、リオは決意を新たにする。
(もしこれが俺の道なら、進んでみるしかない)
──翌日、推薦されたことを伝えるため、リオは仲間たちに話をした。
まずはカグヤに話を聞いてもらうことにする。
「リオ、推薦されるなんて……すごいじゃないか!」
カグヤは少し驚いた表情でリオを見つめていた。
「うん、俺も驚いてる。でも、どうして推薦されたのか、全然分からないんだ」
カグヤは少し考えてから言った。
「まあ、リオの魔力には他の誰にもない“何か”があるって、教員は感じ取ったんだろうな。焦らずに、その力を伸ばしていけばいい」
リオは頷く。
「それができればいいんだけど……」
カグヤは微笑んだ。
「大丈夫だって。君ならできるさ」
リオはその言葉に励まされ、少しだけ心が軽くなるのを感じた。
──その後、リオは推薦を受けて、特別な訓練や授業を受けることになった。
まだ不安を抱えながらも、少しずつ自分の力を信じることができるようになり、他の生徒たちとも競い合いながら、次のステップへと進んでいく。