表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

試練と再挑戦

──先発試験を終えた翌日。


リオは食堂に向かう足取りが重かった。試験の結果は予想通り、失敗だった。

他の生徒たちは次々に試験を通過していき、リオは自分だけが取り残されているような気がしていた。


(やっぱり、まだ無理だったか……)


試験での失敗をどうにか乗り越えたが、心の中でどこかに「足りない」という思いが残る。

それでも、リオには他の誰にも言えない秘密があった。


(《アルカノス》を使ってみる方法は、まだ完全には掴めていない。だけど、少しずつ進んでいる気がする)


リオは《アルカノス》を持っていないふりをしながら、その力を少しずつ試していた。

誰にもバレないように、自分だけで。その秘密を守ることが、今のリオにとっては最も重要なことだった。


食堂の中、カグヤがリオに声をかけてきた。


「リオ、昨日はどうだった?」


リオは少し考え込み、やがて無理に笑顔を作る。


「うん、まあね。ちょっと失敗したけど、次に向けて頑張るよ」


カグヤはリオの表情をじっと見つめるが、特に何も言わずに頷く。


「リオが頑張るって言うなら、きっと大丈夫だろう。でも、無理はしないようにね」


リオはその言葉に感謝しながらも、心の中で少しだけ冷静に答える。


(無理はしないつもりだよ。むしろ、少しずつ確実に力をつけていくつもりだ)


──その日の午後、リオは一人で学園の図書室へ向かう。


試験で失敗した理由は、魔力操作の制御にまだ足りない部分があったからだと感じていた。

だが、試験で使った方法が完全に間違っていたわけではない。

その方法に少しずつ調整を加えながら、リオは《アルカノス》の力を使いこなす方法を探ることに決めた。


リオは図書室にこっそりと入り、目立たないように古い魔導書を手に取った。

その書物には、《アルカノス》に関連する知識はほとんど載っていなかったが、魔力の制御に関する記述がいくつかあった。


(これだ)


リオは書物の中で魔力の流れに関するページを見つけ、それをじっくりと読み込んでいった。

魔力を扱う方法、流れを捉える技術。それらを少しずつ組み合わせていけば、きっと新しい方法が見つかるはずだ。


その後、リオは訓練場に向かい、誰にも見られないようにそっと《アルカノス》を手に取る。

周囲には誰もいない。リオは深呼吸をしてから、魔力を手のひらに集め始めた。


「試行開始──」


その瞬間、リオの周りの空気がわずかに震えた。

魔力がゆっくりと動き始め、リオの手のひらから広がり始める。しかし、制御が不完全だったため、すぐに魔力が暴れ、リオの体を圧迫するような感覚が走った。


(くっ……まだ、ダメだ)


リオは焦らず、冷静に魔力の流れを調整する。


「──もう一度」


静かな集中の中で、リオは再び魔力の流れをつかみ、少しずつ力を引き寄せていった。

手のひらから放たれた魔力は、今度こそ穏やかに、安定した状態で収束し始めた。


「できた……」


リオは小さく呟くと、少し肩の力を抜いた。

まだ完璧には使いこなせていないが、確かに魔力の制御は前よりも上手くいったと感じていた。


(これなら……次の試験には間に合うかもしれない)


リオは再び魔導典アルカノスを手に取り、今後の練習に備える決意を新たにした。


──翌日、先発試験の結果が発表される。


リオの結果は予想通りだった。彼は選抜試験には進めなかったが、少なくとも他の生徒たちに遅れを取ることはなかった。

しかし、試験の結果を見守る周囲の生徒たちは、リオがどんな方法を使っていたのかを知る由もなかった。


リオはその日、再び魔力の使い方を研究するために、夜遅くまで訓練を続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ