暴走と影の目的
──歪みゆく訓練場。
リオの手の中で《アルカノス》が激しく震え、青白い光を放つ。
魔力の渦が暴走し始め、空間が不自然に歪んでいく。
「《アルカノス》……なぜ、暴走するんだ?」
カグヤが声を張り上げる。
「リオ、逃げて!制御できなければ巻き込まれる!」
だが、リオは動けず、魔導典の中から低く響く声が聞こえた。
「選ばれし者よ……お前の力はまだ覚醒の途中。だが、暴走は禁忌だ」
同時に、闇の中から黒いフードの人物が現れる。
冷たい瞳がリオをじっと見据え、静かに言った。
「リオ・クロス、お前の力は我々の目的に必要だ。恐れるな、使いこなせば無限の可能性が開く」
リオは必死に抵抗しながらも、《アルカノス》の暴走が激しくなっていくのを感じた。
「誰なんだ、お前は……?」
フードの人物は薄く微笑む。
「私はお前の力を引き出すためにここにいる者だ。そして、お前の家族の過去に深く関わる者でもある」
暴走の影響で、空間は裂け、魔力の波動が学園全体にまで広がり始める。
カグヤはリオに叫んだ。
「リオ!もう一度、集中して!お前ならできる!」
リオは震える手で《アルカノス》を握り直し、強く心に決めた。
「俺はこの力を……自分のものにする!」
強烈な光が訓練場を包み込み、暴走は徐々に鎮まっていった。
フードの人物はその様子を見届けると、静かに背を向けた。
「これからが本当の戦いの始まりだ、リオ・クロス……」
──夜の学園。
リオは静かに立ち尽くし、拳に力を込めた。
「まだわからないことだらけだ。でも、絶対に負けない」
闇の中、誰かが静かに笑っていた。