君との再会と別れを繰り返しても、結局は戻ってくる愛だからー交流企画小説ー
早過ぎたと言えば、それだけの経験でしかないと誰かが話していたのを思い出す事もあるだろうと、一枚の写真を見つめているその人物は「春沖 奏汰」と呼ばれている男性。
春沖が見ている写真には涙を両頬に流しながらも、春沖の右手を握り締める女子高校生の姿が映っていた。
女子生徒は茶色の髪の毛が肩よりも長めのストレートで、パッと見た感じ涙が似合う様な儚げな女子生徒には見えない。
春沖はそんな女性生徒の写真を指先で撫でながら、1人口許に笑みを浮かべている。
「あの頃と比べて陽菜は成長したよなぁ……」
「あれ? 何見ているの? って……あの時の!!」
陽菜と呼ばれている女性が春沖の手に握り締められている写真を覗き込んで慌て始める。
「懐かしいだろ? 陽菜が最初で最後の大号泣をしていた時の写真」
「止めてよ~! もう、奏汰はなんでもかんでもあの時の私と比べ過ぎだってば!!」
「ごめんごめん、陽菜は今も充分素敵な俺のお姫様だから安心して?」
春沖がそっと陽菜の手を握り締めて、優しく微笑みを浮かべると陽菜はほんのりと頬を染めて……小さい声で「バカ」と告げる。
腕の中に閉じ込めている陽菜を春沖はそっと抱き締める、それだけでも陽菜の心は幸せに満ちる事をお互いに理解し合っているのは、この高校時代の出来事があったからだ。
――――
「どうしても……どうしても、行っちゃうの……?」
「ごめん、これだけは叶えたいんだ……陽菜の事を置いていくのは辛いけれど……」
春沖は陽菜の左手をそっと握り締めて、その手に微かな震えを感じる。
それが陽菜を悲しませているとは充分に理解はしているが……それでも、春沖の決意を変える事は出来ないが。
春沖の夢である仕事に就く為に、春沖は大学を地元から出て遠方の大学を受験し受かっている。
だから、この日、陽菜は見送りの為に駅のホームに来ていたが春沖の姿を見るや否や……大粒の涙を流し始める。
「いやぁ……奏汰……行っちゃやだぁ……」
「陽菜……ごめん……」
小さな子供の様に駄々をこねる陽菜を見るのは春沖には辛かった。だが、その手を離して春沖は電車に乗り込んで地元を出て行く。
その別れがあってから5年後の今、春沖は陽菜の前に立っていた。
「奏汰……お帰りなさい」
「ただいま。陽菜、手を出してくれる?」
春沖は左手を差し出す陽菜の手を優しく握り締めて、その薬指に光るリングを通した。
そのリングに驚いた陽菜は目を見開き、徐々に瞳の中に涙を溜め込んで……流した。
「かな、た……」
「俺だけのお姫様になってくれませんか? ……嫌なんて言わせない」
「言わないもん! 大好き! 奏汰!」
陽菜の身体を抱き締める春沖に、陽菜はそっと瞳を伏せて思い出す。
あの日の涙と手の温もりが陽菜と春沖の人生を静かに導いていく――――。