聖女とは
ランスは咳をして話し始めた。
「たしかに、以前は聖女を王宮へ招き入れたこともあります。その後、聖女はその国の王太子と結婚しました」
「そうだろ、それがどうした」
王太子がそれが当たり前の様に言った。
「グリアサ王太子殿下、その後、その国の貧民地区に瘴気が発生したので、王太子妃となった聖女はそれを浄化する為に王宮から出ようとするとそれを留められたのです」
ランスがそう言うと、グリアサと呼ばれた王太子が彼を睨みつける。
「そうだろ、貧民地区などほっておけばいいのだ」
グリアサの言葉を無視するかの様に、クリスは続けて言った。
「その後、瘴気は商店街まで広がり、やがて貴族地区までやって来たので、貴族達はやっと重い腰を上げて、聖女に要請をした」
「それでどうなった」
グリアサはランスを睨みつける。
「要請を受けた聖女でしたが、時すでに遅く、瘴気は国を覆い尽くすぐらい強大になり、聖女一人だけの力ではとても浄化できずに、多くの神官達が犠牲となり瘴気は消滅した」
そのことを聞いて、グリアサは顔を青くなった。
「それでは、聖女はどうなった」
「力を使い切り亡くなった。その後、王太子殿下は悲しみにくれて、髪の毛を剃り彼女や神官達の鎮魂の旅に出られたそうだ」
ランスは目を閉じて静かに言う。
「そんな」
グリアサは呆然とする。さらにランスは言葉を続けた。
「まだ、ありますよ。聖女が何故、王宮へ招き入れることを禁止られているか」
「他にあるのかよ」
グリアサがランスを睨みつける。
「はい、ある国では、ある王子が婚約者がいるのにもかかわらず、ある聖女に惚れて、婚約者をその聖女を除け者にしたなどの偽りの理由で婚約破棄と国外追放にして、聖女と結婚した」
「偽りの理由でだと」
グリアサがランスに訊ねた。
「はい、その婚約者が聖女を虐めていたという理由で」
そのことを聞いたグリアサは呆然となる。
「なにか、あなたも同じことを行なったのでは」
呆然としているグリアサにランスが言う。
「それは、あいつがオレよりも、優秀だからだ。国の頂点に立つ者よりも優秀な者は要らない」
「バカじゃあないの、一人だけで国は廻らないのに」
ランスの傍にいた女性が彼を睨みった。
「お前は何者だ」
「ランスの妻である。エミモと申します。殿下」
エミモと名乗った女性はさらにグリアサを睨む。
「ところで、先程、言っていた。聖女は偽物で、王妃になり、二人で贅沢を繰り返し、国の財政が破綻寸前となり、弟王子が立ち上がり、二人を断崖して、国を立て直す為に奮闘したそうですよ」
「なんだって」
ランスの言葉にグリアサは呆然となった。
「今は、その国が主体となり聖女を護ることになったのですよ」
ランスは言葉を続ける。
「そんなのは聞いてはいないぞ」
「そうですか、国王陛下は、そのことには無関心ですから、あなたにも教えていないのでしょう」
エミモは軽蔑する様に見た。
「知らなかった。聖女の存在がそんなことになっているなんて」
グリアサは呆然となる。
「だからこそ、あの子が、聖女だと陰徳しなければいけなかったのです」
「なんだと、それでは、あいつをどうするつもりだったんだ」
グリアサがランス達を睨みつけた。
「卒業後、貴族籍からプレニアを抜いて、聖女としての旅に送り出す予定でした」
「アイツの貴族籍を抜く予定だっただと」
グリアサが驚いて、ランスを睨む。
「当たり前です。聖女には貴族籍は邪魔なのですよ」




