馬鹿王太子がやって来ました
ある領地の屋敷の書斎にて、金髪のその領主が机へ腕をつけて椅子に座ってある手紙を見ていた。
「そうか、うまく、3カ国ほど越えることができたか」
彼は微笑んだ。その手紙は彼の娘からで、彼女はこの国の王太子の元婚約者であったが、あらぬ疑いをかけられて、婚約破棄をされて、国外追放にされた。もっとも、彼にとってはそのことは分かりきったことだった。
「やはり、あの王の息子であったな」
彼がそう呟いていると、ドアを叩いて、一人の茶髪の女性が入ってくる。
「あなた、あの馬鹿が、思っていたとおりに、やって来ました」
「そうか、でも、一応、会う時は殿下と呼んでおいた方がいいよ」
その女性の言葉に彼は柔らかく言った。
「ですが、あの馬鹿は、あの野郎の息子、わたくしには、礼儀を持つ理由はありません」
彼女は瞳に怒りを込めて言う。
「それはそうだな、国王はキミの妹君を婚約破棄をして、国外追放したのだからな」
彼はそのことを思いながら言った。
「おそらく、あの馬鹿はあのことを知らないと思いますけど、父親と同じことをしてしまうとは、本当に馬鹿ですね」
二人は呆れ顔となり、応接間へ向う。
立派な服を着たグレーの髪をした若者は苛つきながら、長椅子にドカリと座り、用意されたお茶を飲みながら周りの調度品を見て待っていた。
二人が入ってくるなり、大声を出す。
「なんだ、このお茶は、超一流品のお茶じゃないな」
「すいませんが、これが我が家での最高級のお茶なので」
領主が頭を下げると、若者は怒りだし、周りの調度品を指さしながら言った。
「お前は領主だろ、調度品は超一流品にすべて揃えるべきだろが」
「それは無理な話しです。それらを全て揃えるのはこの領地の数年分の税収が必要ですよ。それに少しづつ揃えているのですよ」
領主は真剣な顔をする。
「それは当たり前だろ、国民や領民はその為に存在するのだから」
王太子がそれが当然の様に言うと、領主は頭をかかえ頭を振った。
「王族や領主が贅沢する為に国民や領民が居るのではありません」
そのことを、聞いた王太子は腹をたてるが、本来の目的を思い出す。
「おい、ランス、お前の娘プレリアが聖女だったそうだな、何故、黙っていた」
「はて、プレリアってどなたですか」
ランスと呼ばれた領主は首をわざとらし捻った。
「お前の娘だろうが」
「確かに、プレリアという娘はいましたが、我が貴族席から抜きました」
その言葉に王太子は目を大きく開く。
「なんだと、どうして、プレリアの貴族席を抜いたのだ」
「どうしてですって、それは、王太子殿下、あなたが命じたからですよ」
ランスはそれが、ごく当たり前の様に言った。
王太子はそのことを思い出す。
「だが、お前はプレリアを俺の婚約者にする時に何度も了承しなかったのに」
「あの時は、貴方のワガママでしたので、なんとかなったのですが」
そのことを聞いた王太子はランスを睨みつけた。
「そうだ。それがどうした」
「ですが、今回はプレシアの婚約破棄と国外追放及び、貴族席抜きは王命として出されたのですよ。お忘れですか」
そう言われて、彼は自分でそう言ったことを思い出す。
「それはそうだが、聖女だったら話が、変わってくる」
それを聞いたランスはわざとらしく首を捻った。
「おっしゃていることがわかりかねますけど」
「なんだと」
王太子はさらにランスを睨みつけた。
「それに殿下、聖女だったらなんなのですか」
ランスは王太子を睨み返す。
「婚約破棄したことをなしにする」
そのことを聞いたランスは深くため息を漏らした。
「殿下、残念ながら聖女と王侯貴族は結婚はできません、そのことは全世間で決められたことです。それと、王族が、公式な場所での発言は消すことはできませんよ」
「たしかにそうだが、過去に聖女は王族に向かい入れられていた」
王太子は大声を出す。
そのことを聞いたランスは呆れてしまう。
「たしかに、昔はそんな傾向がありましたが、あることで、それは国を傾きかける危険なことになる可能性があるとゆうことでそれ以降は、聖女は自由に動ける様に補助をすることが国々で決められました」
「そのあることとは、なんだ」
王太子が彼を睨みつけた。
その様子をランスは呆れてしまう。
「それでは説明しましょう」
彼は咳をして話し始めた。