コメディ『絶対に模倣ができない犯行』
俺は世の中を騒がした数々の有名事件を完璧に模倣してきた男。
三十億円事件、金座金塊強奪事件etc……
どんな難事件も手口を看破し、模倣し、世間をより騒がせ、警察を嘲笑ってきた。
犯罪者達も自分の正体がバレたんじゃないかと戦々恐々としていることだろう。
フッ、どんな犯罪も俺の手にかかればチョロいぜ――そんな風に思っていた時期が俺にもありました……
俺は世間を騒がせている『連続ATM強奪事件』の現場へとやってきていた。
「無理だ」
現場を一目見て衝撃を受けた。
「この事件は模倣不可能だ」
自惚れていた自尊心を見事に打ち砕かれた。
犯人の取った手段は分かる。
「それでも真似ができねぇ!」
なんたる屈辱だ!
「あ、ありえねぇ」
無惨に破壊された自動ドアの奥、ATMが根こそぎ奪われていた。
「やはり間違いない」
警察が頭を悩ませている事件の手口は分かったが模倣できない。
ただの人には不可能な犯罪。
「俺……足洗おうかな?」
無力感と絶望感に襲われ、己の卑小さを痛感しちまった。
ちょうど犯人達がATMを担いで通り過ぎて行く。
「「ウッホ、ウッホ、ウッホッホ!」」
『連続ATM強奪事件』――それは2頭のマウンテンゴリラによる力技の犯行だった。