第八十話 [休日]「女性陣」
前回、お風呂に入った男性陣は、それぞれの特訓を行っていた。その中で、ノアはみんなに仲間の話を行う。
木製の床の上を裸足触れる。夜空に晒される肌に風が当たり、濡れた石床を踏み込む。
湧き上がる湯気を視界に入れた白髪の少女は、嬉しそうに笑った。
「わぁぁぁあ!!!!露天風呂?!?!?!」
▶︎第二勇者パーティ所属【アイス】
「元気だね。転ばない様にね?」
▶︎[回復の勇者]【ヒーリェ】
タオルで前を隠しながら、シャワーの前に移動する。続々と入室する彼女らに押される勇者は、困惑しながら桶を取った。
「別に…一人で入れる…」
▶︎[魔法の勇者]【アイリス】
「でも病み上がりでしょ~?お姉さんに任せてよね!!」
▶︎第二王国前線指揮官【ミスリラ】
「そだよ!!安全第一手助け必須!!」
▶︎勇者学校特待生【セリア】
「……既視感(懐かしい)」
▶︎第二勇者パーティ所属【リーラ】
付属のシャンプーを手に取るリーラに後ろから抱きついたセリア。驚いたリーラは、焦って振り向いた。
「な……?!(何?!)」
「リーラちゃん…?まだ大きくなってるの?」
「えっ……(困惑)」
「やっぱり食べ物なのかなぁ~…なんかこう…フィット感がレベルアップしてる気が…」
「セリアちゃん!!ヒー姉ぇも凄いよ!!」
「!!!」
「あはは~変な感じ~~」
胸を揉みしだくミスリラを笑いながら捕まえたヒーリェは、泡立てたスポンジを手に取り身体に当てる。
「ほら。早く入るよ。」
「うん!!えへへ!!」
嬉しそうに泡立つミスリラ。横目で見ていたアイリスは、少し落ち込み呟く。
「…別に……一人で入れるし…」
「お姉ちゃん!!背中流しっこしよ?」
「…なら…私が流してあげる」
少し微笑み魔法を発動すると、アイリスは詠唱を始めた。
「ロックウォーター」
「!!何?!」
水の紐がアイスを拘束し、アイリスの目の前まで移動する。椅子に座ったアイスの背中を、小さな指が軽く触れる。
「…いい子。じっとしてね?」
「ぅぅ…拘束なんて要らないのに…」
「はしゃがないって約束できる?」
「ぅ……」
「…ほら。良いから任せて?私の方が…お姉ちゃんなんだから……」
髪を洗うアイリスは、目の前の妹に興味を示す。
「……ほんとに…似てる……」
髪質やツヤ、肩からくびれに掛けて全てが私と同じ。見た目や声性質すら、見分ける方法は恐らく…
「髪の長さだけ……」
伸びたアイスの髪を優しく撫でると、アイスは嬉しそうに振り向いた。
「えっと…お姉ちゃん……?」
「…!!」
瞬間、アイリスは自身の胸を凝視した。
「……なんでここだけ違う…」
「え?」
ハイライトを失ったアイリスは、周りを見渡す。
アイス▶︎推定C リーラ▶︎推定C ヒーリェ▶︎推定D
「…」
続いて辺りを見渡すと、アイリスの瞳は輝いた。
セリア▶︎推定A ミスリラ▶︎壁
「……まぁ…私はまだあるし…」
胸を張ったアイリスは、少し誇らしげに胸を張った。体を洗い終わったリーラは、体を隠しながら湯船に浸かる。
「……ふぅ…(疲)」
想像以上に、片手での生活に慣れない。
お湯に体を沈め、リーラは右手を空に掲げた。
「この腕だけは…守らないと(後悔)」
目を瞑り集中する。
今の私が強くなるためには……
「【マナリンク】の獲得…(でもそれは)」
回復にも適応されるのか?
アイスマナやリーフマナとは違い、回復専門のマナなんて聞いたことが無い。
増してはアイスちゃんやセリアちゃんと違って、私にはマナが見えない。
「…やだな…(私だけが)」
取り残されるのは……
「…考え事?」
「…!えっと…まぁ……(同様)」
隣に座ったヒーリェは、不思議そうに湯船に浸かる。
「…昼間は……ごめんなさい。配慮が無かった。」
「!いや…全然…大丈夫です……(本当に)」
「…前に王国で話した…マナの話。悩んでるのなら、しっかりみんなに聞いてみるのも手だよ?ミスリラ以外の女性陣はみんな魔法適合者だから、遠慮なんて要らない。」
「……まずは…一人で考えます……(じゃないと)」
「……それは、誰かに言われたの?」
「!!」
首を傾げリーラを見ると、彼女はすぐに視線を逸らした。肩の下がり方や、目線移動、呼吸の変化。ヒーリェは空を見上げると、優しく呟いた。
「……一人で悩みを抱えるのは、拒絶を恐れているからですか?」
「…え?」
「…私の……友達の台詞。第二魔王軍統括の…シャネスって言う人の…」
懐かしそうに星を見上げると、ヒーリェは寂しそうに笑った。
「すっごく怖い。私は今回の戦争で、戦うのが怖いんだ。」
震える肩が、嫌という程心を締め付ける。
ジンさん。シャネスさん。
私がどれだけ、2人に救われたか……
どれだけ…2人を尊敬していたか……
「…こんな話…みんなに出来ないんだ。…絶対…休む様に言われるから……」
不器用に笑う勇者に、リーラは頷いた。
ああ……なんて…優しいんだろう
自分の気持ちを押し殺して、みんなの為に隠す。
私の気持ちを楽にする為に、隠した気持ちをうち明かす。
みんながみんな、不安を持っている。
そんな中、この人は……
「…もっと……自分らしく生きた方が良いですよ…」
「……うん。」
「もっと……素直に生きるべきです。」
「…うん。」
「我慢した人は、その分恵まれるべきだと思います。勇者様は……溜め込みすぎですよ。」
「…それは、お互い様じゃないかな?」
「……全然…違いますよ……」
勇者様と違って、私はみんなの足を引っ張り続ける…
何も出来ない私が苦労するのは当たり前。
でも勇者様は、……
「…勇者様は…」
「私は勇者になる前、戦争で助けられてばっかりだった。」
「…え?」
「逃げて、逃がされて、狙われて、助けられて、悔やんで、泣いて……1人で強くなれる人なんて居ないよ。そんな完璧な人は…存在しないよ。」
水面に映る過去の自分に、ヒーリェは問いかけた。
「どうして1人で悩むの?全ての元凶を自分と結びつける理由は何?」
「えっと……(困惑)」
「…人間性が、そうさせるんだよ。理由なんて、そんなもの。私がリーラちゃんを気にかける理由は、昔の私に似てるからかも。」
肩に頭を乗せた勇者は、目を瞑りリーラに答えた。
「1人じゃないよ。仲間を…信じてあげて。」
「……信じる…っていうか…信じてはいます…ただ、私自身の気持ちが壁になってるって言うか…止めてるって言うか…」
「…なら……自分を…信じてあげて…」
「…」
自分を…信じる……?
「…無理ですよ。…それは…無理です…」
立ち上がったリーラは、足早に風呂から上がった。
体を拭きながら髪を乾かす。ふと、鏡に映った涙に、リーラは酷く…嫌悪した。
「…私はそこまで…」
前向きになれない。
次回「みんなが私に、そう言った」
「…やっぱり私じゃダメなのかな。」
夜空を見上げ、目を閉じる。
「……やっぱり…私は…シャネスさんのようになれない。リーラちゃんの心の穴は…きっと…」
私の力じゃ…埋まらない。
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