第七十七話 [休日]「ロゼとセリア」
前回、街を歩くリーラとエリックとヒーリェは、雑談を挟みながらドリンクを飲んでいた。
エリックは、推薦を蹴った理由を話し、ヘルアと同期だった事も判明する。
一方で、リーラの判断ミスを証明するため、ヒーリェは自ら腕を切り落とした。
自覚のない代償。ヒーリェは、【痛み】を無くしていた。
第二勇者パーティの男性陣が泊まる宿。
夕日が上がり始め、二人の特待生がベットに腰を下ろしていた。
【ロゼとセリア】
「…えっと…?」
▶︎勇者学校特待生【ロゼ】
困惑する特待生は、至近距離に座る少女に言葉を失う。
「…こ、これは??」
「…寄りかかってるだけ~。ダメかな?」
▶︎勇者学校特待生【セリア】
甘い匂いが香り、柔らかい肌がロゼの肩に触れる。
「き、今日は何時より積極的だね……」
「……うん。」
動揺を隠せない青年に、少女は語り始める。
「…三年前の第三魔王軍前線地帯。私が初めてロゼくんと出会った場所なんだけど…覚えてる?」
「……うん。忘れないよ。」
「…凄く、不思議な感じだった。初めて出会ったのに、私の【セリアリンク】の事知ってて、私に告白してきて。」
「うっ……」
「…私はこう見えて…鈍感じゃないんだよ?……記憶に無いロゼ君との日常を周りの皆が知ってて、凄く戸惑ったの。」
ロゼの腕を握り、更に寄りかかったセリアは、涙目でロゼの目を見る。
「もっと前から…出会ってたんだよね?」
「…」
俯くロゼは、目を逸らし呟いた。
「いや。あれが君との出会いだよ。」
悲しそうな顔をするセリアはロゼから少し離れると、後ろに倒れた。涙を拭い、顔を隠す。
「…そっか……ロゼ君も隠すんだ。」
「……」
【セリアリンク】の効果は、付与した人物に一度限りの復活を促す。
これはスキルでは無く、勇者学校での魔法研究成果であり、彼女の努力の結晶だ。
その代償に、使用者の記憶を忘れてしまうと言うデメリットが存在する。
「…(勇者様の様に、激しい頭痛や目眩が起きないように接してるけど…これでいいのか?)」
自身のスキルが大きく動く。
あの時決めたはずだ。僕が恋したセリアの様に、嘘無く行動してみようと。
……自分のやりたい様にしてみると。
【矛盾感知】が激しく揺れ、ロゼは前のめりに頭を抑える。瞬間、セリアのオートヒールが発動し、ロゼを包む。
「……大丈夫?」
「うん。ありがとう。」
空気が重くなり、互いに沈黙が流れる。
「と言うか!!二人っきりで密室なんて!!もう結婚したも同義だね!!」
「……なら…しちゃう?」
涙を拭ったセリアは、震える声で呟いた。
「本当に私と…結婚する?」
「…えっ…」
「…私は……ロゼくんが好き。好きなの。昔の事は分からない。でも。…私はロゼくんの傍に居るだけで、心が軽くなる。」
この人ならって……思える
あの戦争が終わって、心の中にポッカリ穴が空いちゃって…心の底から笑えなくなった。
でも…この人なら。…ロゼくんなら……
風が吹き、カーテンが揺れる。差し込む夕日が部屋を照らし、セリアはロゼに抱き着いた。
「私と…結婚して下さい…」
波打つ心臓の鼓動が身体を火照らせ、耳と頬が赤くなる。
少しの静寂を時計の針が進ませ、長時間の緊張がセリアを襲う。
「…ごめん。」
【矛盾感知】が自身の胸を締め付ける。
これは、セリアの本当の気持ちだ。
でも……
「…記憶が戻ってないのに…君と結ばれる事は、卑怯だと思う。」
力なく引き剥がされたセリアに、ロゼは地面に膝を付けて話し始めた。
「今のセリアと出会ってからの僕は、君を真似してただけだ……昔はもっと…冷たくて…」
大きな丸い目から涙を流す少女は、美しいスカイブルーの瞳を閉じる。
流れる雫は頬を伝い、手の甲に落ちた。
「…だから。…記憶が戻ったら。俺からプロポーズさせてくれ。…俺はセリアを…愛してる」
「…なにそれ……」
笑顔で笑うセリアをロゼは抱き締めた。
震える手を、小さい身体を。
ロゼは包み、優しく撫でた。
「絶対だよ?約束だよ?」
「うん。絶対で約束だ。」
「うん。うん……」
流れる涙が止まらない。
こんなはずじゃなかった。
ホントなら…もっと楽しい話をして、
ロゼくんをからかったりして、
…馬鹿みたいな事して。
でも。
戦争を知ってしまっているから。
もう二度と、後悔したくないと思ってしまったから。
……だから。どうしても。
想いを伝えたかった。
「大丈夫。大丈夫だよ。セリア。」
優しく摩る右手は、綺麗なアメジスト色に輝く。
「今度は…僕が守るから。」
覚悟を決めたロゼは、目を閉じ強く…優しく…セリアを抱き締めた。
次回「[休日 ヴァートとアイス]」
ある日の二人
「今日もウーウは居ないな…」
「何?ウーウって??」
「…そっか。セリアは知らないんだったね。魚の名前だよ。僕の初めての友達が、そう呼んでたんだ。」
「へぇ~!!」
不思議そうに微笑んだセリアは、川を泳ぐ魚見る。
「いい名前だね?!?!」
「だよね」
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