第七十三話「【ユニークスキル】」
前回、勇者学校特待生【ロゼ】と勇者候補【ライト】が手合わせを行い、ライトが勝利した。雑談を挟みながら話していると、[魔法の勇者]【アイリス】の様態が悪化した。そしてみんなは、【ユニークスキル】について話を聞く事となる。
「デメリット?」
「うん」
頷いた勇者は人差し指でヒーリェを指し、その次に自分の胸に親指を押し付けた。
「【勇者】や【魔神】と言った別名は自ら名乗るものではなく、スキルと同じように授かる物だ。[盾の勇者]、[回復の勇者]、[光の勇者]。これらは【ユニークスキル】と言う。名の通り、同じ名前のユニークスキルは存在しない。」
▶︎[盾の勇者]【ラペン】
「【支配の魔神】も別名ではなく、ユニークスキルの名称なんですね?」
▶︎第二勇者パーティ所属【ヴァート】
「その通り。恩恵は大きく3つ。」
-----------------------
1、【ユニークスキル】獲得者には、無条件で【即死無効】を獲得する。
2、身体能力の向上。及び【促進】の発生条件緩和。
3、【試練】の強化
-----------------------
「これらが主なメリットだ。所有するだけで、ランクが2つぐらい跳ね上がると考えれば良い。」
「うわぁ…」
「質問よろしいでしょうか?」
▶︎勇者学校特待生【ロゼ】
「良いよ。」
「…【試練】とはなんでしょうか?」
「あ~……なんて言うべきか…ヒーリェ?言語化出来るかな?」
「難しいけど…例えば【精神離別暴走状態】の発生条件は、膨れ上がった感情のリミッターが壊れ、脳へのダメージ負荷が現れた際の生物的防衛本能と言える。要約すると、【感情の暴走】が条件だね。【試練】は、【精神離別暴走状態】に入った者のみが使用できる【記憶の具現化】って感じかな?基本的に【試練】の特徴は、人生のターニングポイントや、植え付けられた感情のスケールによって変わるって感じ?」
-----------------------
ヒーリェ短編小説「エンド」より
「剣の雨!!!」
▶︎魔王軍幹部[剣の魔神]【ソーディア】
「んだこれ?!」
▶︎[元盗賊兼旅人]【ライト】
「喋るな!!気が散る!!!」
▶︎[元盗賊兼旅人]【カイト】
「どうせ死ぬなら!!一緒に死のう!!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
第十三話「試練 その1」より
「剣の雨!!」
▶︎魔王軍幹部[剣の魔神]【ソーディア】
「?!」
(魔法詠唱?!両手両足を封じたのに発動できるのか??)
▶︎推薦入学者【ヴァート】
「どうせ死ぬなら!!一緒に死のう!」
叫ぶ青髪の男の全てをヴァートは警戒していた。しかし、魔法は発動していない様に見える。
-----------------------
「うぇ?!【試練】って暴走しないと使えないんですか?!?!」
「ん~~実例がないだけだよ。私も【試練】は使えないしね。」
「って事は……」
「…僕は使えるって事ですか?」
▶︎第二勇者パーティ所属【ホープラス】
「恐らくね。まぁいつか使えるようになるさ。…っとまぁ……メリットはここまで。…本題に入ろう。」
ラペンは笑顔を消し、人差し指を顔の前に立てた。
「デメリットは1つ。【ユニークスキル】獲得時、最も意思の強い感情を失う。失った感情は、【ユニークスキル】の覚醒を得て、再び戻る。」
「……」
「現役勇者9名と勇者候補4名の中で覚醒に達し、感情を取り戻したのは僅か4人だけ。俺やライト。ヒーリェやノア達ですら、その境地に達していない。」
「感情を…失う?」
唖然とするヴァート達。歩き始めた金髪の勇者は、意気揚々と話し始めた。
「目安がついてる人もいる。だが、それらは他者から教えられるのを極度に嫌う。【ユニークスキル】で感情が消えるのは、【精神離別暴走状態】と同じく防衛本能だ。自分自身の力で失った感情に気付き、無意識に除外した感情を受け入れ無ければ、覚醒は成せない。」
▶︎勇者候補[光の勇者]【ライト】
「それがほぼ不可能に近いって訳ですね~。自覚してる勇者様ですら僅か数名……そんなの無理無理。諦めるのが妥当~……って……勇者様に諦めって言葉は無かったですね……」
▶︎第二王国前線指揮官【ミスリラ】
ため息を吐き、やれやれと肩を落とす。
「……ラペンさん。」
「ん?なにかな?」
「…いえ……」
考え込むロゼは、【セリアリンク】の代償を思い出していた。
(……【ユニークスキル】…感情の消滅…。【セリアリンク】の代償と関係あるのか?)
「……?どーしたの?」
▶︎勇者学校特待生【セリア】
首を傾げるセリアの髪は、綺麗に靡き甘い香りがする。
「…いや?ほんとに何も。」
(他者からの教えられる事を極度に嫌う…か……)
「ふーん……」
疑問に持つ少女は、再び考え手を挙げた。
「質問!!!」
「どうぞ」
「…【試練】を使える人は暴走した事あるって言うけど、再暴走はあるんですか?」
「いい質問だね。今のところ実例は無いよ。でも、備えておく事に変わりは無い。」
「そっか!!」
嬉しそうに笑ったセリアは、ロゼをチラ見しホッとする。
「。?!?!なに?!」
「…べつにぃ?」
「……話は終わりでしょうか?」
▶︎勇者学校特待生【エリック】
「ん?あぁ。すまない。時間を取らせたね。そろそろ自由時間にしようか?」
「いえ…宜しければ、俺も1戦お願いしたいです。」
息をゆっくり吸ったエリックは、振り向きヴァートと目を合わせる。
「俺と彼らに…どれ程の差があるか」
「…俺?!?!」
「あ~…そう言えばエリックは元々推薦入学者だったね…」
「そうなんですか?!」
「破棄したって聞いたけど…なにか理由はあるのかな?」
「…話したくありません。」
「…そっか。ヴァートくん?行けるかな?」
「はい!!!武器は…模擬刀?」
「鉄剣でも」
「…模擬刀で!!」
軽く準備運動をしたヴァートとエリックは、互いに模擬刀を構えた。
「さっきと同じルールで行くよ?」
「ありがとうございます。」
「うっし……」
意識を切りかえエリックの構えに注目する。
「…似てますね」
「……」
心臓の鼓動が脳に響く程、集中力を研ぎ澄ます。
焦りさえしなければ…対応出来る…
「始め!!」
走り始めたヴァートは、全身に力を込め、地面を踏み込む。姿勢をさらに下げたエリックは、尋常じゃない速度の攻撃に焦って動いた。
パンッ!!!
「ぐっ?!?!」
(これがヘルアの同期?!予想の数倍強ぇ?!?!)
互いに鍔迫り合いに入り、体格の小さい少年に力負けする。
「ふっ!!!」
「……?!」
突如視界からエリックが消え、前に姿勢が崩れる。
攻撃を流して横に逸れ、がら空きの背中に一撃を……
パンッッッッ!!!!!!!!!!!!
「っな?!」
手に走る振動が肩にまで届き、エリックの背後に模擬刀が落下した。驚いた数秒を見逃さず、ヴァートは右手で地面を押し、そのまま右足をエリックの首に叩き込んだ。
「っ?!?!」
「勝者ヴァート!!!」
手を叩いた瞬間。エリックは目を開いた。
目の前で止まる右足は後ろに下がり、少年は息を整えた。
「……流石だ。」
「!ありがとうございます!!」
「…やっぱり……破棄して正解だった訳だ…」
自身の弱さを再認識したエリックは、深く目を閉じ開いた。
「微力だがこれからよろしく頼む。ヴァートくん。」
「はい!!」
握手する2人。驚いたホープラスは、アイスに呟いた。
「また一段と身体能力上がってますよね…スキルも使わなかったし…」
「……でも、手加減はしてないと思う」
▶︎第二勇者パーティ所属【アイス】
汗を流すエリックは自分より幼い強者に心の底から尊敬を抱いた。
次回「休日 ライトとカイトとミスリラ」
第二魔王軍戦は、「世代の勇者」において最大のターニングポイントとなり、最も長い第五章が始まります。
物語は急激に加速します。
ご覧頂きありがとうございました。いいねと感想。ブックマーク登録も是非是非。それでは




