第六十九話「夢の壁」
前回、【記憶】を連発するヴァートだったが、【光速】の反動により動けなくなる。アイスとホープラスも加勢するが、手加減を辞めた【支配の魔神】に為す術なく、ヴァートは腹部を、リーラは左腕を欠損。諦めかけたホープラスの元に、【光の勇者】が駆け付けた。
辺りを見渡した金髪の勇者は、負傷者と被害を把握し剣を構えた。
「良く持ち堪えた!!遅れて済まない!!」
▶︎勇者候補[光の勇者]【ライト】
「他の勇者は休みかい?僕には君だけで事足りると?」
▶︎第一魔王軍幹部[支配の魔神]【クースト】
「ご明察!!…引くなら止めないぜ?俺のスキルと相性悪いだろ?」
「流石は勇者様だねぇ…配慮と優しさを持ってる…でもさ?こっちも仕事出来てるんだよね」
触手を再生し、再び動かす。2本の触手と3本の触手が先方後方に別れ襲う。
「ヴァートと……何だっけ?爆発の子の回収…それだけはさせて貰うよ?」
瞬間触手が切られ、ライトは楽しそうに叫んだ。
「その二人より俺への興味は無いのか?」
「君は要らないよ」
「えぇ…ショック」
剣を中段に構え左に捻じり、右耳の近くまで引く。
「【光速】」
遠くで見ていた黒髪の少年は、自身の視界をただただ静かに見届けた。
「…」(攻撃が見えない…)
▶︎第二勇者パーティ所属【ホープラス】
「サード村思い出すね…本当に何が起きてるのか分かんない…」
▶︎第二勇者パーティ所属【アイス】
ヴァートを気にかけるアイスは、後ろを振り向きリーラも心配する。
「…大丈夫かな」
戦闘から視線を逸らした瞬間、アイスの目の前にライトが現れ触手を切断した。
「?!」
「だめだめ~今は俺に集中しないと」
「ちっ…」
【光速】を発動し、距離を詰める。左手に握られる剣は光を纏い、ライトは笑った。
「あっ……これこれ」
クーストの右腕を切り落とし、再度追撃。秒間に10回以上の斬撃を受け、切り落とした右腕は面影もなく消えた。
「君も…それが出来るんだね?」
「感覚でな!!」
「素晴らしいね」
距離を取ったクーストをしつこいほど追い詰めるライト。剣撃はスキルを纏い、左腕も吹き飛ばす。
「流石に分が悪いね」
「同情はしない。猶予は与えたからな」
汗を流すクーストが後ろにのろけた瞬間。首を切断しライトは止まった。
「はい。終了」
「…[光の勇者]ライト。……君の天才的な技術も…研究対象にすべきだね……」
【能力無効】で【再生】を潰したライトは、消滅するクーストの肉体を確認し、急いで振り向いた。
「死亡者は?!皆生きてる?!?!」
ボーッとするホープラスは、慌てて状況を説明した。未だに実感の無い勝利に、ホープラスとアイスは腕を撫で下ろした。
第六十九話「夢の壁」
差し込む光にヴァートは目を開いた。カーテンが揺れ横を向くと、見知らぬ少女が声を上げた。
「ん?おは~」
「…えっと」
「あ~だめだめ!まだ横になっててね~」
起き上がろうとすると額に冷たい手がくっつけられ、ヴァートは横になった。
「…ここは?…みんなは?」
「ん~ちょい待ってね~。第二勇者パーティ所属のヴァート君。年齢15才、スキル【記録】【120%】。ランクは3thランク。ファー村出身で、得意武器は剣。右利き。話に聞いたけど…【記憶持ち】?だよね。何か間違いは無い?」
「……ランク」
「あ~上がったね。おめでと~~」
拍手する少女は立ち上がると、ヴァートの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ちょ?!あの?!」
「偉いぞぉ~勇敢~マジ勇者~本当に…無事で良かったよ」
「えと…あなたの名前は??」
「あぁ!言ってなかったね!!私はミスリラ!シャル先輩の後輩だよ!!」
▶︎第二王国前線指揮官【ミスリラ】
小さい少女はピースをした後小走りで扉に向かう。
「んじゃまたね~少年!とりあえず!みんなを連れて来るからさ♪♪」
嵐のように去っていったミスリラ。まだ聞きたい事を残していたヴァートは、一旦状況を整理する。
「……腹?!?!」
飛び上がり布団を捲ると、左腹部は不自然に回復し、外から見ても分かるほどヴァートの腹は抉れていた。
「痛…くはない…どうなってんだこれ??」
「あまり触らない方がいいよ」
「?!」
馴染みの声が聞こえヴァートは隣を見る。黒髪ロングの女性は、左肩を触りながら囁いた。
「肉体の完全な回復は…時間が経つと、ヒーリェさんでも不可能みたい。私も左腕無くなっちゃった。」
▶︎第二勇者パーティ所属【リーラ】
「リーラさん!!無事で……」
視界に写った身体に、ヴァートは声が止まった。
ゆっくり撫で下ろされる右指は力を無くし、リーラの目から涙が零れる。
「ほんと…私……何してんだろ…」
虚ろな目から溢れる涙は、自身の無力さを痛感させる。
「試練でも…選抜戦でも…さっきも……私は…何も……何も出来てない…ねぇ?…何でみんなはそんなに強いの?…何でそんなに心強いの?私は…本当は……勇者に慣れるような人材じゃない…」
回復魔法を授かっただけ
努力して勇者学校特待生になっても最下位だった。
推薦されて、試練での成果も一番下
ホワイトちゃんの試練でも、ミールちゃんに助けられてばっかりで
「本当に私……」
布団に顔を押し付けたリーラを、ヴァートはただただ見る事しか出来なかった。
「僕も…一緒です」
「……」
「強くなれたと思ったら、いつも痛感するんです……サード村での出来事が、本当に悔しかった。スキルを所有して、魔王軍とも戦って……結果また、戦闘で気を失って……今こうして、ベットの上にいる。」
ヴァートは目を瞑ると、笑顔で囁いた。
「でも…不思議と力が湧いてくる。きっとこれは、アイスのおかげだ。」
「…私は……あなたにとってのアイスさんのような人が…」
「……ほんとですか?…家族でも、大切な人でも…好きじゃなくても良いんです。きっと、不安や悲しみに押し潰されそうな時、最初に思い浮かんだ人が……リーラさんに勇気を与える人ですよ。」
「……」
目を閉じ、心に訴える。
辛い。痛い。苦しい。諦めたい。
そんな気持ちの私に、二人は手を差し伸べた。
[どーした陰コミュ。まだ行けるだろ?]
[大丈夫!!(*'▽'*)リーちゃんは最強だからねぇ!!(*^▽^*)]
「私は……」
目を開けると、2人の姿は無かった。
でも……
それでも…
「…まだ……少しは…頑張れる気がする……」
涙を拭うと、リーラは嬉しそうにヴァートを見た。
その笑顔は何処か、壁を乗り越えた様な気がした。
「……てか実際!回復すごい助かってますからね?!?!」
「えぇほんと?(疑)まぁ真に受けますね(照)そっちの方が思い込まないし(嬉)」
バンッッッ!!!!!
「おはよーヴァート!!!!!!」
勢いよく開かれて扉には、白髪の少女が立っていた。
「アイス!!」
「無事で良かったよ!!!」
飛び込んできたアイスに、ヴァートは抱き着かれ再度横に倒れた。そのままリーラに抱き着く。
「なんかだんだん…ミール化してきて無いか?!」
「何それ?それより朗報だよ!!!聞いて?!?!私たち!!もっと強くなれるんだって?!?!」
嬉しそうにはしゃぐアイス。開かれた扉をノックした黒髪の少年は、嬉しさを押し殺して話し始めた。
「正確には勇者様による戦闘の言語化です。ヴァートさんが【記憶】を連発出来た理由や、魔法、回復、バリア等の重要ポイントを教えて貰えるそうですよ。」
「ホープラス!!」
「さっきまで飛び跳ねて喜んでたのに、落ち着いてないでホープラスも来なよ!!」
「…我慢してる側の気持ちを……理解して貰いたいものです。まぁ今回は……」
走り出したホープラスは、ヴァートとリーラとアイスに抱き着き、大きな声で叫んだ。
「本当に!!!お疲れ様でした!!!!!!!」
「おう!!」
「あはは(照)」
賑やかな部屋の外で、ニマニマしながら待機する勇者二名と勇者候補一名。深緑の髪でノアの背中を押す彼女らは、四人の成長を痛感することとなる。
次回「第二勇者パーティ総戦力」
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