第六話 「相性」
ヴァートとアイスとホープラスは酒場で情報を集める為にサード村へと訪れるが、奇襲を受けてしまう。赤ローブの男「ザーク」を閉じ込め、残りは4人。
西 赤ローブ「ザーク」 撃破
北西 青ローブ
北 黄色ローブ
北東 緑ローブ
東 紫ローブ
残りの反勇者組織は青、黄色、緑、紫の4人。ヴァートとアイスは一番近い青のローブを倒しに向かった。
「どっちが多く倒せるか勝負しようよ!」
▶︎白髪の少女【アイス】
「協力なんだから勝負する必要ないだろ…」
▶︎黒髪の少年【ヴァート】
「そっか!」
こんな時でもアイスはヴァートと張り合おうとしている。しかし、アイスの言った一言がヴァートの心に火を付けた。
「負けたら私。何でもするよ?」
「じゃあ勝負スタート!!」
アイスの速さに合わせて走っていたヴァートは、自身のトップスピードの限界を引き出して、アイスとの距離を広げた。
「あ!!ずるい!待ってよヴァート!」
驚いたアイスはヴァートを引き留めたがヴァートは既に視界から消えていた。
「よし!このままのスピードでアイスから距離を保ちつつ、峰打ちでローブ全員気絶させれば俺の勝ち!この勝負貰った!」
ヴァートが走り出してすぐに青のローブを着た男が7人ほどの旅人と戦っているのを発見した。
ヴァートは剣の鞘を右手で持ち渾身の一撃で青のローブの男の首裏を叩いた。
ドンッ!!
かなり鈍い音がした。青のローブの男は地面に倒れ、気絶する。筈だった。
青ローブの男の首に鞘が触れる瞬間鞘は粉々になり、本来与える筈だった衝撃をヴァートが受けた。
「ガァ?!」
自分すら認める渾身の一撃を防御なしでまともに喰らった。ヴァートは10メートル程吹き飛ばされ、朦朧とする意識の中で、一つの答えを見出した。
「…物理…反射か」
「その通りだ」
▶︎反勇者組織[青ローブ]【ギル】
青ローブの男は周りの旅人に目をくれず吹き飛んだヴァートの方に近付いてきた。
「えらく速かったな?何者だ?ランクは?最低でもBは超えてる様だが?」
ヴァートはクラクラする頭を上げ、重い体で立ち上がった。
(やばい…まともに喰らった。幸い鞘だったから死なずに済んだが…もしスキルが"物理反射"なら俺に勝ち目はない…ただ…魔法やローブに物理反射のカラクリがあるなら勝機はある!)
「ヴァートだ。ランクはまだ決まってない。」
(時間を稼いでまだ考えろ!魔法なら消耗させれば良いし、ローブなら奪い取れば良い!)
「ザークを倒したのか?…まぁ良い。ザークを倒したとなるとやはりBランク以上の強さな訳だ。」
徐々に近づいて来る青ローブに警戒しながら作戦を練っていると、後ろから声が聞こえた。
「あーーーー!!やっと追いついた!」
「!!」
「何だあの女は?」
物理反射がある以上ヴァートは相性が悪いがアイスには関係ない。このままだと手柄を一つ奪われる。
(くそ!こいつは相性が悪すぎる…一旦アイスに譲って黄色のローブを倒しに行くか。)
ヴァートは青ローブの男から距離を置き、同時にアイスが魔法の詠唱を始めた。
「アイスロック!」
青ローブの男の周りから分厚い氷の柱が生え、青ローブの男に攻撃した。
「あっ?!?!」
声を上げたのはアイスだった。
服には水晶の様な氷のかけらが付いていた。
「アイス?!」
ヴァートは思わず息を呑む。魔法攻撃は物理反射じゃ効果を発動できない。アイスの魔法を反射したと言う事は…
「魔法反射」
砕けた氷の中から青ローブの男は笑いながら答え、ローブに隠していた刀を抜く
「お前らに勝ち目は無いんだよ!」
素早く振り下ろされた刀にヴァートは焦って剣でガードした。
「チッ…よく動くな」
ヴァートはすぐに体制を戻し、青ローブの男から距離を置く。しかし、青ローブの男は距離を詰めて来る。
「逃げんなよ」
再び振り下ろされる刀。ヴァートは剣で弾こうとするが手を止める。
ガキーン
金属がぶつかる音が辺りに響く
「チッ…またかよ」
「やばいな…」
(物理反射だから、武器を弾く事すら出来ない…こいつの攻撃が遅すぎるから癖で反撃しちゃいそうだ…やっぱり…この手しか無いな…)
ヴァートは倒れているアイスを担いで青ローブの男から距離を取った。
「ん?どうした?ビビったか。」
少しずつ近づいて来る青ローブの男に目もくれず、ヴァートは振り向き大きな声で叫んだ。
「すぅぅぅぅぅ!!今だぁぁぁぁぁぁあああ"あ"!!!」
その声量に担がれていたアイスはびっくりし、堪らなく泣く。
「うるさいぃ。」
「ごめん!でも今はこの手しか無いから!」
一か八かの駆け引き。もし声が届いてなかったら。声が届いていても見てなかったら。そんな不安を吹き飛ばし、高台の上から少年は答えた。
「了解」
▶︎黒髪の少年【ホープラス】
〜〜〜第六話 「相性」〜〜〜
途端青ローブの周りに薄水色のバリアが生成され、青ローブを一瞬で閉じ込めた。
「なんだ?!」
青ローブの男はバリアを何回も叩くがピクリとも動かない。
「なんだよ!くそ!閉じ込められた!!」
必死にバリアを叩いている青ローブにヴァートは近づき煽り始める。
「物理反射も魔法反射も閉じ込められたら意味ないな!」
「うるせえぞクソガキ!つか!お前の手柄じゃないのに出しゃばってんじゃねぇぞ!!」
「あーはいはい。反射反射ーー。旅人さん達!コイツこのままにしとくんで、勇者様来るまで見張ってて下さい!」
「は、はぁ。分かりました」
「おい待てガキ!話はまだ終わってねえぞ!」
騒ぎ立てる青ローブをガン無視し、アイスをおんぶして黄色のローブの元へ向かう。
「大丈夫か?」
「うるさかったぁ…」
「ごめんって」
一度泣きモードに入ったアイスはよっぽどのことがない限り、気持ちを切り替えてくれない。
「強かったな…」
「うん…」
「ホープラスが居なかったら負けてたかもな」
「うん…」
「もう泣くなって!今回は俺の負けだ!この戦いが終わったら、俺が何でもやってやる!」
「ほんとに?」
「本当だ!」
「わかった」
アイスは涙を手で拭い、ヴァートに強く抱きついた。
「なんだよ?!」
「何でもない!!!」
ヴァートはくっ付いたままのアイスを連れて黄色のローブの元へと走った。
次回 「3人」
パーティーメンバー情報
ヴァート(15歳)剣士
アイス(15歳)魔法使い
ホープラス(14歳)盾使い Aランク
敵情報
赤ローブの男「ザーク」(34歳)短剣使い Aランク
青ローブの男「ギル」(35歳)
→エンチャント使い(魔法) / Aランク
→スキル「魔法反射」 エンチャントローブ「物理反射」