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世代の勇者  作者: グミ
第三章「第二魔王軍 前編」
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第六十八話「覚醒する者」

前回、過去を明かされたアイスは、自身の境遇を受け入れた。試練を受けたホープラスもすぐに突破し、駆け付けたヴァートと共に戦闘態勢に入った。

「【光の勇者】…あの単細胞馬鹿を再現しようってかい?」

腹部を貫通する氷を粉々に破壊し地面に着地したそれは、眉間に皺を寄せ話す。


「【光速】と【能力無効】の両立は、見よう見まねで出来る技術じゃない。スキルだよりの君とは違って、彼は単細胞なりに【経験】と細やかな【技術】を身体に叩き込んでる。」

▶︎第一魔王軍幹部【支配の魔神】クースト


「君のスキルは同僚が探し求めていたスキルだ。どれ程の物かと【興味】を抱いていたが……持ち主が低レベルと来た。」

「うっせ。喋る暇あんなら防いでみろよ。」

剣を構える黒髪の少年は、息を吸い呼吸を止めた。

瞬間クーストの背後30m程に移動し呟く。


「【光速】」

▶︎第二勇者パーティ所属【ヴァート】

突風が発生し、首を斜めに切られた事に驚いたクーストは、嬉しそうに笑った。


「スキルの混合だね?【光速】と【暗殺】同時の【記憶】。低レベルなりの答えがこれなら評価に値する。やはり君は良い。」

「二人で楽しんでる所申し訳ないけど…私達もいるからね」

白髪の少女は氷の剣を抜きクーストへ向ける。


「魔法詠唱なんてしてあげないんだから」

▶︎第二勇者パーティ所属【アイス】

剣先から発射された氷のビームは、クーストの顔に直線上に伸びる。


「容赦ないなぁ。」

「?!」

首を支えながらアイスを睨むと、ビームを掴み止めた。


「君にも【感情】は組み込んだ筈だけど?」

「私の新技…ことごとく通用しないのは何故かな」

「【単体勝負】だからだよ。君の好意を寄せてる彼を見習いなよ」

「っな?!」

「ほら【動揺】」

一瞬の隙を突いたクーストの触手は、地面スレスレを超高速に移動し放たれた。


パンッ!!!!!!!


「…察しが良いんだね?」

「お褒めに預かり光栄です。ですがもっと火力を上げないと僕のバリアは突破出来ませんよ?」

▶︎第二勇者パーティ所属【ホープラス】


「即切れ男と比べたらセンスは無いが…あの弱虫の弟と考えたら歓喜するべきだね」

「…意外です。お兄ちゃんの事を覚えてくださってるんですね!……なら都合が良い。」

バリアを薄く伸ばし8本に増やす。鞭のようにしならせるホープラスは、怒りを押し殺し呟いた。


「僕を生かした事と兄を殺した事。後悔させます。」

「【後悔】?いやいや…僕は彼に【感謝】している。君もそうだろう?【気持ち】や【志し】は【実力】が無いとただの【妄想】だと彼で確信した。……所で…なぜ彼が追撃をしないか考えないのかい?」

嬉しそうに振り向いたクーストの視界には、息を荒らげるヴァートが映った。攻撃を受けたわけでも、【支配】された訳でもなく。身体的理由に体力が減少した。


「はぁ?!はぁ?!?!」

「スキルの説明を受けてなかったんだね。【光の勇者】が【光速】を連発出来る理由はデメリットを相殺出来ているからだよ」

「ヴァート?!?!」

胸に手を置き、加速する心臓の鼓動を落ち着かせる。


「スキルの使用には体力が消費される。……でも【上位スキル】はその次元に留まらない。【盤上】もそうだっただろう?その中でも【光速】は……1回に付き寿命が10年縮む」

「?!んなっ?!?!」

「君……何回【光速】を【記憶】したかな?」

「はぁ?!はぁ?!……っ…なら排除すればいいんだろ……ライトさんはそれを可能にしてる」

「……違うね。彼一人では何もなし得ていない。」

乾いた風が吹き、ヴァートとクーストは話し続ける。


-----------------------

「……おい引くぞ」

▶︎第2魔王軍所属【カイ】


「殺られたまま逃げるってのか?!」

▶︎反勇者組織[赤ローブ]【ザーク】


「引き金は俺だ…俺は残る…」

▶︎第2魔王軍所属【レト】


戦場に戻ろうとするレトの腕を掴んだカイは力強く、行動を止めた。


「お前のその判断が、これ以上犠牲を産まないと証明する絶対的な根拠はあるか?」

「……でも」

「でもじゃねぇ…いいか?リーダーってのはそう言う物だ。感情に感化されたらダメなんだよ。」

「…今のリーダーはお前だろ……それに俺以外が帰れば済む話だ。」

「考えを放棄するな。現実を見ろ。俺やムシャじゃどうにもならない。第一魔王軍ってのは、ジンさんやブラッドさんの様なデタラメな強さを誇る奴の巣窟だ。」

「……お前は…形だけだろ…。本当は仲間なんて微塵も気にかけてない…ヒューラさえ生きてたら……あとは何でもいいんだ。」

「…そうだよ。何事にも優先順位はある。その後はお前らだ。だから行かせない。」

レトの服を引っ張ると、ザークの服も掴み歩き始めた。


「触んな離せ!俺はここを墓場だと決めてんだ!」

「お前みたいな身勝手を…引き止めるのも俺の仕事だ。」

騒ぐザークを片手に、カイは後ろを振り向いた。

化け物相手に臆することなく戦いを挑む勇者に、心の底から感謝し、ホープラスの背中を見守った。


「…勝手に死んだら許さん……生きろよ。」

踏み込んだ足は地面を踏み込み、第2魔王軍は戦場から離れた。

-----------------------

「【記憶】【魔神の勇者】【データ】【再現(コピー)】/【再現(コピー)】【反射(パリィ)】【未来予知】【位置交換】【必中】【暗殺】」

「…!まだ戦うんだねぇ!!良いね。君は殺さず【支配】しようかな?」

呼吸を落ち着かせるヴァートは、【120%】を発動した。


「言ったろ?負ける気がしねぇって……」

剣をかまえ走り始める。同時に触手も動きを合わせるが、ホープラスのバリアが切断する。


「悪いけど。4対1ですからね?」

「悪くないよ。それでも君たちの方が分が悪い」

放たれた剣先は腕を切断し、【位置交換】で自身とクーストを入れ替える。


「【データ】…それも彼が欲しがっていた。やはり優秀だねぇ」

切り返す刃は背中に傷を入れ一回転。クーストの振り向きに合わせて再度【位置交換】。


「ヴァート!!!!!!」

瞬間。視界が赤く燃えた。アイスの声が消え、ヴァートは建物に衝突した。


ドガンッ!!!!!!!!!!!


「かはっ?!?!」

「忘れてないかなぁ?この子も居る。それとこの子にも、手伝ってもらおうかな?」

地面に倒れるギルの死体を掴むと、触手が傷口から侵入した。


「【支配】」

「?!」

崩れたレンガから顔を出したヴァートの視界に、赤く燃え盛る腕が伸びた。しかし炎は氷によって遮断される。


「%%%%%%?」

「…ヴァートに気安く触らないで」

再生した炎の腕で顎を撫でる。皮膚が焼ける音が響き、"それ"はアイスへ移動を変えた。


「アイス!!!」(くそ?!腹に【爆発】もろに食らった?!)

「%%%%%!!」

「相性不利でも勝つ」

爆発しながら襲い掛かる"それ"は奇妙な音を鳴らしながら赤く燃える。瞬間バリアが生成され、丸ごと包んだ。


「今邪魔はされたくないので…最前かつ効率的に対処します。」

そのまま【支配】されたギルもバリアで包むと、ホープラスはクーストの再生する触手を再度切断した。


「…バリアと炎は相性不利でしょ?体力も継続的に減る。」

「承知済みですよ。」

ホープラスがアイスに目を配ると、アイスはバリアに氷を生成した。


「…【最善】ねぇ」

呟いたクーストは、アイスとホープラスを見るやいなやため息を吐いた。


「君たち相手に【興味】はそそられない。僕も彼の回収に【最善】を尽くすとしよう。」

「?!?!」

目の前に現れた2本の触手に対応し、ヴァートは剣を抜く。

流れるように切断し、体制を…


「?!」(切れない?!?!)

剣を包まれ2本目の触手が横腹を貫く。


「ゴフッ?!」

「体の発生が遅れたね?…君【疲れ】が溜まってるよ」

貫いた触手は横腹を抉り、ヴァートは地面に倒れた。


「……ぁ…はっ…はっ……」

「ヴァート?!?!?!」

「君は叫ぶ事しか出来ないのかな?」

触手が伸びアイスへ牙を剥く。


「…やめ……ろ……」

「…?意識あったんだね?すぐ片付けて、君を連れて行くから……」

クーストの足首を掴んだヴァートは、激痛に耐えながら再び呟いた。


「……ゃ……ろ」

反射的にバリアを生成し、ヴァートを包む。

アイスも即座に魔法を発動し、5本目の氷の剣を引き抜いた。


「ヒールエリア!!」

バリアの中は氷のマナが舞い、傷口を癒し始める。


「リーラ!!!ヴァートの回復だけに専念して!!!」

「もうしてます!!!!!(でもこの深手は…)」

▶︎第二勇者パーティ所属【リーラ】


「…そこに居たんだね?目立った回復も出来ず、隠れてコソコソ…君はほんとに【不快】だよ」

放たれた触手は左肩を貫通し、リーラは息を飲む。

触手は暴れ、そのまま左腕を吹き飛ばした。


「?!?!(痛)」

「避けることも出来ず役に立ててない…君?何でそこにいるのかな?」

「私は……守る為にここに…(焦)」

「【幻想】【愚か】【実力不足】……弱い奴の特徴だよ…。それに【技術】すらない。」

「アイスさん!!リーラさん!!今は自己回復とヴァートさんの回復を!!!僕が足止めします!!」

「【勘違い】しない事だよ君。」

ヴァートを守る為に生成したバリアを、触手が貫き破壊した。


「っ?!」

「即切れ男と比べたら、君のバリアは単純過ぎる。硬いだけがバリアじゃない」

「……僕は何時になったら仲間を守れるんだ……」

「【勘違い】するなって……言ったよね?人を守る事が出来るのは敵より優れた【力】と【才能】を持つ者だけだよ。君はこのヴァートより、自分を強いと思っているのかな?」

「そんな訳……」

「あぁ…幼稚なバリアなんてこの先通用しない。成長を残してる彼らより、今の君の方がよっぽど役立たずだよ。」

首を鳴らすと、10本の触手が動き始めた。


「守れるかな?自身と仲間とこの村を。たったの1人で。守れるなら…さっきの発言は撤回しよう。」

伸びた触手は、全員に伸びる。瞬時にバリアを発動するが、触れたバリアは破壊される。


「?!」(ダメだ…やっぱり僕は…)

「諦めるな!!!!!」

「?!」

突如聞こえた声に驚くと同時に、触手は全て断ち切られた。ホープラスの肩を触った金髪の男は、クーストを睨み歩き始める。


「勇者になるなら諦めるな。前を向き、現実から目を背けるな。…その努力が、人を強くする。」

「やっと来たのが君一人かい?やはり勇者は宛にならないね。」

顔を上げた金髪の男は、剣を構え笑った。


「はっ!ノアさんに会いたいなら"本体"を連れてこい。【支配の魔神】!!」

▶︎勇者候補[光の勇者]【ライト】

「ムシャさん!!!」

▶︎第二魔王軍所属【レト】

「……?!……!!!!」

▶︎第二魔王軍所属【ムシャ】

「…逃亡者?って事は作戦は終わったのか?」

▶︎第一魔王軍幹部【嘘奪の魔神】イリス

栗色の髪をした男は、嬉しそうに話し始めた。


「時間稼ぎおめでとう。……さっきの話…忘れるな」

「…………」

「…?おい大丈夫か?!…あいつ…何だったんだ?」

レトが再び前を向くと、20代前半のような見た目の男は、消えていた。



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