第六十七話「アイス」
前回、[支配の魔神]クーストと戦う[赤ローブ]ザークは、間一髪で[青ローブ]ギルと【位置交換】する。
しかし、【爆発】を食らったギルは、そのままバンに殺されてしまう。
怒りが募る第二魔王軍達だったが、カイ、アイス、ホープラスも戦場に参戦した。
目をつけられたヴァートを守る為に、アイスとホープラスは、クーストに立ち向かう。
しかし2人は、【試練】を受けることとなった
ポコポコと泡の音が聞こえる。
奇妙なほど心地よい水温。
ガラスの外には、白髪の少女とピンク髪の少女が涙を流しながら笑っていた。
「必ず生きてね。…あなたは……ただの…女の子として。」
涙を拭う白髪の少女はにっこりと笑い、涙を零した。
私がヴァートと会う前の。忘れていた【記憶】。
第六十七話「アイス」
2人が去って数ヶ月が過ぎた。
【ラボ】は揺れて煙が上がり、私を囲う氷の壁に亀裂が入る。
「こっちだ!!」
「確証は?!下手したら3人とも死ぬぞ?!?!」
「確証なんか無い!!でも!!【彼】が俺に伝えてるんだ!!」
「だから誰だ!!」
やけに焦る声が聞こえると、氷の壁が砕け、ガラス越しに見える黒髪の青年と目が合った。
「!ほらな!!やっぱいた!!」
▶︎二刀流の剣士【ファス】
「なら早く保護!!てか服服?!?!2人ともあっち向いてて?!?!」
▶︎死ねない少女【アミ】
「そんな事に拘るな!!時間が無い!」
▶︎呪刀を従える少年【ゼロ】
「拘るよ!!女の子の肌はそんな簡単に見せていい物じゃないの!!!!」
「なら早くしろ!!他の連中は外に逃げたんだろうな?!」
「ラボの【破壊】研究対象の【脱走】。君達が行ったのかな?」
▶︎【災害】[支配の魔神]クースト
「歩くのはえぇーよ【魔神】。実は焦って走ったんじゃねぇか?」
扉の前に立ち塞がる紫髪の男は、触手をうねらせながら淡々と話す。
「良くもまぁ…ここまで人の努力の結晶を…無為に出来るものだね……」
「努力は水やり見てぇなもんだ!!台風や地震でそんなの何回もやり直さねぇと行けねぇんだよ!!って事で!!理解求む!」
「そんな【暴論】に!!【理解】を求めるな!!」
怒りを顕にしたクーストは腕を振りかぶった。
触手と衝撃波はアミへ集中し弾かれる。
「っ!!ほんっっとに腹立たしいね……君のスキル……」
「!ごめんね!!」
「謝るぐらいなら死んで詫びたらどうかなぁ……」
「ある種の同類だろ?お前ら。【死なない】ってカテゴライズの!!」
ゼロが動き始めると、呪刀に手をかけ呟く。
「……殺すつもりでやるぞ…」(そのつもりだが?)
引き抜かれた刀身は紫色に変色し、肉体へと触れる。瞬間、クーストの触手は原型が無くなるほど切られ、それは胴体へと続く。
「君の身体能力も。僕の研究対象に追加するべきだね。」
「お断りだ。」
つま先から脳まで斬撃を放つ。斜めに崩れる肉片は、地面に落下した。
「…再生ってもここまでやれば時間は掛かるだろ。アミ!!!早くしろ!!」
「あと少しだけ!!」
自身の上着を脱ぎ、下着になったアミは裸の少女に服を上から被せた。
「大きいよね?!ごめんね!!今は我慢してね?!」
振り向き立ち上がると、咄嗟にゼロが顔を逸らした。
「……行くぞ。」
「え?!なに?!」
「お前……スタイル良いよな…」
「……!!み…!!見るな!!!!!!」
顔が赤くなったアミは、ファスの頬っぺを強く叩いた。ゼロは呆れため息を吐くと、走り始めた。
物の数秒。彼らの足は恐ろしく早く、振り向くとラボは崩壊していた。
「マジ危機一髪。…それで?この子は連れてくのか?それとも…他の子同様に【託す】のか?」
呪刀をしまい振り向くゼロは、アミとファスに聞いた。
「…それはもう決めてる。俺にこの子を教えてくれた【彼】に託そうと思う。」
「…さっきから言ってるけど……それって誰なの?」
「…分からない。でも、きっとその子は、この子の大切な人だ。」
ファスはブカブカの服を着た少女の頭を撫でる。
瞬間。脳に言葉が過ぎった。
「……ヴァート。そうか…君だったのか」
「…?誰?」
「いや……こっちの話だ。ねぇ。君の名前は、アイリスさんとシャネスさんから与えられてる。…【アイス】君は今日から、コードネームではなく1人の人間としてこの世界に産まれたんだ。」
手を包み、ファスがスキルを発動すると、アイスは白く透明なバリアに包まれた。
「今から行くのは、未来だ。俺達はもう居ないかもしれないが…また会えた時。ヴァートとアイス。二人で会いに来て欲しい。…では……未来に君を【託す】よ。」
体が浮き、視界が一変する。バリアが破れ、起き上がった私の目の前に、黒髪の少年は驚きの声を上げた。
「えっと……だいじょうぶ?」
▶︎黒髪の少年【ヴァート】
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涙が流れ、立ち尽くすアイスは、目を閉じ受け入れた。
全てを忘れていたわけじゃない。
アイリス……お姉ちゃんの事は、気付いていたから。でも、私にとっての家族は、大切で、無くしたくない物で…普通じゃない私は、普通に産まれたヴァートの家族になるだけでもおこがましい。
だから。忘れようとした。
涙が零れ落ち、地面にぶつかり消滅する。
瞬間氷が地面から生成され、アイスはクーストを視界に捕らえた。
「[マナリンク][アイスマナ]」
▶︎第二勇者パーティ所属【アイス】
「過去に押しつぶされない【精神力】は評価しよう。でも、【失敗作】に何が出来るのかなぁ?」
▶︎第一魔王軍幹部[支配の魔神]クースト
「…お父さん。」
「あ?」
「あなたのおかげで、私は今ここにいる。ありがとう。……バイバイ?」
手をゆっくりと地面から空に振り上げる。
「……な」
瞬きの一瞬にも満たない。
クーストは氷の槍に胴体を貫かれ、空高く掲げられた。
「…」
凍える風の横で、立ち尽くすホープラスは、目を閉じた。
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大好きなお兄ちゃ「嫌…回想は前したから。」
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目を開いたホープラスは、バリアを発動し、クーストを視界に……
「あれ?」
どこを見てもクーストは居なかった。
隣で生成される氷の槍に気付き、先端を凝視する。
「さすがにあれは範囲外ですね……」
▶︎第二勇者パーティ所属【ホープラス】
「…ホープラス!!大丈夫だった?!」
「はい!!もう克服済みですから!」
「流石だね…ヴァート!!!…私を託されたんだから!!私に遅れを取っちゃダメだよ?」
「……分かってる。」
▶︎第二勇者パーティ所属【ヴァート】
「置いていられてたまるか。ファスと約束したんだ。」
「!…ヴァートは、なんで知ってるの?」
「…知らね。でも1つ思い出した事がある。」
ヴァートはアイスの手に触れ握ると優しく包んだ。
「俺は【記憶】持ちだ。……前世の記憶も引き継いでる。」
「…それって」
「でも安心しろ!!俺はヴァートだ!!他の誰でもない!!!」
嬉しそうに笑うヴァートを横目に、アイスは頬が火照った。
「負けイベ?上等ぶっ潰してやる。今なら全然これっぽっちも……負ける気がしねぇ!!」
目を閉じ息を吸ったヴァートは、大きな声で叫んだ。
「[光の勇者]ライト。【記憶】」
次回「覚醒する者」
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