第五十六話「助ける」
前回、暴走するホープラスと対峙したゴードとヴァートだったが、近接最強を自称するゴードの強さを目の当たりにする。追撃するゴードだったが、アイスが、間一髪で止めた。
「なら!ぼくがみんなをまもるよ!!」
黒髪の少年は、満面の笑みで叫んだ。
バリア使いとは、マナ適合者より貴重な素質である。
故に、求められる評価も多い。
しかし彼は3歳という若さで、バリアをコントロールして見せた。
「ホープラスは、将来有望だなぁ!!どうだ?!勇者とか興味無いか?!」
「ゆうしゃはなんでもまもれるの??」
「ん~何でもは難しいかもな!でも、救うと決めたからには絶対助ける力がある!」
大好きなお兄ちゃんがいた
勇者になる為の秘密の特訓に付き合ってくれて、寝る時も、食事の時もずっと一緒だった。
「なら!おにいちゃんはぼくのゆうしゃだね!!」
「ん~~!!!嬉しいこと言うね?!勇者か…!お!その点で言ったら、ホープラスは勇者候補だな!!」
「こうほ!!!」
「喜べ!!勇者候補は勇者より貴重なんだぞ!!なんせ…」
「なんせ???」
「数が少ない」
「凄い!!!」
ほんとに…大切な思い出だ
8年前~カンド村~
当時僕は6歳だった。
バリア操作をお兄ちゃんと特訓し、様々な事を教えてもらった。
「ん~よし!今日の特訓は一通り終わり!」
「うん!!」
「村の巡回…井戸管理…個人特訓…あと…」
「キノコ探し!!」
「おっ!そうだった!!やるなぁホープラス!!」
去年の秋。とある商人がキノコ探しを依頼した。
報酬はなんと大豪邸。…なのだが、中々見つからずに半年以上過ぎていた。
「ほんとにあんのか??てか!緑のキノコとか見た事ねぇし…」
「だから報酬は凄いんだよ!!」
「確かに!!うっし!!めげないめげない!!」
村の中央広場で果物を売る。得たお金は、村の改築に募金する。
「あっ!今日もちゃんと寝ろよ!!水筒も忘れずにな!!」
「うん!!!」
何気ない日常が、とても楽しかった。
でも、崩れるのは突然だ。
川に油が流れれば、環境が変る様に。
誰も触らない物に埃が被る様に。
永遠に変わらない物は存在しない。
ドガンッ!!!!!!!!!!!!!
「?!」
聞いた事のない破壊音。あまりの音の大きさに、世界が終わるのかとさえ思えた。
衝撃波が遅れて発生し、吹き飛ばされる。
「うっ?!?!」
「ホープラス!!バリア出せるか?!?!」
「!!う…ん!!!」
箱型のバリアに入り、風を遮断する。
土煙が視界を多い、焦る僕は咄嗟に叫んだ。
「みんな!!!」
たった数秒の出来事。視界が開き目に入ったのは、7割半壊したカンド村だった。
「……っ?!」
「なに…これ……」
「ホープラス!!!!!!」
「?!はい!」
「……逃げるぞ」
「?!なんで?!みんな助けないと!!!」
「ダメだ従ってくれ!!これはあまりにも…」
パンッ!!!!
「「?!」」
突然。バリアが赤く染まった。嫌な音に、僕は咄嗟に目を逸らした。
「……!…大丈夫。大丈夫だ。」
「いま……」
「なんにも起きてない!!大丈夫だ!!!」
「でも…」
お兄ちゃんは僕の目を隠すと、息を飲みながら囁いた。
「まずは……逃げるんだ。」
「…うん」
頭の中が空っぽで、何も考えたくなかった。
守るために頑張って来た全ての行動は今、ただのお遊びだったのだと。
ほんとの惨状を目の前に身体が震えて動けない。
歩き出した僕の足は、飛び散った肉片の感触を感じながら進んだ。
「お兄ちゃん…」
「…まて!おんぶしてやるから……」
「…うん……」
「大丈夫!!大丈夫だ!!絶対に助けてやるからな!!」
「……うん」
ああ……
非力だ。
ここまでとは…思わなかった。
僕は勇者になるんだって。
みんなを守るって。
ほんとに。本気で。
思ってたのに。
「っ?!」
突然、お兄ちゃんが止まった。
「……?おに…」
「なんだよお前!!」
「【お前】って……普通に不愉快。【初めまして】とか【こんにちは】とか、挨拶出来ないのかなぁ?!」
目の前の紫髪の男は、声を荒らげ怒鳴った。
背中から降りた僕の手を、震える手が握る。
「てかてかてかさ?実験中なんだから…逃げるの辞めない?小賢しいよ君達。」
「…ホープラス。」
「……?」
「逃げろ!!」
瞬間。身体が動いた。逃げたらお兄ちゃんが死ぬと、分かっていたのに。僕はお兄ちゃんを置いて逃げた。
「……大丈夫だ!!!」
「ねねね??何顔引き攣ってんの?文句あるの?」
「第一魔王軍幹部クースト!!!言っとくが!俺はお前が嫌いだ!!」
「【呼び捨て】【タメ口】【お前呼び】【嫌い】…君は常識が欠落しているのかな?!目上の人には相応の態度ってもんがあるだろう!!」
「……弱点は…性格。案外覚えてるもんだな」(なぁ…ホープラス。もしまた会えたらさ)
「あぁ?!どこかで会ったことあるかな?君?」
「【盾の勇者】って知ってるだろ!!師匠がお世話になりました!!!」(楽しい話。沢山聞かせてくれよ!!)
「…あっっっの理想高めの即切れ男の弟子か?!常識の無さに納得だよ!!!」
「…」(第1魔王軍の幹部は…オールTOPランク……勝機ゼロ)
「不愉快だ!!彼も君も!逃げ出したあの子供も!!!脱走は万死に値する!!補助した君も同罪だ!!!」
「すぅぅぅぅ……元勇者学校所属!!【ネクトレ】!!!」
「うるさいなぁ?!聞いてないんだけど?!」
「一度は勇者を志た身!!!守る為なら命は厭わない!!!!」
「抗いと諦めは違うって気付きなよ!!」
第五十六話「助ける」
逃げた。大切な人と故郷を捨てて逃げた。
もう二度とあんな事は起こさない様に……僕は必死に特訓した。推薦入学証明書も貰って、認められるぐらい強くなった。なのに。
サード村で、またみんなを守れなかった。
何が足りないのか分からない。
だから…強くなるしかない。
「あれ?」
何回死んだか覚えてない。
勇者候補のエデンさんの試練開始から、30時間が経過した。特訓したバリアを、【リセット】で無効化する過去のエデンさんに、また現実を叩きつけられた気がする。
「……結局…スキルじゃんか……」
どれだけ努力を積んでも、限界はある。
なら、僕の限界はここまでなのだろうか?
……そんな訳ない。
意識を再構築しろ、1人で、みんなを守りきる為に。必要な事は……
やっぱ……【強くなる事】じゃん…
「【加速】」
「###?!」
ドカンッ!!!
あぁ……まただ。ここまでしても…
強くなれない。
次回「仲間」
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「あいつの弟子って言うもんだから期待したのにさぁ?!【虚言】【強がり】そのくせ【怖がり】。君…ほんとに不愉快だよ。はぁ……下見のつもりで来たのに、なんで機嫌を損ねないといけないんだ僕は…。ねぇ?!なんとか言ったらどうなの?!殺すよ?!ビット!!!」
「勝手に来て文句垂れてんなよ!!」
「【勝手】【文句】。思い上がない事だよ君!!目つけてた被験者を奪って改造して…許してあげた僕の【優しさ】に感謝する事だね!!」
「はいはい。感謝してますよ。」




