第四十四話「勇者学校特待生第三位」
前回。王宮内で暴れ回るゴードは、[アルベ・イス]も揉め、気絶してしまう。一方で、アリシアとセリアから魔法を教えて貰っていたアイスの元に、特待生vsヴァートの情報が入る。
睨み合うヴァートとキザ。会場は声援に包まれ、ヴァートは汗を流す。
「…」
(ホープラスが体力回復してる今、求めるのは時間稼ぎ…でも…それより…)
「…♩」
(ロゼ君が負けたのはバリアを壊されたから。万全の状態で相手すれば…)
0
カウントダウンが0になり、ヴァートとキザは右脚を踏み込む。と、同時に
「うぉ?!早!!!」
「!!」
(全力で攻めて戦いを終わらせる!!)
最速で距離を詰める。驚いたキザは後ろに仰け反り、体制を崩す。左下から振り上げた模擬刀は、そのまま横腹へと…
「なんちゃって?」
「?!」
瞬間。キザの持つ模擬刀が右横腹に触れ、ヴァートは吹き飛ばされる。
「ヴァートさん?!」
「ガッ?!?!」
「ん〜。流石に早いね。でも…ロゼ君を倒せる速さじゃない。…本気だしなよ!推薦入学者!!」
「ゴホッゴホッ…何が起こった?!」
顔を上げたヴァートは、違和感に気付く。本来視界に映るはずのないホープラスが、キザの後ろで倒れていた。
「…なるほど」
「ん?」
「[位置交換]か…」
「!正解…やるね〜。でも…発動条件までは分からないっしょ?」
「…」
キザの全身を視界に写したヴァートは、目の前の情報を確認する。
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ランク 1stランク
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「…え???」
「あっ!今情報見た!!」
「?!」
「分かるんだ〜。いっぱい戦って来たから…情報を見る時、目の中が少しだけ上向くの。でもそれはしょうがない事。突然目の前に文字が出て来たら、誰だって気になるよ。それも…見たくて見る時はもっと分かりやすい…」
「一体貴方は…」
「うん?…時間稼ぎかな?乗ってあげよう!」
「…」
ヴァートは体制を戻すと、深呼吸した。それを見たキザは集中し、模擬刀を回転させる。
「キザさん…は…名前合ってます?」
「合ってるよ」
「…なぜ勇者学校に?」
「…?何その質問??」
「時間稼ぎと…興味本位です。」
「…いいね♩気に入った!でも秘密で頼むよ?」
「…」
「…[偵察]かな。本名も偽ってる。」
「えっ?!」
驚いた瞬間。キザは距離を詰め、ヴァートの左ジャブを交わす。
「10日後…俺ら第二魔王軍と第三魔王軍が宣戦布告する。見せしめに…勇者学校の生徒が狙われる。」
「?!」
「俺がここに居るのは…それを阻止する為だ。そうだな…[裏切り者の情報屋]とでも思ってくれ。」
「秘密って?!無理ですよ!!」
「声が大きい…勇者に伝えてくれるだけで良い。それまで秘密で頼む。混乱を起こしたくないんだ」
「貴方が報告すれば良いんじゃ…」
「馬鹿…俺は第二魔王軍所属だぞ?!それが出来たら苦労しない。勇者と謁見できる推薦入学者の君だから頼んだ。」
「…分かりました。」
互いに距離を取り、見つめ合う。キザはアイコンタクトをしたのち、両手を挙げて叫んだ。
「あ〜マジか〜俺の負けだわ。」
「「「はぁ?!?!」」」
突然の告発に会場が騒つく。批判が殺到する中、笑顔で去るキザ。その横顔を見たホープラスは、違和感に気付いた。
「…?あれ…何処かで…」
第四十四話「勇者学校特待生第三位」
「はぁはぁ…ヴァート!!」
息を切らしながら走るアイスは、模擬試合場に辿り着くと、一目散にヴァートの元へ駆け付けた。
「大丈夫?!」
「…おう。大丈夫だ」
「…?」
(なにか…隠してる?)
一瞬にして違和感を感じ取ったアイスは、背後に大の字で倒れてるホープラスに驚いた。
「わ?!ホープラス!!大丈夫??」
「はい…疲れちゃっただけです!!」
「…良かったぁ」
「アイス…今から王宮に戻るぞ。」
「え?」
「っ!あっ忘れ物しちゃって…ダメか?」
「…はぁ。嘘が下手だね。」
(まっそこが可愛いんだけど…)
アイスはヴァートの頭を撫でると、笑顔で答えた。
「私達の関係にぃ〜隠し事は無しなのになぁ〜」
「ちょ?!」
恥ずかしがるヴァートは、アイスの手を握り、降ろした。
「ヴァート?」
「…な、なんだよ」
「デート一回。それで許してあげます。今日の特訓も、隠し事も。」
「え?」
「だから…」
(…あれ?私も隠し事してるくない?)
「アイス?」
「…私もヴァートのお願い。なんでも一つ聞いてあげます。…まぁ…可能な範囲なら…」
耳を赤くするアイスは振り向き、ホープラスの元へ寄った。キョトンとするヴァートに向かって、薄水色髪の女性が、嬉しそうに抱き付く。
「キスしちゃいなよ!!」
「?!セリアさん?!」
「アイスとあなたって…そう言う関係なの?」
「アリシアさんまで?!いやいやいや!!違いますって!!」
「え?あっ…はは〜んヴァートくん…さては鈍感だね?」
「はい?!」
「女の子は、好きな人にしかあんな事言わないんだよぉ〜〜?ね?アリシアちゃん!」
「…あの様なセリフ…歯が浮くからまず言わないかな。まぁ…好きな人からのお願いなら…なんでも答えたくなるのが恋する女の子って感じ。」
「でしょ?!ヴァートく〜ん?隅に開けないなぁ〜。良かったらこの後私の部屋使ってく?私はアリシアちゃんの部屋にお邪魔するから!」
「え…」
突然の勧誘に、アイスの耳がピクピク動く。しかし、鈍感型主人公のヴァートは流れを一掃した。
「いえ!今から王宮に向かうので!」
「…断るんだ…」
「ヴァートくんの馬鹿」
「え?」
「うぅ…」
「?アイスさん?大丈夫ですか??」
「大丈夫…」
「?」
あらか様に落ち込むアイスと、なぜ罵倒されたか分からないヴァートの後ろから、テンションの上がった紫髪の男が叫んだ。
「なら僕がセリアの部屋を!!」
「入れる訳ないじゃん。」
「はぁぁぁぁ?!ま、まぁ?お楽しみは取っておくのが吉。」
「?私は先にイチゴ食べる派だよ?それよりヴァートくん!!王宮に戻っちゃうの?」
「はい!…忘れ物しちゃいまして…」
「そっか〜じゃあ先生はここでお終いだね。ヴァートくん?」
「はい?」
「セリアお姉〜ちゃんって言って?」
「え?」
「ホープラスくんも!」
「え、セリアお姉ちゃん?」
「はぁぐ♡」
セリアは仰け反り、地面に倒れた。
「何やってるの?」
「いや…弟欲しかったから…夢が叶った…」
「おめでとう」
反応を見て少し笑ったアイスは、満面の笑みでセリアとアリシアに抱き付いた。
「セリアお姉〜ちゃん大好きだよ?アリシアお姉ちゃんも!!大好き!!」
「はわわわわ♡」
「…あっ。悪くないかも」
「アイス…なにやって…」
ツッコミを入れようとしたヴァートに、アイスは正面から抱き付いた。
「うぇ?!」
「ヴァート兄〜ちゃん?大好きだよ!!」
「おっ?」「わぁ?!」
赤面するヴァートは、アイスから離れ、戸惑いながら喋った。
「俺にするのは違うだろ?!?!」
「照れてる?」
「…うるさい」
ニヤニヤするセリアはヴァートに近づき、耳元で囁いた。
「ほらほら、アイスちゃんがしたのなら、ヴァートくんもしてあげるべきじゃないのかなぁ〜?」
「う…」
続いてホープラスも立ち上がり、ヴァートに話しかける。
「きっと喜びますよ。」
「うぅ…」
顔が真っ赤なヴァートはアイスにゆっくりと近付いた。
「ごめんって…からかっただけだよ〜」
「アイス…」
「え?」
瞬間。ヴァートはアイスを抱きしめた。咄嗟のことで頭がパンクしたアイスは、よく分からないままヴァートの服を掴む。
「?????」
「…アイス……。」
「…はぃ…」
「だ…。」
「……」
「大好き…です…」
「…///あっと///あの…//」
「カット!!!」
「…え?」
「お姉ちゃんって付けないと!最初っからね!」
「そんな…」
恥ずかしさがMAXに到達したヴァートは、少し下を見ると、大きな目をして赤面する白髪の少女が、恥ずかしそうに呟いた。
「ゔぁーと…」
咄嗟に離れたヴァートは、大きな声で叫ぶ。
「!駄目!!やっぱ駄目!!この流れ終わり!!」
「え〜…しょうがないなぁ」
(…まぁ鈍感恋愛でこれなら大幅進捗かな…)
「??????」
(ドキドキした?!?!)
「…」
(なんだよ…その顔……)
胸に手を当て、深呼吸する。
「…俺の馬鹿」
(何考えてんだ…アイスは家族だろ…)
加速する鼓動が、ヴァートの思考を鈍らせる。ほんの数秒。一瞬過った思考が、ヴァートの心を揺さぶった。
「…っ」
(女の子として見ちまった…)
次回「戸惑い」
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