第三話「旅立ち 後編」
前回ヴァートとアイスは勇者学校への飛び級が決まり、ファー村を旅立つ。目指すはサード村。
サード村に向けてヴァートとアイスは歩いていた。
「随分歩いたし。サード村までそろそろだな。」
▶︎黒髪の少年【ヴァート】
「ねーヴァート!疲れたーおんぶしてー」
▶︎白髪の少女【アイス】
「そろそろだから我慢しろって」
「んーー。ケチ!」
微笑ましい会話の途中アイスが急に立ち止まった。
「?どうしたアイ…モゴ!!」
アイスはヴァートの口を手で塞ぎ、近くの茂みの下に隠れた。
「シー!ヴァート。人が居る。」
「モゴ?」
人が居るなら王国の情報を聞けば良いじゃないかと考えたヴァートだが、灰色のローブを着たその男の服に描かれているマークを見て冷静になった。
「反勇者のマーク…」
勇者のマークとは一輪のマリーゴールドが描かれた勲章の事なのだが、反勇者マークとはマリーゴールドをバラバラにしたマークである。反勇者マークを掲げている者は王国が直々に指名手配をし、勇者が捕まえるのだが…
(逃げるか…いや追いつかれる。隠れてやり過ごした方が…)
普段何事にも立ち向かうヴァートは冷静に判断した。
(堂々と反勇者マークを掲げて捕まってないと言う事はそれ程の実力があるって事だ…)
(うん。少なくともSランクは超えてるよね…)
息をひそめ、一ミリも動かず、灰色のローブを着たその男が離れるタイミングを待った。
空気が重い。汗すら出せない状況でヴァートは考えた
(今俺が出ていけばアイスは助かる…)
その時、ヴァートの右手にアイスの左手が触れた。指を絡め、アイスはヴァートの手を離さない。
(ヴァートは私が守る…)
緊張がピークに達した瞬間灰色のローブの男は小さな声で喋った。
「攻撃してこないってことは…勇者じゃないな?」
▶︎反勇者組織[灰色ローブ]【???】
「?!?!」
全身の力が抜ける。バレてた。動かないといけないのに。体が動かせない。意識が飛びそうだ。ふとアイスに目をやるとアイスは既に意識が飛んでいた。
(守る…守らないと!)
「ぅぉおおおおおお!!!」
全身に力を入れてヴァートはなんとか立ち上がった。
しかしそこに、灰色のローブを着た男は居なかった。
再び力が抜ける。いつ居なくなったのか?何者だったのか?そんな疑問よりもヴァートはアイスを心配した
「アイス!!」
美しい横顔は目を閉じまま動かない。繋がれたアイスの左手からは脈拍を感じる。
「良かっ…た」
そしてヴァートはアイスの横に倒れ込んだ。閉じていく瞳の中でアイスの横顔を映しながらヴァートは目を閉じた。
「…きて!お…て!!起きて!!」
聞き覚えのない声がヴァートを起こした。開かれた目に映ったのは黒髪の男が覗き込んで居る光景だった。
「アイス?!」
勢いよく起き上がるとヴァートと黒髪の男は頭をぶつけた。
「イッテェ!!!」
「?!?!」
「あっ…すいません」
今の激痛で目が覚めた。あたりは既に夜になっており、アイスは焚き火の横で眠っていた。肉が焼かれた良い匂いがする。
ヴァートは黒髪の男に問いかけた
「貴方は一体…?」
すると黒髪の男は頭を押さえながら小さな声で答えた
「あっ…ぼ!僕はホープラス!です。」
▶︎黒髪の少年【ホープラス】
ヴァート(15歳)剣士
アイス(15歳)魔法使い
new ホープラス(14歳)盾
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次回から毎週日曜日昼12時に更新します。
是非読んでください!!