第三十七話「[記憶]」
前回…突然深夜に起こされたヴァートは、ゴードとヘルアの特訓に付き合う事となる。急遽始まったゴードとの模擬戦にて、ヴァートは[笑いの勇者]ジョーカーから貰ったスキルと、自身のスキル[記憶]を初めて使う事となる。
反勇者[バン]のスキルを[記憶]したヴァートは、ゴードとの模擬戦に勝利し、ヘルアとの模擬戦を始めようとしていた。
「[剣の魔神]…[ソーディア]…[記憶]」
「?!」
小さく呟いたヴァートは目の前の黒髪の男[ヘルア]を視界に写した。
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スキル [破壊]
死亡数 0
弱点 なし
ランク 5thランク
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「…」
(弱点なし…やっぱり簡単には倒せないよな…)
「行くぞ?」
「はい…」
(でも大丈夫だ…脳が冴えてる…今なら何でも出来る気がする)
ヴァートの様子を見ていたヘルアは、少し呼吸を整えた。
「…」
(よし…基礎でなくオリジナル…ヴァートは恐らく新しいスキルを2つ以上は持ってるはずだ…扱い慣れていないスキルをアドリブで使用してる…なら)
ヘルアはその場でしゃがみ、右手を地面に付け…
<広範囲破壊>
「?!」
ヘルアがスキルを発動しようとした瞬間。ヴァートは突然地面を蹴った。
「な?!」
<左脚の反撃>
「速すぎだろ?!」
飛び込んでくるヴァートに対し、ヘルアは両手を地面に付け、回転。そのまま左脚の踵をヴァートの顎へと…
「見えてますよ」
「知ってる」
「?!」
背後を取ったヴァートは目の前の情報に驚いた。ヘルアの反撃は避けられる事を想定した上での行動。騙されたヴァートは咄嗟に飛び上がろうとしたが…
<広範囲破壊>
「破壊」
「ぐっ?!」
ドゴンッ!!!!!!!
激しい衝撃が発生し、ヴァートは体制を崩した。瞬間ヘルアは、右手の模擬刀をヴァートの腹に薙ぎ払った。
「ガァ?!」
(駄目だ…情報が入って来ない?!)
「良かったよ」
吹き飛ばされたヴァートは300m程吹き飛ばされ、川に転がった。
「未来でも見てるのかと思ったが違うみたいだな」
「ハァ…ハァ…」
(条件が揃わないとジョーカーさんのスキルが発動しない…ならやっぱり…)
「続けるか?」
「魔力![ソード]!![記憶]!!」
ヴァートは右手を伸ばし、叫んだ。しかし結果は、ヴァートの望まない方向へと向かった。
「出来ない…」
「…続けるんだな?」
「…」
走り始めたヘルアに反撃する為、ヴァートはフラフラと立ち上がる。
「…」
([爆発]は使えた…じゃあ何でだ?!こっちにも発動条件が?!)
<石>
「…石?」
ガンッ!!!!
情報が見えた瞬間。ヴァートは足に衝撃が走り、前に倒れた。困惑しているヴァートを見たヘルアは模擬刀でヴァートの模擬刀を吹き飛ばし、切り返した後、ヴァートの後頭部を叩いた。
第三十七話「[記憶]」
「…うわぁ?!?!」
「起きたか」
「ヴァート!大丈夫か?!」
「…あれ…?」
「よかったぁ〜〜」
目が覚めたヴァートは、突然白髪の少女に抱き付かれた。
「?!アイス?!なんで…」
「爆発音がしたから起きたの!!豆腐ハウスにヴァートも居ないし!凄い音が聞こえて…大丈夫?!」
「あぁ…大丈夫。…」
「…ヘルアさん…ゴードさん…説明して貰っても良いですか…」
「…特訓してた。」
「…特訓?」
「俺とゴードの特訓をヴァートくんに頼んで、模擬戦をしたんだ。軽い手合わせのつもりだったけど、お互い熱くなってしまい…」
「俺とおっさんで連戦したからな〜。めちゃくちゃ楽しかったけど…」
「連戦って…昨日何があったか覚えてないんですか?!」
「ちょ…アイス…」
「ヴァートは休んでて!!」
「…はい。」
「そんなに特訓したいなら私が相手になります!!これ以上ヴァートに無理はさせないで下さい!!」
「…悪かった」
「…?お前が相手になる?!おいおっさん!めっちゃ良いじゃねぇか!!やろうぜ?!」
「ちょっと黙ってろ」
「何だよ?ビビってんのか?こいやアイス!!お前の実力も知りたかった所だ!!!」
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2分後
「悪かったな」
「謝るぐらいなら最初からヴァートを巻き込まないで下さい!!」
「…」
「…アイス…悪かった…って…と…取り敢えずこの…氷…解いてくれないか…?」
「貴方は黙ってて下さい!!!」
「…」
「アイス…」
「何!!」
感情的になったアイスを止める事は、ほぼ不可能に近い。ただ、アイスを止めてでも、ヘルアに聞いておかないといけない事がヴァートにはあった。
「…本当にごめん…でも…強くなるために必要な事なんだ。…少し話しても良いか?」
「…まぁ?今後私の知らない所で無茶しないなら?良いけど」
「…分かった…ありがとな?…ヘルアさん」
「…スキルの事か?」
「はい!…僕のスキルには、[発動条件]があるみたいです。戦ってみた感じ…憶測でも良いので!…思った事を教えて頂けませんか?」
「…はぁ…そうだな。俺のスキルは掌で触れたら発動。ミールも覚醒してるから条件は同じ。ヴァートくんのスキルが、相手の行動を感知するスキルだとすれば…[敵の視認][ランダム][自身の体調][必要な行動]が発動条件としてあり得るだろう。」
「…なるほど…」
「可能性が一番高いのは…[自身の体調]だろうな。例えば…[避けれる体制]や[回避出来る攻撃」にのみ発動するって感じかな?」
「回避出来る攻撃…確かに…」
「それとヴァートくん?…スキルに頼りすぎてないか?」
「あっ…」
「最後に投げた石…簡単に避けれただろ?情報が出るのを意識的に待ってたら避け切れる攻撃も避けれない。」
「分かりました…あと一つ!」
「…ん?」
「ヘルアさんとの戦いで、僕は[剣の魔神]の魔力を[記憶]しようとしました。…でも出来なかった…なぜ反勇者の魔法は使えて、[剣の魔神]の魔力は使えなかったんでしょうか?!」
「…ん〜〜。普通に考えたら魔法と魔力だと違いが大き過ぎる…とか…ん〜〜…難しいが…」
「…理解度じゃないの?」
「!」
ヴァートとヘルアが悩んでいると、話を聞いていたアイスが呟いた
「理解度…」
「そうじゃない?魔法の使い方は私が何回か教えてるし、反勇者とは正面から戦ってる。」
「…ならアイスくんの魔法も使えるって事か?」
「確かに…」
ヴァートは少し考えて、森の方に振り向くと、右手を前に出し、詠唱を始めた。
「アイスロック!」
「…」
「…出来ないな…」
続けてヴァートは地面に右手を付けて叫んだ
「破壊!!!」
「…」
「あ〜…すまんヴァートくん。俺のスキルは一工夫必要なんだ。ただ手で触れるだけだと発動しない」
「なるほど…」
少し落ち込んだヴァートは顔を上げ、左手を上に上げた。
「爆発!!!!」
「ヴァート…」
「?」
「なんでぇ?!?!」
ゴードとの模擬戦で発動した反勇者の魔法ですら発動しなかった。困惑しているヴァートだったが、氷付けにされていたゴードが声を上げた。
「勇者候補みたいなスキルなら[制限時間]か[使用回数]とかがあるんじゃねぇか?」
「?!それだ!!」
「確かにその可能性が高い…スキルの成長具合で延びたり増えたりするケースは多くあるからな」
「アイス!!ヴァートに恩を作ったんだ!!解いてくれ!」
「特訓でチャラです!!!ちゃんと反省しないと解きません!!!」
「なっ?!?!」
「取り敢えずヴァートは帰って休んで来て!ヘルアとゴードには話があるから!!」
「…おう」
アイスの迫力に、ヴァート、ヘルア、ゴードは何も言えなかった。疑問が残りつつもヴァートは豆腐ハウスに戻った。数分経ち、就寝した頃。ヘルアとゴードは未だに説教を喰らっていた。
次回「8人」
説教
「ヴァートは一昨日目覚めたばっかりで!!その日ですら試練があったのに!!少しぐらいゆっくり休ませるって考えはないんですか!!!」
「…悪かった」
「アイス!反省した!解いてくれ!!」
「黙って聞いてて下さい!!!」
「怖…」
「反省したら解くって言ったのはアイスだろ?!」
「それが反省してる人の態度ですか?!」
「ゴード…少し黙れ…」
「と言うか!!ヘルアは25ですよね?大人ですよね?何で気を利かす事も出来ないんですか?!」
「…うん。本当にごめん」
「あはは!!確かに!!おっさん25でそれはヤバいだろ!!」
「ゴードもですよ!!!!!4歳年下相手に配慮も無く!反省の色すら見せない!!恥ずかしくないんですか?!」
「うん…本当に悪かった」
「な?!4歳も年上にその態度は何なんだよ!!」
「同期に年齢なんて関係ないです!!!!」
「確かにそうだな。ごめんな?」
「年齢を出したのはアイスからだろ?!?!」
「人としてって事ですよ!!!同期である以上、年齢による上下関係なんで物はありません!!私が言っているのはその年齢でその配慮の無さはおかしいでしょ?って言ってるんです!!!」
「うん…すまなかった」
「あ〜?わかんねぇ〜。取り敢えず解いてくれよ!悪かったって!」
「だ〜か〜ら〜!!!!!!!!」
因みに説教は…朝まで続いた。
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