第三十六話「二日目」
前回、男女に分かれ温泉に入ったヴァート達は互いに恋愛話を語る。その中でホープラスは、ライトに灰色のローブを着た男が[虚奪の魔神]である事を教えられ、同時に[遊戯の勇者]である事も知る。
一方でアイスは、自身の気持ちをミールとシャルの助言により、再確認する事となった。
「…き…!…お……!!起きろ!!」
「うぁぁぁぁ?!?!…あ」
「…し〜〜!!ヴァート!着いて来い!特訓だ!」
「…ゴードさん?」
第三十六話「二日目」
お風呂から上がった後、ライトに案内して貰い、ヴァート達はボロボロのままの特別寮へと戻った。各々自由行動し、ヴァートはすぐ睡眠に入ったのだが…
「ふぁぁぁ〜…ゴードさん…特訓って?」
「特訓は特訓だ。取り敢えず着いて来い!」
「……」
まだ眠気が残っているヴァートは肌寒い森の中を歩く。満月が森を照らし、川の流れる小川に着くと、岩に腰掛ける黒髪の男性。ヘルアが立ち上がった。
「来たか」
「ヘルアさん?」
「睡眠時間を削って申し訳ない。…今日…いや…日を跨いだから昨日か、各自勇者様の力を見たはずだ。」
「…はい…?それがなにか?」
「勇者様の強さ、魔王軍の強さ。戦ってみて改めて感じた…。俺達は弱い」
「!」
「チッ…認めたくねぇけど?まぁ…3ランクの魔王軍相手に、俺一人だと手も脚も出せなかった。…これが現実。な訳ない。」
「その通りだ。勇者様達と比べて、戦闘経験が圧倒的に少ない俺達は、戦場においての足手纏い。だがそれもここまでだ。戦闘経験は積めばどうにかなる。現実を受け入れるのは、努力をした後だ。」
「つまり!努力して勇者様達に追いつこうって事ですね!!」
「その通りだ」
「分かり…?何でこの三人なんですか?」
「三人じゃねぇよ。正確には二人だ」
「???」
「説明する。今の俺たちの中で、戦闘面の足手纏いは俺とゴード。ヴァートを呼んだのは、俺達の特訓の監督をして欲しいからだ。」
「?!二人の監督?!無理ですよ!!てか二人の方が俺より絶対強いですって!!」
「お世辞はいらねぇよ。勇者候補との模擬戦で、動けなかった俺より先に動けたお前は、戦闘経験…いや、本当の殺し合いを経験してた筈だ。…俺は試練以外だと、今回が初めてだった…」
「あっ…」
「アイスくんは広範囲魔法、マナ量、サポート。ホープラスくんもサポートとバリアを使っての範囲捕縛。リーラは回復特化の異常回復。レーチは新スキルと後方支援、情報管理、戦場の把握。ミールは…言うまでもなく、少なくとも俺やゴードより優れている所が多くある。」
「ヴァートも剣術、身体能力、判断力…それに…勇者候補の投げた石。…俺は避けれなかった。」
「…でもやっぱり!」
「そこでヴァートには俺達の特訓に付き合って貰おうと思ってな!お前も強くなれるぞ」
「!」
「それとヴァートくんの新スキルは俺達の成長がよく分かるだろ?」
「?!何でそれを!?!?」
「勇者様との会話…盗み聞きしたんだ。悪いな。とまぁこんな感じだ。…頼んでも良いか?」
「頼む」
「…」
二人がヴァートに視線を送る。ヴァートの視界には二人の情報が頭の上に表示されていた。満月を見上げ、ほっぺを叩いたヴァートは、元気よく答えた。
「俺でよければ!!やりましょう!」
「よし来た。」
「しゃあ!!」
「じゃあまずはゴードとヴァートくんでタイマンと行こう。」
「へ?」
「その後は、俺とも頼む。ヴァートくんもスキルバンバン使ってくれ。その方が効率がいい」
「まっ?!」
ヴァートが驚くと同時に、ゴードが右腕を振るう。反射的に避けたヴァートは距離を取り、ゴードの全身を視界に写した。
______________________
スキル [超反射]
特殊 毒耐性
特殊 加速
特殊 魔神体質
死亡数 0
弱点 スタミナ・魔法・バリア
ランク 5thランク
______________________
(魔神体質?!)
「行くぞヴァート!!」
ゴードは左踵で地面を踏み込み、足先に力を込める。瞬間ヴァートの視界には、別の情報が表示された。
<突進>
「?!」
咄嗟に防御の姿勢に入る。飛び込んでくるゴードの右拳を受け、反撃に出るが…
「グッ…」
両腕をゴードに掴まれ、ヴァートは横腹に蹴りを入れられた。
「ガッ?!」
「次!!」
ゴードは手を離し、空中で回転する。
<蹴り>
「?!」
1秒にも満たない情報は消え、再度ゴードの蹴りがヴァートの頭に直撃した。
ドンッ!!!!
「?!?!」
<右腕の振り下ろし>
「くそ?!」
地面に叩きつけられたヴァートは咄嗟に転がって回避した。ゴードの右拳は地面を殴り、再度体制を戻す。
<蹴り>
「?!」
咄嗟にヴァートは地面を叩いた。瞬間、激しい衝撃が発生し、ヴァートの身体は10メートルほど飛び上がった。
「なんだ?!」
「?!これは?!」
「…あの時の?!」
(どうする?!着地…いや…狙われる!スキル!扱えるのか?!どうする?!?!思い出せ!!再現するんだ!!空中での戦闘を!!)
「…は?」
「身体能力…スキル…魔法…[記憶]」
「何が起きてる?!」
「再現する!!」
戦闘を見ていたヘルアの視界には、ヴァートの足から赤色の炎が発生していた。
「反勇者!![バン]!!」
ドガンッ!!!!!!!!!
激しい爆発音が響き、衝撃波と土煙が辺りを覆った。ヘルアは驚き、瞬時に土煙に左手を伸ばした。
「破壊!」
パンッ!!!!!!!!
瞬間土煙は消え、ヘルアの視界には右腕を伸ばすゴードが写り、その後ろを獲るヴァートが映った。
「クソッ?!?!」
「ハァ!ハァ!…俺の勝ち…で…良いですか?」
「…?!」
(あれ程の加速を寸止めしたのか?!)
「クソックソッ!!…ああ"!負けだ!!」
「…ハァ…ハァ…ん…じゃあ…」
「?!」
「ヘルアさん。やりますか」
「…」
(なんだ?…気迫に負けたのか?今…)
「…宜しく頼む」
ヴァートの迫力に、ヘルアは息を呑んだ。互いに右手を下に下ろすと、その場で模擬刀が出現し、二人は手に取る。
「本気で行かせてもらう」
「…身体能力…魔力…再現…」
「?!」
再び発生した気迫とヴァートの目は、ヘルアに緊張感を与えた。
「[剣の魔神]…[ソーディア]…[記憶]」
次回「[記憶]」
シャルの自室
「…(Zzz)」
「ふぅ…んん!はぁ〜…レポート終わり…結婚かぁ…。考えた事なかったけど…そっか…リーシャもいつか…好きな人が出来て…結婚して…子供が出来て…。…うん。その為に…頑張らないとなぁ…」
「…がんばるぅ(Zzz)」
「…フッ。そうだな。…すまんな。リーラ様。隣。失礼するぞ。」
「…んん…(Zzz)」
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