第三十三話「解放 結」
前回、ブラッドとノアは過去に起きた「カンド村燃焼事件」について、語った。その途中、試練の破壊に成功したカイトとライト。試練が終わり、他の勇者たちは…
西部
「何だ?!」
魔王軍と戦いながらヘルアとカイトを探すヴァートの視界は突如真っ白に輝いた。敵の攻撃と勘違いしたヴァートは瞬時に地面を蹴り、空に飛ぶ。
「?!」
地上から30メートル程飛び上がったヴァートは自身の脚力に驚き、体勢を崩す。
「うわぁ?!」
「光の風」
「へ?」
落下するヴァートの周りに見えない風が優しく包んだ。その風はヴァートに[落下速度低下]と[空中移動]を可能にさせ、咄嗟に下を向くと、さっきまで居なかった民間人が溢れかえっており、辺りを見渡すと、白髪短髪の少女[アイリス]が街の影から手を振っていた。
「アイリスさん!!」
「うるさい。早く来て」
「?何ですか!!」
「…」
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商店街路地裏
ヴァートの体を纏う風は消え、アイリスとヴァートは王宮を目指して歩く。数分間無言の状態が続き、ヴァートはついに対兼ねて、声をかけた。
「…あの?」
「何?」
「なんか…大丈夫ですか?」
「…。…」
「…?もしかして、アイスと何かありました?」
「…別に…。」
「なんか…アイリスさんって、アイスの妹みたいですね!」
「!!妹…」
「はい!あっ!アイスの妹なら俺の妹でもありますよね!お兄ちゃんって呼んで貰っても良いですよ?」
「…」
「…はは。…すいません。ジョーカーさんの真似をしたつもりだったんですが…元気なさそうだったので」
「ジョーカーといたの?」
「はい!色々叩き込まれました!!最初は戦闘を見てただけなんですけどね…なんか後半力が有り余っちゃって!!」
「じゃあジョーカーのスキルだよ」
「はぇ?!」
「有り余る力も、跳躍も、さっきのジョークも。」
「?どう言う…」
「…なるほど。ジョーカーはタチが悪いから、気に入られたのは不幸だと思った方が良いよ」
「?ジョーカーさんは良い人でしたよ?」
「…君。話せば誰とでも仲良くなれちゃう人?。…羨ましい…。さっきの質問だけど、ジョーカーは君に、[スキルを貸した]んじゃないかな?」
「………はい?!?!」
「やっぱり。黙って貸したんだ。ジョーカーってタチが悪いから。…私は質問に答えた。次はあなたの番。…どうしていも…」
「芋?」
「…アイスと一緒に居たと分かるの?あなたのスキルは[記憶]だけだとカイトから教えて貰ったけど…ノアやゼウスみたいに…」
「え?!ん?????」
「…何」
「[記憶]…って?え?俺スキル覚えてるの?!」
「…」
「マジで?!?!」
「良いから答えて」
「良くないですよ!…って事は!今二つ?!二つスキル覚えてるって事ですか?!」
「…うるさい…」
「ごめんなさい!」
「答えて」
「…って言っても、ジョーカーさんが言ってた事を元に考えただけなんですけどね…」
「ジョーカーが?」
「はい…」
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数分前
「探すって言っても…どこを探せば」
「ん〜簡単だよ?アキラは考えもなしに僕達二人をここに飛ばした訳じゃない。恐らく相性の良い、もしくはスキルの適合性の合う者同士を送ってる。そうなれば…周りの戦況を確認して、居そうと思う所に迎えば良い。カイトとヘルヤ君は恐らく…ノアかグレーの所に居るんじゃないかな?」
「ヘルアです」
「ジョークだよ!」
「…」
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話を聞いたアイリスは目をパチパチさせて眉毛を寄せた。
「私勘の良い罪人嫌い」
「罪人?!」
「…その話が本当だとして、どうしてこっちに?こっちは魔法を出してたから、二人がいる可能性は低いと思うけど」
「ぁあ!反対側はジョーカーさんが行ったから…」
(アイスと合流したかっただけなんですけどね…)
苦笑いしながらヴァートは隠した。その顔を見たアイリスは、自身の胸に手を当て、小さな声で囁いた。
「ごめんなさい…」
「?何ですか?」
「…私は…その感情を知らない…だから分からない…」
「?あの?」
「ごめんなさい…」
アイリスは自身の胸を強く押した。…その度に…大きく空いた感情を探す。
"あの日"から何かが変わった。大切な何かを忘れた。膨れ上がった心が空いた。
何度も何度も何年も何回も…
「ごめんなさい…」
彼女は"ナニカ"を探した。
第三十三話「解放 結」
「なかなか良い立ち回りだと思わないかい?」
「ああ。[俺]もそう思う…」
「って事で!貸し一つできた訳だけど?勇者様は、何をしてくれるのかな?」
鉄の牢獄がカラカラと音を鳴らし、扉が閉められる。
「…」
「ブラッドの狙いは[レイ]と言う反勇者の回収だった。それを[未来視]したライシは同じ牢獄に入れていた三人の反勇者を別の牢獄に移し、僕が鍵を渡した。話し合いなしでここまで噛み合ったのは…運としか言えないだろう!やはり神は、僕を選んでいる!!」
「神はともかく…最小限の損失に加えて、国民含めて誰一人怪我なく話を終わらせた事に…礼の一つや二つ…あってもいいと思うんだが?」
ラックとライシは目の前に立つ現勇者最強の男[ゼウス]に問いかけた。
「…悪かったな。信頼してなかった。3日後模擬戦でもやろうか」
「!本当かい!あぁ!!これも運が良いとしか…」
「…信頼してないなんてよく堂々と言えるな。相変わらずイラつく奴だ…」
「取り敢えず…部屋に戻るぞ。王がお見えかもしれないからな」
「だったらとっくにアキラが戻してるだろ」
「…今アキラは盤上を触ってない。後輩が触ってる」
「「は?」」
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1stランク会議室
「頭痛い?!?!?!?!?!」
「流石は俺の弟子だな。頭痛で済んでる」
「はい?!」
「私は失神しましたからね」
「え?!その話詳しく!」
「それにしても不思議だ…何故こうも…説明もしていないのに…」
青く輝く盤上の駒をレーチは素早く動かした。瞬間会議室が賑やかになる。
「もう終わりかいって?!凄いね君!盤上を操作出来るのかい?」
声を荒げたのは[笑いの勇者]事ジョーカーだった。
「痛い!!!!!!!!」
「…レーチくん?もしかして…過去に似た様な事した事あるかな?」
「はい?!ゲーム!ゲームに似てます!!これ!!」
「げーむ?」
「操作方法なんてやりながら覚えるんですよ!!痛い!取扱説明書を先に見るやつは一生三流止まりですよ!!痛い!!」
続いて、ヘルアとグレーも会議室に戻された。
「…レーチ?」
「はは!!盤上扱えるの…アキラさん以外に初めて見た!」
次々と駒を動かすレーチを横目に、[盤上の勇者]は心が躍っていた。
(俺の弟子…凄いのか?!)
次回「集合」
今回の大型試練にて、各推薦入学者は大きく成長しました。
ヴァート
→スキル獲得
アイス
→新しい技
ホープラス
→バリアの総量と耐久性強化
ヘルア
→近接戦闘の強化
レーチ
→スキルの獲得
ゴード
→毒耐性up、近接戦闘の強化、スタミナの強化
リーラ
→回復魔法の詠唱短縮、回復効果up
ミール
→スキルの効果時間up、俊敏性up
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