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世代の勇者  作者: グミ
第一章 「王国」
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第二十七話「無敵」

前回。グレーとアキラに教えを受けたヘルアとレーチ。特にレーチは自身の目標を決め、[盤上の勇者]アキラの弟子となる。一方でゴードとリーラは…

南西部


「ハァ!!ハァ!!ハァ!!!ど、どうだちくしょう!!!魔王軍が聴いて呆れるな!!」

息の荒いゴードは大きな声を出した。地面に倒れた魔王軍、300人の真ん中に立ち、空を見上げる。


「うん。凄いね。強い。まだまだ居るから頑張ろう。」

「凄…(えぇ?!?!)」

「はぁ!!…ん。いくらでも!!かか…てこいやぁ!」

フラフラなゴードは約10分間、休憩なしで戦い続けていた。怪我をしても途中リーラが回復させる為、呼吸を正す時間もなく、リーラの回復魔法はスタミナを回復出来るわけでもないので、案の定。ゴードは正面から地面に倒れた。


「ゆっくりで良いよ。スタミナ回復が済んだらまた頼るから。」

「はぁ?!…よ…余裕だから!!まじで!!」

「大丈夫。今回成長を期待してるのはリーラちゃんだから。」

「あ?」

「!(わ、私?!)」

ヒーリェはリーラの前まで歩き、肩を触る。ゆっくり撫で下ろし、右手の掌をニギニギと握った。


「…」

「あの…(疑問)」

「回復魔法発動後。対象者の傷が癒えるまでの時間。分かるかな?」

「…はい!傷によって変わるんですけど…大体10秒ぐらいで…(軽い傷は3秒)」

「だったら魔法詠唱のタイミングをもう少し早くしてみるのも良いかも。怪我した後の魔法詠唱はたった数秒でも命取りになるから。」

「…はい!(そっか…)」

「してみて?」

「!(今ですか?)」

「ここは戦場。いつ何処で被害が出るかわからないなら、すでに魔法詠唱は済ませておくべき。回復魔法を使うなら。いつ。どんな時でも。寝てる時でも、平和な場所でも、魔法詠唱は済ませておくべき。分かりにくかったらごめんね。」

「!いえ!すごく分かりやすいです!(なるほど)」

「それと。」

「はい?(?)」

「マナは見える?」

「マナ?(??)」

「…ごめん。マナが見えるかどうか知りたくて。」

「マナって見えるんですか?!(初めて知った!)」

「うん。ある程度の努力は必要だけど。あと。産まれた時からマナと繋がれば努力しなくても見れるよ。アイリスは特殊な例だけど。」

「繋がる…(マナと…)」

「取り敢えず。今は魔法詠唱の短縮を意識してみよう。そろそろ良いかな?」

手を離し、振り向いたヒーリェはゴードを見る。さっきまで地面に倒れていたゴードはそこには居なく、すでに魔王軍の元へ走っていた。


「おらおらおら!!!お前らより、ヴァートとおっさんの方が5000倍強いぜ!!!」

「…元気だね。」

「そ、そうですね(唖然)」

リーラは魔法詠唱を済ませ、ゴードの戦闘を見守る。集中しているリーラの横でヒーリェは異質な動きをするマナを確認した。



「3ランクがいるね。」

「え?!(3?!?!)」

「お!!まじか!!!」

「いけるかな?」

「当たり前!!!」

「え!えぇ…(怖い)」

異質な気配がゴードとリーラの肌を刺す。勇者候補。カイト程ではないが、また別の感覚が二人の体を拘束した。




         第二十七話「無敵」




「…!」

「?!(また動けない!!)」

「来るよ。」

動けないゴードとリーラに向かって、一人の男が歩いてくる。空気の重さが変わり、拘束を解除したゴードは思わず咳き込む。


「ゴホッゴホッ!!んだ?空気が…」

「うん。このスキルは王宮の手配書に書いてあった物だね。」

「……(空気?)」

「ッ!!スキル!何のスキルだ?」

「…[毒素]かな。第三魔王軍には人体に影響させるスキルを持つ人の巣窟だから。一定数吸うと全身が痺れて動かなくなる。でも大丈夫だよね?リーラちゃん。」

「…!はい!(解けた!)私の回復魔法は状態異常も治せます!!(結構万能)」

「なるほ。役に立つもんだな。陰コミも!」

「陰コミ?!(はい?)」

リーラは戸惑いながらすぐにスキル[異常回復]を発動させ、魔法を発動させる。


「お?不思議な感じだな。肺が綺麗になる感じ?」

「私これ好き。」

「はぁ…ありがとうございます…(何でこんなに呑気なの…)」

はしゃいでいるゴードを視界に入れた魔王軍幹部見習い[エルドラ]は頭を掻きながらネチネチと喋り始めた。


「あ?何で元気なの?意味分からんわ」

「おいこら!!毒系スキルにしては弱すぎだな!!」

「ゴードくん。リーラちゃんが居なかったら今頃倒れてるよ。」

「……相手が悪かったな!!」

「スキルも知ってんのかよ…はぁ。意味分からん。俺の得意分野は…死にかけの虫を潰す事なのに…」

「え…(ドン引き)」

紫色の髪を揺らし、空を見上げる。爪の剥げた指を空に掲げ、下ろし、頭を下げる。


「帰る」

「は?」

「え?(???)」

「…」

「なんか…もう良いわ。こいつら置いていくから、勝手にやってよ。」

エルドラは振り返り、背中を見せながら歩き始めた。納得のいかないゴードは大声で叫ぶ。


「腰抜けか?よっぽどスキル頼りで生きてきたんだな!!」

「…勝手に言ってろ」

「お前のスキル!周りのモブにも効果あるんだろ?操作出来てねぇじゃねぇか!クッソ雑魚だな!!」

「…」

「ゴードくん。帰るらしいからもう良いよ。」

「…(何できたんだろ)」

「やり合ったところで、死にかけの虫になるのはあっちの方なんだし。」

「…!(え?)」

「潰されるのが怖いんだよ。可哀想。」

「うぉ!!」

「?」



「……ぶっ殺す」



「帰らないの?…!家分かる?」

「お前だけは絶対殺す!!!」

「ごめん。沸点低いっぽい。任せるからお願いね?」

「よっしゃ!!こいや雑魚!」

「えぇ…(めちゃくちゃだ…)」

ゴードが走り出し、リーラは魔法詠唱を済ませる。エルドラは怒りに任せ、近づいて来るゴードに右手の拳で殴る。


「バーーーカ!!単純過ぎなんだよ!!」

「死ね!!」

「あ?」


ボンッ!!!!!!


エルドラの拳から紫色の煙が吹き出し、ゴードを家の壁に押し潰す。


「が?!」

「ゴードくん!!(あれも毒素??)」

「大丈夫。あれぐらいなら骨が何本か折れるだけだから。」

リーラが回復させるが、依然ゴードは煙に押し潰されたまま動けない。


「クソが!!!!」

(動けねぇ?!おっさんとはまた違う拘束方法。毒を治した瞬間に…肺に直接毒素を入れられる感覚?!?!)

「…リーラ!!!」

「はい!(ヤバい)」

「マナが尽きるまで回復頼む!!」

「口先だけの小僧だな!!散々煽って結果はこれだ!」

「うるせえ…」

(まじやべぇ…気を抜いたら意識が…飛ぶ)

「死ねや!!!!!!!」

エルドラが叫ぶと同時に煙の色も濃くなる。噴き出る煙も増え、勢いも増した。


「が?!」

意識が朦朧とし、全身の力が抜ける。視界が真っ暗になり、手足の感覚がなくなる。


「ゴードくん!!(回復が間に合わない…)」

「そろそろかな?」

「!(ヒーリェさん!!)」

ヒーリェは服の下に入れていたナイフを取り出し、右手に添える。


「何を?!(え????)」

「見ない方が良いかも。」

次の瞬間。ヒーリェは自身の右手を切断した。手が地面に落ち、血がダラダラと噴き出る。そして…


「グァァァァア?!?!?!」

「っはぁあ!!!!」

突如エルドラが声を上げてスキルを消した。切り落とされたエルドラの右手から解放されたゴードは大きく息を吸い、呼吸を荒げる。


「はぁあ!!!はあ!!!あっぶねぇ!!!!」

「ヒーリェさん!!!(手が…)」

リーラがヒーリェを見ると右手を再生させたヒーリェは再びゴードに質問した。


「今から私が回復。リーラちゃんが異常回復に集中する。まだ。戦えるかな?」

「はぁ!!はぁ!!ん"ん!!!」

呼吸を整えたゴードは立ち上がり、笑顔を見せて叫んだ。


「上等だ!!常時回復の近接最強!!こんなの…」



「無敵だろ!!」




次回「違和感」

王国を歩く一つの影。静まり返った路地裏で灰色のローブが微かに揺れた。






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