第二十話「試練 その2」
前回、[魔神の勇者]カイトから告げられた模擬戦。七人の推薦入学者は戦略を練っていた。
模擬戦
制限時間 一時間
推薦入学者の勝利条件
・勇者候補の確保
・30秒勇者候補を拘束する
・勇者候補の戦闘不能
勇者候補の勝利条件
・推薦入学者の戦闘不能
「行くぞヴァート!!」
「任せろゴード!!」
「さぁ…楽しんで来よう。」
凍える風がカイトの肌を撫でる。森から飛び出たゴードとヴァートは一目散にカイトに奇襲を仕掛けた。
第二十話「試練 その2」
「作戦通りな!!」
「オッケー!!」
「?!」
二人掛かりでカイトに突撃するゴードとヴァートは突如左右に分かれ、森の中に消える。凍える風が森を揺らし、カイトは二人を見失う。
「へぇ!!おいカイト!案外やるかも知れないぞ?」
「話しかけるな。気が散る」
カイトは目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませた。虫の呼吸音。森の生命。人間の温度。
「……そこか」
「こっちだよ!!!バーカ!!!!」
カイトが右に体重移動した瞬間。ゴードが左から現れる。完璧な奇襲。ゴードの繰り出す左脚の蹴りにカイトは防御出来ない。
「いや…こっちだ」
「?!」
否。カイトが見つけた人間の気配はゴードではなく、レーチだった。故に防御はしない。ゴードの蹴りが当たる寸前にカイトはトップスピードでレーチの居る森に走り出した。
「うぉお!!!はや?!」
「?!まじか!」
森に隠れるミールとヘルアすら通り過ぎ、真っ直ぐカイトは走る。
「あの方向は?!すまんミール!!追いつけるか!!」
レーチがやられるのはまずい!!)
「ミール!!…?」
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隠れるレーチ。しかし、カイトの目からは逃れられない。
「250……100…」
どんどん距離を縮めるカイト。しかし、思わぬ形で止められる事となる。
「……スウォール!!」
ドガンッ!!!!!!!
「?。……壁?」
「あなた早すぎ…」
(危なかった…アイスロードの上でも走り続けれる体幹…)
「なるほど。岩魔法の応用か。偉くマナが削れてる様だが?」
「……!!」
(感も良い……厄介……)
森の中、辺りに降り積もる雪が気温を下がらせる。
(時間を稼がないと…)
「身体能力強化のスキル?それとも、生き物の位置を把握するスキルかな?」
「不正解だ。それと、」
カイトは左拳を構え、氷の壁を力強く殴った。
「スキルや能力を好んで晒す者は居ない。時間稼ぎをしたいならそう言った発言は控えるべきだ。」
ドカンッ!!!!!!!
「?!」
アイスウォールが一発の拳に破壊された。
(試練の時と違う…いくら勇者候補でも、人間のはずでしょ…)
「氷の壁かと思ったが…なるほど。氷の板を何重にも重ねて生成し、壊れた側から造り上げる訳か。」
「あなた…どこまで…」
「マナが切れない限り、無限に続く壁。はぁ。とても残念だ。」
「何が?まだマナは切れてない!!」
「いや。いつもの俺なら挑戦した。」
「え?!」
「だが今回は……報酬が…とても美味いからな。」
カイトは横を向き、森を見る。アイスは咄嗟に魔法詠唱を始め、再びアイスウォールを生成する。
「逃がさない!!」
「……それは悪手だ。」
バンッ!!!!
激しい音と衝撃が風に変わり、森を駆け抜ける。
「な?!」
「強く早い攻撃を、力のある生き物はかわすか受ける。お前は後者だ。後ろの仲間を守るためには後者を選ばざるを得ない。勿論そうなれば力の制御も一方向に固まる。それが悪手だ。一流の守護神は。」
「全てを護る」
次の瞬間、カイトは姿を消した。パラパラと崩れる氷の壁には、半径10メートルほどの穴が空き、アイスは息を呑む。
「………。」
バンッ!!!!!!!
遅れてやって来た音と衝撃波がアイスの目を覚ました。
「ッ!!ぼーっとしちゃだめだ!!レーチが危ない!!」
アイスは振り向き、最短で走る。氷の風で自身を加速しながらレーチの元へと走った。
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「30」
最初にカイトが感じ取った気配。この模擬戦にて最初に戦闘不能にしなければならない人物をカイトはよく知っている。
戦力も、知恵も、体力もない。たった一つのスキルが勝敗を分ける事を。カイトは知っていた。故に…
「狙うのはお前からだ。」
「え?!(驚)」
「何奢って貰おうかな…」
岩の影に隠れていたリーラとレーチ。リーラは直ぐに身体を出し、レーチを隠す。
「レーチくん!(焦)逃げて!!(頼み)」
「え?」
「なるほど。妙な気配があると思ったが、二人いたのか。」
カイトはリーラの両腕を引っ張り、そのまま森の中に投げ捨てた。
「きゃぁ!!(驚)」
森に飛ばされたリーラは木にぶつかり、地面に倒れる。
「痛ぃ…(痛)」
「リーラちゃん?!」
「自身のスキルを最大限に生かしつつ、後列に隠れる。分かりやすい戦略だが一番理に叶った戦略でもある。」
「よくも!!」
レーチは立ち上がり、拳を握る。いつももなら逃げ回るレーチだが、仲間を傷付けた怒りが恐怖を打ち消していた。
「…感情に任せる行動は悪手だ。」
放たれた右腕をカイトは上半身を少し捻り、最低限の動きで避ける。
「?!」
「スキルや才能を持たない者は努力を求められる。お前のスキルはとても優秀だが、それはあくまでスキルだけ。」
「くっ?!」
「お前は努力をして来たか?」
レーチの右腕をカイトが掴み、右足でレーチの左足を蹴る。
「うわぁ?!」
体制を崩したレーチは背負い投げをされ、地面に叩きつけられた。
「痛ったぁ?!?!」
「!!レーチくん!!(心配)」
「逃げる選択を取らず反撃に出る。その発想はとても大事だ。しかし、相手との実力差と状況を判断し、逃げる選択を取ることも必要だ。」
「うぅっ…!」
「お前が後数秒逃げていれば、俺にも勝てたかも知れない。それ程のミスをお前は犯した。」
「………を!!!離せ!!!!!」
森からトップスピードで現れたのは、黒髪の少年。ヴァート。右手に携える模擬剣(刀身のない剣)を左腰に当て、勢い良く横に振る。
ブンッ!!!!
カイトは振り向く事なく、その場にしゃがむ。模擬剣は空気を裂き、ヴァートは勢いあまり、地面に転がる。
「んなっ?!?!」
「素晴らしい速度と剣筋だ。」
「ヴァートくん?!」
「ヴァートさん…!!(安堵)」
「いたた〜!!今の避ける?!」
起き上がったヴァートは姿勢を低くし、右足を前に踏み込む。
「次は当てる!!」
「受け身も取れてる。なるほど。ライトが褒める意味もなんとなく分かるな。」
カイトはレーチの顔を見て、不思議そうに質問した。
「あの少年ならこの状況を打破できると思うか?」
「…何を?!」
「早く答えろ。」
「ひぃ?!ヴァートくん!!!助けて〜〜〜!!」
「はぁ……」
「任せろ!!!」
叫ぶレーチをカイトは離した。身体を上げ、まっすぐヴァートを見る。
「試してやろう。」
「?!」
瞬間。ヴァートの身体を見えない何かが縛り上げる。
(何だ?!)
呼吸が上手くできない。身体は後ろに下がろうとするが、身体は動かない。あの時と…
(同じだ……)
旅に出た最初の。あの時と同じ感覚。
「どうした?来い。」
「……ぁ…」
(動け!!!動け!!!!)
震える事すら許されない脚にヴァートは命令した。ただひたすらに。動け。と。状況はあの時とほとんど変わらない。唯一変わるのは、護るべき対象がアイスからレーチとリーラに変わり、今回の敵には戦う意志があると言う事。
「………ぉおおお!!」
「…?来ないのか?」
(あと少しだ。この前も動けたんだ!!)
「おおおおおおおおお!!!!!」
「……。こっちから行くぞ?」
(まずい!!!くそっ!!!!)
カイトは地面に転がる石を拾い、ヴァートに目掛けて投げた
ブンッ!!!!!
「まずはこれを、どうする?」
投げられた石はほんの1秒程でヴァートの顔の目の前に来る。ヴァートは必死に身体を操り、ギリギリ避けた。
「おおおおおらぁぁぁ!!!!!」
当たらなかった石は後ろの木にぶつかり、木を切断した。
「うぇぇ〜〜〜〜?!?!?!」
「ヤバすぎ…(絶望)」
「…避けたか。"軽く"投げたとは言え、身体能力を上げるスキルを持たない者に避けられたのは今回が初だ。」
「はぁ!!!はぁ!!!そ、そりゃどうも!」
(今のが軽く?!嘘だろ?!?!)
「しかし…ヴァート…?」
「名前!!覚えてくれたんですね…?…なんですか…」
「一つ一つのモーションに、そこまで叫ぶ必要はない。体力の消耗が増えるだけだ。」
「そうですよね!!気を付けます!!」
(こっちの気も知らないで…)
息の荒いヴァートをカイトは不思議そうに見る。同時に、森の中からライトが現れた。
「おいカイト!!!!!!!!!」
「…何だ」
「…何だ。…じゃねぇーーーよ!!!当たれば今の即死だろ!!即死!!」
「あんなのじゃ人は死なない…」
「死ぬっつーの!!みんながみんな!お前みたいな身体してると思うなよ!!!」
文句を言うライトの言葉をカイトは受け流す。
「現に死んでないし、骨も折って…」
「魅力」
「な?!?!」
突然後ろから現れたミールがカイトの背中を触る。
「はい!私達の勝ち!!(*'▽'*)」
「ミール?!」
「ミールちゃん!!」
「凄い…(感動)」
目から光を失ったカイトは両腕をぶら下げ、その場で動かなくなる。
「何だ今の!!」
森の中から見ていたゴードも驚きながら現れた。
「お前のスキルって、互いの目を合わせて、触るのが発動条件だろ??目!合わせてないだろ?!」
「そだよ!(*^▽^*)ライトさんの試練でスキルが覚醒したの!!(*'▽'*)私!強くなったんだぁ〜(*●-●*)/」
「強くなりすぎだろ…」
「同感。」
再び森の中からヘルアとアイスが顔を出す。
「勝つためには必須。自分で言った事だが…改めて強いな…」
「……ミールちゃん…」
(スキルの練習…関係ないじゃん…)
「……ん〜〜〜…今のって僕。利用されたよね?」
ライトが汗を流しながら、ミールに問う。
「うん!( ´ ▽ ` )ライトさんが気を削いでくれなかったら無理だったよ〜(*⁰▿⁰*)」
「それにしてもナイス!!ミールちゃん!!」
「いやいやぁ〜それ程でもぉ〜<(//∇//)/::」
「……」
「僕達の勝ちですよね!!ライトさん!!」
「……嫌…多分…」
「?」
「…ねぇ?ヘルア?」
「どうした?レーチ?」
「勇者候補ってこんな簡単に…」
「この場合…カイトは…」
「負けるかな?」
「スキルを……」
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「……能力無効」
「?!」
「レーチ?!お前!!」
「え?!(驚)」
「あれ?( ・∇・)」
「今!!!」
「動いたぞ!!!!!」
カイトは間違いなく、ミールのスキル[魅力]を受けていた。しかし、
「…おい!!カイト?!賭けはもう無いからな?!」
対面した七人の推薦入学者。そのほとんどが、カイトの想像を超えていた。故に、好奇心がカイトを襲った。
「殺すなよ?!?!クソッ!!!みんな!!10秒耐えてくれ!!」
「え?!」
「勇者様を連れて来る!!!!」
カイトのスキル。
[データ]
視界に入れた相手の基礎知識を記憶する能力。
決して戦闘向けじゃ無いスキルだが、もう一つのスキルが、[データ]の能力を最大限に活かしていた。
スキル[再現]
他者の発動したスキルを見た場合、そのスキルを1時間使用できる能力。
使い方が分からなければスキルを使えても意味がない。それを埋める[データ]。スキルの発動を見なくても、他者を視界に入れるだけで、能力を使う事が出来、スキルの使用方法すら記憶出来る。
ライトはその場から消え、カイトは目を開け、ゆっくり振り向いた。
「楽しもうか」
凄まじい威圧が六人を襲う。
「「「「「「?!」」」」」」
「みんな?!」
唯一動けるヴァートは模擬剣を構える。
「クソッ!!まじか…」
「[魅力]」
「よ?!」
突如ヴァート目の前にカイトが現れる。目を閉じる時間差もなく、ヴァートは[魅力]に掛かった。
「ぁ…」
「?!」
(ヴァート?!?!?!あれは…ライトさんの[光速]だ…何で使えるの…)
(私のスキル?!)
「…崩壊!!」
ヘルアが叫び、自身の恐怖を打ち消した。
「はぁ!!!はぁ!!!くそ!!」
(みんなを動かさないと…)
「…ぐ………」
(クソクソクソ!!!何であの二人が動けて、俺が動けない!!)
(あっ…死んだ)
(怖い…)
ヘルアは右手をレーチへ、左手をミールに伸ばす。
「グッ!!ブレ…」
「[光速]」
「?!」
ヘルアは突然空中に吹き飛んだ。
「…?!?!おいおいおいおい!!!」
掴まれた左腕。ヘルア瞬時に最悪を考えた。
「まさか?!冗談だろ?!」
案の定カイトはヘルアを空中から地上に投げた。
「[光速]」
ヘルアを投げたカイトは再び消える。
「クソッ…」
ドガンッ!!!!!!!
地面は割れ、衝撃波が森を襲った。
「あと5」
[魔神の勇者]は呟いた。彼は今を全力で楽しんでいる。一見暴走しているかの様に見えるが、模擬戦は模擬戦であり、殺す様なことはしない様にしている。しかしそれは。
勇者候補の基準だった。
次回「勇者」
作戦とは?
ゴード
「今から俺のスーパー作戦を伝える!」
ヴァート
「スーパー作戦?!教えてくれ!!!!」
ゴード
「よし!!まず、俺とお前が勇者候補に突っ込む!」
ヴァート
「うんうん!」
ゴード
「衝突する手前に左右に分かれて、森の中に姿を隠す!」
ヴァート
「うんうん!!」
ゴード
「お前は出来るだけ木を揺らす!気になった勇者候補は身体を動かす!!」
ヴァート
「うんうん!!!」
ゴード
「そこで俺が奇襲をかける!!近接ボコボコクルシュドン!!!」
ヴァート
「うぉぉおお!!」
ゴード
「勇者候補!堪らなくダウン!!どうだ!!」
ヴァート
「最高だぜ!!」
ヘルア
「何言ってんだ?」
ミール
「分かんない(*'▽'*)」
アイス
「ヴァートが壊れてる…」
リーラ
「あはは…(動揺)」
レーチ
「あっ!ゲーム買って貰おう!」
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