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世代の勇者  作者: グミ
第一章 「王国」
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第十二話「王国」

前回気絶したヴァートの面倒を見ていたアイスは勇者候補補佐のシャルと知り合った。ジョークを言うシャルに振り回されるアイスは緊張と疲労で寝てしまう。


ヴァートとアイスを乗せた馬車は王国へと辿り着いた。

[アイス??ホープラス??何で泣いてるんだ?ここは?そうか…あの戦いで…俺は…]

「死んだのか」

▶︎黒髪の少年【ヴァート】


目が覚めると眩しい日光が白いカーテンを通過して目に入る。あまりの眩しさに目を細めながら見知らぬ天井を見上げた。


「夢か」

「いやまだ夢の中だ。」

突然聞き覚えのない声がし、ヴァートは首を曲げ横を見る。日光に照らされ風に靡く茶色の髪が彼女の美しさを際立たせる。椅子に座っている茶髪の女性は微笑みながらヴァートを見ていた。


「あなたは?」

「ふっ…いずれわかるさ。今はまだゆっくり休め。待ってる人がいるだろ?」

「…俺とあなたは初対面の筈だ。ここが夢の中なら何で…」

「夢と言うものは[記憶されたデータを混ぜたバグの世界]だ。現実で出会ってなくても知らない人と話したりもできる。」

「……俺はまだ目覚めてないんだな…。アイスと…ホープラスは?」

「……残念だが…」

「二人は大丈夫なのか!」

「……二人ともまだ…目を覚ましていな…」


バン!!!!

深刻な顔をして話す女性の後ろのドアが勢い良く開かれる。そして…


「おはようヴァート!!」

▶︎白髪の少女【アイス】

白色の髪をした女性[アイス]は元気良く挨拶した。目に映る光景にヴァートは困惑する。


「アイス?!!」

「あ!シャーちゃんもおはよー!!」

「おはようアイス。今日も元気で何よりだ。」

▶︎勇者候補補佐兼後方支援管理【シャル】


「アイス!大丈夫なのか?!」

「え?何が?」

「何が?って…」

咄嗟に[シャーちゃん]と呼ばれた女性に目をやると彼女は肩を震わせながら微笑んでいた。


「すまない。ジョークだ。」

「はい?!」

「何?何の話?」

笑いを堪えて居るシャルは椅子から立ち上がるとアイスに近づき話し始める。


「アイス?君の家族はとても素晴らしい反応をしてくれたぞ?」

「え?どんな反応ですか!」

「こほん!アイス…[……残念だが…]と言ってくれないか?」

「ちょ?!」

「?はい!残念だが!」

「もっと深刻そうに頼む。」

「ちょっと待って下さい!!」

「…残念だが」

「後少し深刻そうに。」

「そこ重要?!じゃなくて!!!」

ヴァートは慌ててベットから飛び出し、アイスと[シャーちゃん]の間に入る


「待って下さい!アイスも!」

「残念…だが?」

「良いって!!」

ヴァートはアイスを無理やりベットへと放り投げ、布団を上から覆い被せた。


「わぁ!」

「寝起きでそこまで元気とは。素晴らしいな。」

「そらどうも!シャー…さん?少しアイスと二人で話したいので空けてもらっても良いですかね?」

「男女二人で…か?」

「あなたもさっきまで男女二人だったじゃないですか?!」

「ふっ…ジョークだ。せっかく目覚めた事だし。私も鬼ではないからな。要望に応えるとしよう。」

「ありがとうございます」

「お礼は要らないさ。と言うか私がお礼をしたい。時間がある時で良いから私の部屋に来てくれ。場所はアイスが知っている。」

シャルは上機嫌に話しながら部屋から出ていった。


「あったかい…」

「アイス!!」

布団を剥ぎ取られたアイスは驚き上半身を起こす。ヴァートはアイスの肩を両手で掴み顔を近づけて叫んだ。


「状況説明!!!」


       ---------数分後---------


「って言う事!!」

「………」

アイスが自信満々に語った説明をヴァートは寝起きの頭で整理する。


「つまり、サード村での戦闘後俺が気絶」

「うん」

「勇者候補補佐のシャーさんが迎えに来る」

「シャルちゃんね?」

「シャルさんが来る。アイスが馬車で寝る」

「うん」

「目が覚めたらシャー…ルさんの寝室にいて、シャルさんと仲良くなって色んなお店を見て回る」

「楽しかった…」

「俺が起きたのは王国に着いて三日後の今…と?」

「そだよ!心配したんだからね??」

「待て待て!観光したんだろ?いやその前に!ホープラスは大丈夫なのか??」

「ホープラスはまだ目覚めてないよ?今も医療施設で治療して貰ってるんだ。命に別状はないけど勇者様が帰ってくるまで復帰は難しいって」

「そっか…」

今でもあの時の状況は鮮明に思い出せる。腹部に巻かれた包帯から流れる血液。後一歩遅ければ危なかったかもしれないし、ライトさんがホープラスの落下を助けて無ければ、ホープラスはもう居なかったかもしれない。


「………」

「ヴァート?」

「…しっかりしなきゃな…俺…ホープラスがもし死んでたら…」


パン!!


弱音を吐くヴァートにアイスは両手で頬を叩きそのまま頬を掴んで叫んだ。


「笑顔!!!!」

「うぇ?!」

「笑顔じゃないとホープラスも恵まれないよ!!今私達がしないといけないのはホープラスを待つ事と、元気に迎えてあげる事!!!」

ヴァートの頬から手を離したアイスは落ち着いた声で語り掛けた。


「仲間が元気だったら[大丈夫]って思うでしょ?」

「………!!」

ヴァートの瞳から自然と涙が溢れてきた。ゆっくりと伝う涙を流し、ヴァートは笑顔でアイスに叫んだ。


「…!!そうだな!!ありがとう!アイス!!」

(震える声…本当に心配してるから。大切だから。仲間だから。ヴァートの気持ちが痛いほど分かる。心配して。後悔して。それでも無茶して。我慢して。……やっぱり…ヴァートは…)

涙を流していることに気付いたヴェートは急いで振り向き涙を拭う。


(わたしは…ヴァートの事が…)

「そうだなぁ!こんなに早く王国に着いたんだし!俺も観光しようかな!!勇者学校の話もしないといけないし!」

(それでも…)

「私が案内してあげるよ」

(この気持ちを伝えたら…私はヴァートの家族じゃ無くなるのかな……)



(また…家族を失うのかな…)



数秒の沈黙の中、時間を示す時計の針がカチカチと音を鳴らす。この僅かな静寂の時間は扉のノック音によって打ち消された。


「ヴァートくんとアイスくんちょっと良いかい?」

扉越しに聞こえた声の主はサード村で助けてくれたライトだった。ヴァートは急いで涙を、アイスは頬をつねって暗い表情を必死に直した。


「……あれ?入って良いかな?」

恐る恐るライトが扉を開けると目が腫れているヴァートと頬の赤いアイスが元気よく同時に挨拶した。


「おはようございます!」「おはようございます!」

異質な光景にライトは無言で扉を閉めた。


         第十二話 「王国」


ギルドや商品街、貴族が住まう国。[再生の王国]

賑やかな街並みにライトの笑い声が響き渡った。


「あはははは!!!お前らw!めちゃくちゃいい奴らじゃねぇか!!」

▶︎勇者候補[光の勇者]【ライト】


街中を歩くヴァート、アイス、ライトは王宮に向かいながら賑やかに話していた。


「勇者学校推薦入学者なんだろ?!やっぱりそこらの奴とは違うなぁ!」

「ライトさん!声が大きいですって!」

「んぁ?良いんだよ!自慢してこう!!」

ヴァートが眠っていた宿から今に至るまでライトはヴァートとアイスの凄い所を大声で話し続けていた。


「そこでとんでもない爆発音がしてな!見に行ってみたらSランクの罪人と子供が対等に戦ってるじゃねぇか!!」

顔を真っ赤にして俯きながらヴァートは歩く

目を輝かせながらアイスは聞く


「ビビッ!!て来たね!あんなに根性ある子供は久々に見たからな!それにボロボロになっても帰って来たからよぉ!」

「そうですよ!ヴァートは凄いんですよ!!」

「うぅ」

「そう言うアイスくんだって!どう考えてもSランク以上だった罪人と戦ってたじゃねぇか!凄かったんだぜ?ヴァートくん!!」

「そうだったの?!」

「いやぁ…あれは話を聞いてたらライトさんが来ただけで…私は別に頑張ってないと言いますか…」

思い出すと今でも寒気がする。短剣のスキル武器【血力】と自身のスキル【採血】を発動した【レイ】の気迫と殺意にアイスは動けなかった。


「そう言えば!二人は家族だから一緒の理由も分かるんだが、ホープラスくんとはどうやって知り合ったんだ?結構長い事旅してたのか?」

「いえ!ホープラスとは一昨日知り合ったばかりですよ」

「一昨日じゃなくて五日前ね?」

「そうだった。まだ頭が覚めてないな」

五日前。その日はヴァートとアイスがファー村を旅出た日でもあり、ホープラスと初めてあった日でもある。


「もう五日も経ったのか…早いな」

「私はそこそこ起きてたから体感あるけどヴァートはほぼ寝てたからね〜。実質…二日目?」

「うるさいな…」

「?!って事はサード村襲撃事件の前日にホープラスくんとパーティー組んだって事か?!」

「正確には前日の夜ですね」

「そう思えばホープラスとはまだ半日程度の関係なのか…」

「はぁーーー!!半日パーティー組んだだけであんな心配し合う関係になるなんて…現役の勇者様より素質あるんじゃないのか??」

「本当ですか?!」

「ああ。この【再生の王国】には現在勇者はいないが各四つの王国。【アルファ】【ベータ】【ガンマ】【デルタ】にはそれぞれ王国を守る勇者パーティーが配置されている。王国【ベータ】と王国【デルタ】の勇者パーティーは互いに助け合ってるんだが…他のパーティーは…はぁ…考えるだけで頭が痛い。続きは勇者学校で聞くと良い。」

ライトが頭を抱えながら話し、ヴァートとアイスが聞いていると白石(はくせき)の地面が灰石(はいせき)の地面へと変わり、広い広場に出た。


「ヴァートくん。アイスくん。着いたぞ。ふぅ…」

ライトが急に立ち止まる。ヴァートとアイスは辺りを見渡すが特に目立ったものはない。


「?」

「ここ…?ただの広場じゃないんですか?」

「ただの広場と言われたらただの広場じゃないな。反応を見るに、シャルはアイスくんをここに案内しなかったみたいだな。」

広場の中心に歩き始めたライトはヴァートとアイスの方を向き、ニヤリと笑う。そして…


「ヴァート!アイス!まずは勇者学校推薦入学おめでとう!お前らとホープラスを加えて、今期の推薦入学者数は10人だ!!うち5名は既に勇者学校の特別寮に待機している。お前らの担当は俺を含め、四人の勇者候補が担当する事になる。そこで課題だ!まずは手始めに…強さを証明しろ!!」

ライトは右脚を大きく踏み込んだ。っと同時に空色の空が紫色へと変色する。


「試練」


ブンッ!!!


ヴァートとアイスは驚き声を上げようとしたが目の前からライトが消えた。広場にはさっきまでなかった黄色の球体が浮いてある。


「???!!!え?ライトさん?アイス?」

ヴァートが辺りを見渡すとライトもアイスも消えていた。半径30メートル程ある広場の外は見えなくなっており、直感で察した。


「……別世界…」

(強さの証明…試練…)

ヴァートは突然の出来事に混乱していたが次第に落ち着きを取り戻した。

「強さの証明って…どうすれば…」


ヴァン!!


「?!」

突如広場の中心に浮いていた黄色い球体が光り、次第に人の形へと姿を変えた。


「!!」

ヴァートは急いで左腰につけていた剣を抜く。否。本来ヴァートは剣を持ち歩いておらず、鞘が壊れているため、腰につけることすらできない。この剣はこの世界の物だろう。そして、感じたはずの無い気配と殺気はヴァートに死のイメージを植え付けた。


「魔王軍…!!」






次回「試練 その一」



ライトが語った勇者パーティーと四つの王国の詳細。


[再生の王国]←中央

:勇者パーティーなし

時々各王国の勇者パーティーが帰ってくる

シャルの配属場所


[王国アルファ]←北西

:勇者パーティーあり(一部仲が悪い)

直近の魔王城[第一魔王軍]


[王国ベータ]←北東

:勇者パーティーあり(仲が良い方)

ライトの配属場所

直近の魔王城[第2魔王軍]

ヒューラ、カイ、ブラッド、ムシャ、ジン、シャネス、レト、ソラ、ルーブ、アイ、ヒーチャ(短編小説に登場)の配属場所


[王国ガンマ]←南東

:勇者パーティーあり(一番仲が悪い)

直近の魔王城[第三魔王軍]


[王国デルタ]←南西

:勇者パーティーあり(一番仲が良い)

グレーと赤髪の男(短編小説に登場)の配属場所

直近の魔王城[第四魔王軍]

ビット、ブラッド(元)の配属場所





本編「世代の勇者」に今度登場するキャラクターの短編小説も出して居るので、もし良ければご覧下さい!

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