001 WOFへようこそ
稚拙ですが、何卒よろしくお願いします。
フルダイブ型ゲーム機が世に広まってから半世紀が過ぎた。
当初の熱狂が落ち着いてきた時に発売されたゲーム、『ワールド・オブ・ファンタジア』は各NPCが高性能なAIで今までのゲームでは得られなかった臨場感を体験できる、と言うのを売りにした最新のVRMMOだ。
開発に父親が関わっていたためか早期に入手できた[七星惟亜]はヘッドギアを手にしてもあまり乗り気ではなかった。
と、言うのも彼女は去年までの6年間は空手に情熱をかけてきた典型的な格闘好きなアウトドア派でありゲームには馴染みがなかったからだ。
だからワールド・オブ・ファンタジアが巷でどれだけ騒がれようと父親がどれだけ熱く語ろうと、割りとどうでもよかった。
ただ、そんなゲーム開発者の父を尊敬 (崇拝?) している幼馴染みの[辻堀 裕子]に
『あーちゃん!絶対やるべきだよ!
っていうか私も欲しいよ!
っつーか予約したけどね!!
届くのが待ち遠しいけどね!!!向こうで会おうね!!!!』
と鬼気迫る彼女を前にやらない…と言うことも出来ずこうして手にしてるわけだが。
(それにゆーちゃんには勉強の面で助けられたしなぁ)
惟亜とは対照的にインドア趣味な彼女には勉強の面で多大な協力のもと、晴れて高校の合格を勝ち取ることが出来て今は入学式を控えた身である。そんな親友の付き合いでゲームくらい、と思わなくもないが昨今のラノベにありがちな『デスゲーム』に正直ビビってたりする。対人は平気な彼女だが幽霊やホラー映画は苦手だったりするのだ。
(いやいや、あんなの漫画の話だし!実際にあったなんて聞かないし!)
よし!と場違いな気合いをいれるとギアを装着しベッドに横になった。
…
…
『WORLD of FANTASY へようこそ』
SFチックな背景から浮かび上がるタイトルロゴ。左右を見ると何処までも広がる地平、それを彩るエフェクトが幻想的だった。
「…すっご。これが仮想空間ってヤツ?キラキラ光ってて何処までも行けそうなんだけど」
初めて見る仮想空間に感動する彼女の前にウインドウが開いた。
「 OPC に… UPC ?なんのこっちゃ?」
何気なく文字をさわるとさらにウインドウが開き。
「お?説明文だ。なになに…」
『OPC (オリジナルプレイヤーキャラクター)
容姿、性別など、キャラクターの設定を初めから作る事ができます。
キャラクターごとのシナリオはありませんが縛りもありません。自由な冒険の旅をご堪能ください。』
「へぇー。男の人にもなれるんだ。で、もいっこは?」
『UPC (ユニークプレイヤーキャラクター)
名前や容姿の変更はできません。
専用のシナリオがあり、物語の途中でランダムにイベントクエストが発生する場合があります。
各種スキルは獲得済みのものがあります。』
「へぇー、こっちは色々決まってんだぁ。…ん??」
『また、オープニングイベントの最中ではセーブ、ログアウトは出来なくなりますのでご了承ください。
オープニングイベントのみ、死亡した場合は『やり直しは出来ません。』
死亡した際はOPC作成に移行します。』
「…ログアウト出来ない?え?漫画にあるデスゲームってヤツ?…まさかね?OPCになるって言ってるし…、パパが作ったゲームだもん。危なくなんか無いよね」
一瞬、本気でびびる 惟亜。
だが開発に関わった父親がそんな犯罪をすることは無いと思い直すとウインドウへ向いた。
選べるUPCは1人だけのようで、表示されたのは美しい貴族令嬢だった。
「わぁ…貴族のお姫様かぁ。
あれ?ママに似てるような…お?また説明文だ」
『OPCはプレイヤー様の容姿を元にデザインされます。』
「…ほうほう、この美人なお姫様のベースが私と。
…パパよくやった」
何故か得意気な惟亜は迷わずUPCを選択。…キャラクターを上手く作る自信がないのはナイショだった。
『UPC
キャラクター名
マリヴィア・クロムハイト
侯爵令嬢として育った彼女が赴くのは第2王子との婚約が発表されるパーティー会場だった』
「…
…
…
はぁぁぁぁ!?」
彼女の絶叫も虚しくゲームはオープニングを迎えるのだった。