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21,ポーションの常識。薬師ギルドとバトル勃発。

 

今まで色々と順調だったためにまさか躓くことがあるなんて思ってなかった。


「え、買い取り不可?」


だから薬師ギルドでポーションを買い取ってもらう気満々だったのにそれを拒否された時、強い戸惑いを覚えた。


「何故?」


「これはポーションではないからだよ君」


カウンターの上に置かれているのは私が作った『Aランクポーションと効果が全く同じの赤色の透き通った水。いちご味』。

きちんとこの世界の基準に倣って陶器の瓶に詰めてある。

色が赤いのは通販スキルの写真で確認済み。

担当してくれた彼は蓋を開け、中身を一瞥しただけで突っ返してきた。


「効果は間違いないはずだけど」


納得できず食い下がると、彼は見せつけるように盛大にため息を吐いてやれやれと頭に手をあて首を振った。


「君はポーションを見たことがないのかね?こんな粗悪品がポーションのはずがないだろう。良いかね?馬鹿でも分かるように説明して差し上げよう」


再度蓋を開けて中身がこちらに見えるように傾ける。


「君の持って来たこれはどうかね?水のように透き通っていてサラサラではないかね?」


「そうですね」


「ポーションとは液体の粘りがどろどろなほど、そして色が濃く濁っているほど高品質だと言われているのだよ。Dランクの最低品質でさえ多少の粘り気はある。君の持ち込んだこれはほんの僅かな粘り気すら無い、ポーションとはとても呼べない代物なのだよ」


えっ、そんなの知らないよ。

効果が高ければ良いんじゃないの?


「私が独自に改良した物。他と違うのは当然」


「ふぅー、やれやれ。いるんだよねぇ、おままごとのような調合をしてたまたま、偶然、奇跡的に、万が一の確率で、それっぽい物が作れただけで自分に薬師の才能があると勘違いして調子に乗ってしまうお馬鹿さん」


カチン。

効果を確かめもしていないのにこの言い草。

周りの職員もこちらを迷惑なクレーマーへ向けるような視線で見ている。


「効果があるのは確か。鑑定スキルなり何なりで確かめてもらって良い」


「役に立たないゴミに貴重な鑑定の魔道具を使うわけがないだろう?あれを1回使うだけでどれぐらいの魔石が必要になるか」


えー、鑑定も希少なの?

それじゃあここの人たちはポーションの効果を色の濃さと粘り度で判断してるってこと?

実際今までの作り方だとそれで正しかったんだろうけど。


「気は済んだかね?おままごとに付き合うほど我々は暇ではないのだよ、君と違ってね。しっしっ」


虫を追い払うように手を振られて怒りが頂点に達した。

しかしここで攻撃魔法で攻撃してしまうとこちらが悪者になってしまう。

なんとか息を吸って怒りを堪える。


「お前の顔覚えた。今後私は薬師ギルドの利益になるようなことをしない」


「ええ、どうぞどうぞ。こちらから願い下げだ、何を煮詰めたのかも不明な毒薬を取り扱うなんてね。なんなら女神様に誓っても良い」


「ふぅん、じゃあ契約魔法でも使う?」


「ぷっ、お次は契約ごっこか?まあ良い、ああ使ってもらおうじゃないか。契約魔法とやら。ほら使ってみろ!」


承諾を得たので【契約属性魔法】を行使する。


「『今後薬師ギルド関係者は私、大錬金術師リアムの作る物を利用しない。利用とは自分や他人に薬を使用するのはもちろん、それを使って利益を得ることも含まれる』。契約に同意するならば誓うと言え」


「ぷぷっ、大錬金術師?おとぎ話でも聞いたのかね?はいはい、いくらでも誓ってあげますよ」


相手が承諾した瞬間、私たちの間に光が集まりそれが私と彼の胸に吸い込まれていった。

突然のことに彼は驚き胸に手を当てた。


「な、何をしたのだ!?」


「【契約属性魔法】を使って契約しただけ、ちゃんと事前に確認した。今言ったことを破らなければ何の問題も無い。破ったペナルティは破った当人は3日間精神を病む幻覚に苛まれ、お前に対しては3日間の幻覚にプラスして3日間の嘔吐と腹下しのペナルティが課される。お前自身が破った場合は……まぁ、悲惨なことになる。お前だけじゃなく薬師ギルドの関係者の全てが対象で、誰かが破るとお前にもペナルティが課されるからちゃんと周知しておかないと大変なことになるから。場合によっては死ぬかもね」


「な……っ!?ほ、本当に契約魔法を使えるなんて聞いてないぞ!しかも薬師ギルドの誰かが破ると俺が被害を受けるだと?ふざけるな!!」


「私はきちんと確認したしちゃんと契約内容を話した。承諾したのはそっち」


押し問答をしていると、他の職員が寄って来た。


「まあまあ、契約を破らなければ問題ないわけでしょう?彼の作る物を利用しない、たったこれだけの話よ?ポーションにもなり得ない粗悪品を優秀な薬師ギルド職員の我々が間違っても利用なんてするわけないじゃない」


それを聞いて彼の顔色があからさまに良くなった。


「それもそうだ。やれやれ、少し取り乱していたようだ。おい君、例え君が契約魔法という希少な魔法を使える魔法使いだとしても、薬師としての腕は別だからね。ほんのちょっと魔法が得意だからって調子に乗らない方が良い」


何故だかどや顔する彼。

まぁ、良いか。

吠えるだけ吠えさせておこう。

ギルド職員まで巻き込むのはやりすぎ?私はそうは思わない。

3日間の幻覚ぐらいどうということはないだろう。


にやにやくすくすしている彼らの視線を背中に受けながらギルドを出た。


当面の目標が決まった。

大錬金術師リアム……名前はさっき考えたものだけど……の名前を売りに売り、ポーション業界でリアムの名を知らない者はいないぐらいに知らしめ、なのに薬師ギルドにはリアムの薬を扱わせず、私を怒らせたことを後悔させる。

手段は問わない……と言いたいところだけれど、最低限の礼節は守る必要がある。


エリクサー並の効果を発揮する薬を格安で配りまくればあっという間に名前は広まるだろう。

だけどそれだと今ポーションを作ったり販売している人たちがポーションが売れなくなり路頭に迷うことになる。

それに私が作る薬に頼りっきりになってしまうと現在のポーション製造技術が失われ、私が死んだ後に誰もポーションが作れなくなり下手をしたら人類が滅亡してしまう……かもしれない。

いや、それは無いか。回復魔法があるんだから。


ともかく、できるだけ真っ当に、誠実に奴らを見返す。

そのためにも……お金を稼がないとね。

振り出しに戻ってしまった……。

私は深くため息を吐いた。


………

……


ノアにチェンジした私は高く売れる魔物を求めて大陸中を飛び回った。

カイザーファイアードラゴン並みの大物を狙っていたのだけれど、ふと見つけたのは妙な感じの大規模な沼。

周囲に魔物がうようよいる。

空から見た感じだと最初はただの禍々しい沼だと思って見逃していたのだけれど、一瞬ぞくっとする気配を感じて注視してみた。

どす黒く染まってぼこぼこと泡が立っている地獄にありそうな沼からゆっくりと何か大きなものが浮かび上がってきている。

嫌な感じは大きくなっていき、怖くなった私は……遠距離からそれを沼の大地ごと収納した。

地面が大規模に渡ってクレーターのように抉れてしまったけれど、嫌な気配は消えた。

ふぅ、と息を吐いて地面を【土属性魔法】で元の地形に戻しておく。


あれは何だったんだろう。

【インベントリ】を確認してみる。

あの沼は『魔力溜まり(特大)』として収納されていた。

あの真っ黒な禍々しい沼が魔力溜まりだったのね。

それじゃあの出て来ようとしていたのは魔物だったのかな?

一緒に収納されたそれを見てみる。


『魔王種 リッチ』

……魔王種?って何だっけ。

スキル【ライブラリ】を駆使して魔物図鑑から魔王種について調べる。

ふむふむ……役職の魔王とは異なる存在で、カイザーやロードなどの魔物の称号の中では最上位に位置する。

魔王並みに強いことから魔王種と呼ばれるようになったが、実際には魔族を統べる魔王並みの力は無い。

しかしたった1体で国を滅亡させる程度の力は持っており、魔王種を見かけたらその国は滅ぶと言われている。


なるほどね。

……その魔王種の誕生に立ち会ってしまったのか。

ここはグランディアや私たちが住んでいる王都がある国、アルファリア王国だ。

もし私が偶然ここを通りがからなかったらこの国が滅んでたかもしれないんだね。

思わぬところで国を救ってしまった。


でも……売却機能で見てみると、思っていたよりも値段が高くない。

魔王種ってぐらいだから期待したんだけど……。

魔王図鑑でリッチを検索してみると、どうやらリッチの素材は骨と魔石だけ。

うん、骨の魔物だから仕方ないよね。

しかも『現段階では人々はリッチの骨の効能に気が付いておらず、廃棄されているため価値が低い』という説明つき。

この魔物図鑑には骨をどう加工したら効能を発揮できるかが書いてあるけど、確かにこんな面倒な加工作業思いつかないよね。

なのでこの売却機能の売値はほとんど魔石の値段ということになる。

まぁ、今はお金が欲しいし魔石は売ってしまおう。

【インベントリ】の解体機能で素材の状態にしてから魔石だけ売却する。

骨は……どこかで使う機会があると信じて【インベントリ】内にしまっておこうかな。


ついでなので沼の周辺にうようよいた魔物たちをサクッと収納してまとめて売却。

さすがに魔王種が生まれる魔力溜まりから出現した魔物だけあって結構な金額になった。

よーしよし、これで懐がちょっとあったまった。

けど最近お金遣いが激しくて何億程度ならすぐ溶けてしまうんだよね。

特にアルヴィンは高かったなぁ、後悔はしてないけど。


早速リアムの名前を売るための土台作りを……したいところだけれど、確か宿のオープンは明日。

軌道に乗ってみんなが業務に慣れるまではすぐにサポートできる場所で見守りたい。

まぁ、転移があるし何かあればアルヴィンからすぐ念話が届くからどこにいても大丈夫なんだけどね。

実際にその場にいるのといないのとではわけが違う。


空の散歩をしながらアルヴィンに連絡を取り、ネルソン薬店の彼の依頼はどうなったか尋ねる。

依頼された素材の採取を短時間でサクッと終わらせると、言った通りに素材が正しく採取されており尚且つとても質の良い物を持って来てくれたと深く感謝されて料金を支払ってもらい、是非ともまた手伝って欲しいと懇願されたそうだ。

私の許可を取っていないからまた手伝うかどうかはその場では返事をしなかったらしい。

時間が余ったので冒険者ギルドで登録だけしてきたそうだ。


宿の業務がメインなのでそっちは手を抜かず完璧にこなし、お兄ちゃんたちの遊び相手もして、冒険者ランクをコツコツ上げてまだ時間が余っていたら手伝ってあげて、と言ってみた。

ちょっと働かせすぎ?と思ったけれど、宿の業務も素材採取も1度やれば慣れたので次からはもっと時短できるのでそうたくさん働いているわけではないとアピールされた。

気の利く良い子だ。


シャノンに戻った私は実家へ帰宅して家族と共に晩ご飯を食べて団らんの時を過ごした。

 


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