6/6
〈五〉
ファイサの中心に位置する領主の館。その富と権力を誇示するかの如く豪奢に彩られた建物の最奥に位置するそこで、二人の男の姿があった。一人は、建物に負けず劣らずの装飾を施した衣を見に纏う初老の男。対する男は、長身痩躯、東洋風の出立ちをしている。
「何か分かったか、ムサシ」
この館の主が、口を開く。その声は年相応にしわがれてはいたが、はっきりと重々しく響く。
「昨日の襲撃犯のうち、生捕りにした者を、部下に締め上げさせていますが、これといった情報は持っていないようです」
「ふん、雑魚では話にならんか。もうよい、適当なところで楽にしてやれ」
「はっ、承知いたしました」
ムサシと呼ばれた男が恭しく頭を下げ、退出する。残された男は、盃を片手に、窓から眼下に広がるファイサの町並みを見下ろしている。
「忌々しい反逆者どもめ。必ず根絶やしにしてくれるわ」