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永遠の架け橋  作者: チャラン
第一章 アキヒトの章
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第八話 メッセージ

 会議が行われた日から、数週間が経った。


 その間、会議の出席者である6人は、ラストホープからの偵察ロボットに関することは、他の誰にも言わず、今までどおり、それぞれの生活を行っていた。アテナもそのことについては、それ以降何も言わなかった。


 そして、ある日のこと……


「ファー……退屈ダナア……」


 ザーフェルトは緊急会議の日以降、村の東のゲートにおいて、監視をアテナから任されていた。ラストホープからの使者が来るとすれば、ここになるからだ。


「一日中ココニ一人デイルノモ辛イモンダ」


 そう一人つぶやきながら、ゲートについている監視スコープを覗いていたが、遠くから見慣れない何かが徐々にこちらへ近づいてくるのに、スコープを通して気づいた。


「アレハ! アテナニ連絡シナイト!」


 ザーフェルトは急いでゲートのモニターを使ってアテナと連絡を取った。




 少し時間が経ち、遠くにいた何かがゲートの前までやってきた。それはコンパクトな車型のロボットで、大きさは成人一人くらいの幅と奥行き、高さがある。


「ココハ、アテナビレッジノ東ゲートデス。アナタハドコカラ来タ、ドナタデスカ?」


 ザーフェルトは警戒しながらゲートに付いているスピーカーを通して、そのロボットに話しかけた。


「ワタシハ、ラストホープカラ、イシュタルノメッセージヲワタスタメニキタ、M301ガタ6ゴウキデス」


 ロボットから、機械的な言葉で返答が返って来た。ザーフェルトはそれを聞き、対応を考えていたが、


「メッセージヲ受ケマショウ。デスガ、ゲートハ開ケラレマセン。何カ記憶媒体ヲ持ッテ来テイルノナラ、ゲート下部ニアル小窓ニ投函シテ下サイ」


 と、ロボットにメッセージを受ける旨と、ゲートを開けられないことを言った。ゲートの右下部には、ザーフェルトが言った通り、小さな投函窓が付いている。


「……リョウカイシマシタ。マイクロメモリーヲトウカンシマス」


 車型ロボットは収納式アームを伸ばし、マイクロメモリーを投函した。


「イジョウデス。キカンシマス」


 そう言うと、転回し、ロボットは来た道をまた帰っていった。




 イシュタルからのメッセージが入っている、マイクロメモリーを受け取ったザーフェルトは、東のゲートから離れ、コントロールタワーに車で戻ってきた。


「ヤハリ、アテナノ言ッタ通リデシタ」


 ザーフェルトはそう言うと、コントロールタワーでいつも通り、データ入力をしていたサラに、マイクロメモリーを渡した。そばにはセトもいる。


「端末に読み込ませて、アテナと確認してみましょう」


 サラはメモリーを差し込み、読み込ませた。すると、それが読み込まれると同時に、音声付きの動画がモニターに流れ始めた。


「久しぶりですね、アテナ。最後に連絡を取ったのは百年前でしたね」


 モニターにはイシュタルのイメージが、メッセージを話している姿が現れている。その姿は、アテナのイメージと同様、サラにどことなく似ていたが、やや冷淡そうな表情に見てとれた。


「ラストホープからの偵察隊が一機戻って来ませんでした。なんらかの事故があり、帰還できなかったのだと考えていますが、その偵察機から、あなた方が情報を入手している可能性も入れて話をします」


 サラ達三人は、モニターを食い入る様に見ている。


「まず、そこにいると思われる、サラのことですが、今になってとやかく言うつもりはありません。アテナビレッジで生活したいのなら好きにしなさい」


 意外にも、サラのことはイシュタルにとっては重要な問題ではなかったようだ。


「伝えたいことは、ラストホープの拡張計画についてです。これから五十年かけて、統御地域を広げていこうと考えています。私の理想とするユートピアはロボットが実効支配する機能的なものですが、それをより広い地域に行き渡らせます」


 アテナも沈黙して、メッセージと動画データを分析しながら聞いているようである。


「私とアテナの理想が全く違うことはよく知っています。しかし、あなた方と争うつもりは、私にはありません。あなた方の統御地域内まで、ラストホープを拡張する気もありません」


 冷淡なイシュタルのイメージは、少し表情を和らげたように見えた。


「つまり、あなた方が私に抵抗しなければ、特に何事もないのです。今まで通りのアテナビレッジ内での生活は保証されます。伝えたいことは以上です」


 メッセージはそこで終わった。


「ふむ。どうするかのアテナ?」


 セトが落ち着いた様子でアテナに相談した。アテナは少しの間、黙っていたが、


「彼女に従う旨のメッセージを送るのが最善でしょう。皆の反対意見がなければ、そうしようと思います。後日、会議を開いて話しあいましょう」


 メッセージの内容がほぼ予想通りだったかのように、淡々と答えた。

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