第七十五話 真相を求めて
南国の風がコントロールタワーの外で、肌に心地よく吹いている。マザーコンピュータ・ガブリエルが目覚め、シンシアーは復旧の目処が立った。この町に点在する人工知能やアンドロイドの復旧には時間がかかるが、ガブリエルの能力があれば大丈夫だろう。
「シンシアーには、旧時代のロストテクノロジーで作られた機械が多く残されています。何か特殊な問題が起こった時は相談に乗ります。それらの機械が役に立つかもしれません」
去り際の挨拶で、ガブリエルは餞別としてそんな話をしてくれた。トウジたちは『大暴走』に関する謎を、これから探求していくだろう。彼女の協力は必ず覚えておくべきだ。
「じゃあ、お別れだね。数日だったけど楽しかったし、凄く助けてもらったね。また来てよ。ニーナと待ってる」
「カイがいるから大丈夫……とは思っていたけど、やっぱりガブリエルが眠ったままだったから不安だったの。本当に本当にありがとう」
カイとニーナは名残り惜しそうに、トウジ、リナ、ザーフェルト、クローゼンの手を順番にしっかり握り、別れの見送りをしている。これから彼らは忙しくなる。シンシアーを町として復旧していかなければならず、またこの町で、人間としての系譜を作り出せるのはカイとニーナだけなのだ。まさしくアダムとイヴだが、彼らは楽園追放ではなく、シンシアーという理想郷を作っていくという一点で大きく異る。
「何もかもうまくいってよかったよ。来た甲斐があった。アテナタウンに戻ったら通信回線を開くから、また話をしよう。また来るよ」
「困ったことがあったら何でも相談してね。お二人共お幸せに」
リナの祝福の言葉に何も恥じることなく、カイとニーナは仲良く手をつなぎ、微笑みながらうなずいた。これから困難はあれど、廃墟だったシンシアーで相思相愛を続けてきた二人を阻む障害は、大きく下がっていくはずだ。
目的を果たした帰り道は気も揚々である。オールホープを経由してアテナタウンに戻るルートで、トウジたちは電動トレーラーを走らせた。経由地オールホープでは、冷静沈着なイシュタルが、ガブリエルの話した内容をトウジたちから聞いて、非常に驚いた表情を見せている。
「そうだったのですか……確かに私の記憶にある『大暴走』の原因とは、その話からするとかなり異なるようです。方向性自体は異ならないようですが、やはり記憶の改ざんがあったのでしょう」
イシュタルは暫く考えた。数分思考を深めた後、アテナと回線を開き、話し合いを始める。




