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永遠の架け橋  作者: チャラン
第一章 アキヒトの章
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第七話 緊急会議

 翌日の朝。


 コントロールタワーの会議室で、アテナビレッジの緊急会議が開かれた。修理するためサトルが持って帰っていた会議室の大型モニターは、朝一番にサトルとマリーが搬入、セッティングして、会議にすぐ使えるようにした。


 会議の出席者は、アキヒト、サラ、サトル、マリー、セト、ザーフェルトの6人である。昨日、データを取り込んだアテナが、それを分析したのち、最低限の人数で急いで会議を開くよう促し、今日の会議に至った。村民全員にまで不安が行き渡らないように配慮したのだろう。


「さて、ちょっと大事じゃが、どうするかのう」


 最年長のセトが、沈黙した重い集まりの空気を切って、口を開いた。やや間延びした言い方をした、セトの表情はいつもと変わらず落ち着いていた。それを見た皆は、少し表情を緩めることができた。


「俺が調べたロボットは一体だけで、何も武装していなかったんだ。でも、何体かの偵察ロボットが来ていて、データを持ち帰った可能性もあるな」


 アキヒトが昨日の調査を思い出しながら意見を言った。それを皮切りに、本格的な会議が始まった。


「ラストホープカラ偵察ニ来タ目的ハ、イッタイ何ナンデショウネ」


 ザーフェルトは腕組みをして考えている。それは皆も考えている疑問だった。


「友好的なものとは思えないわ。イシュタルの考え方とアテナの考え方は、同じマザーコンピューターであっても、隔たりがありすぎるし……」


 サラはそこまで言って言葉を切り、「考えたくはないけれど……」と続け、


「目的は私に関連することかも知れない」


 と、ハッキリ言った。


「ラストホープから逃げてきたサラさんを十五年経った今、追ってきたということかい? それもあるかも知れないけど、俺にはそれだけじゃないような気がするんだ」


 サトルも難しい顔をしながら話を聞いて、考えていたことを言った。隣に座っているマリーもサトルと同意見らしく、サトルが言ったことに頷いている。


「そうですね。サトルの言う通り、それだけではないようです」


 皆の意見を聞いていたアテナがスピーカーを通して、ここで初めて考えを述べ始めた。


「これを見て下さい」


 アテナはそう言うと、会議室にある大画面モニターに、ある画像と文章を映しだした。


「これは……、昨日見たマイクロメモリー内の画像ね」


 マリーが言った通り、昨日見た、二つのフォルダ内にあった画像の内、それぞれの一つずつがモニターに映しだされている。そして、それぞれの画像の下には短い文章が書かれていた。


「まず、モニターの右側の画像ですが、これはラストホープのゲート内の様子を撮したものと思われます。また、この画像フォルダの説明文と考えられるものもありました。それが、画像下に見えている文章です」


 アテナが説明した画像の下には、「ラストホープ内部画像」と書かれている。このことからも、このフォルダ内の画像はラストホープを撮したものという裏付けになる。


「問題は左の画像とその説明文です。この画像は昨日、皆さんが見たものですが、下の説明文をよく読んでみて下さい。」


 皆は、説明文に注目した。それは「ラストホープ拡張計画に基づく周辺地域の偵察画像」と書かれている。


 書かれた文の意味を理解した皆は押し黙った。考えたくない現実だった。




「ラストホープを統御する、マザーコンピューターイシュタルが、さらに、その統制地域を拡げようとしていることは、この一文からも見て取れます。彼女の性格的に見ても、遠くない時期にこういったことが行われるとは思っていましたが」


 アテナは自身の予測の範囲内であるかのように淡々と言葉を続けた。


「アテナよ。あんたはいつも冷静じゃが、このことに関しても、やけに冷静に話をするのう。何か対策があるから、そんなに冷静なんかの?」


 セトがアテナに訊いてみた。アテナとの付き合いはこの中ではセトが一番長いため、こういう時のアテナの考えがなんとなく分かるようである。


「対策としては、暫く今までどおり生活をして、待つことが対策になります」


 意外な言葉だった。


「何もしなくていいの?」


 マリーもアテナの言葉を聞いて不思議そうだった。


「ある理由で私はイシュタルをよく知っています。彼女の性格を考えると、九分九厘、近いうちに、アテナビレッジへ使者を送ってくるはずです。おそらく、彼女が考える拡張計画に関することを伝えてくると思いますが、それを待ちましょう。その先も私に考えがあります」


 アテナがそう言ったので、皆もそれ以上は何もなかった。


「ワカリマシタ。ソレデハ待ツコトニシマショウ」


 ひとまず緊急会議は終了した。

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