第六十五話 再会の微笑み
「おう、懐かしいの~。帰ってきたか、ザーフェルト」
「セト……。アキヒト達トハ会エナイノハ分カッテイマシタガ、アナタニハ会エル気ガシテイマシタ。変ワラズ元気ソウデスネ。懐カシイ」
セトと再会するのは、ザーフェルトにとって三百年ぶりである。トウジもカツトシも、この老翁のかくしゃくさを見たら、ザーフェルトはさぞかし驚くだろうと思っていたが、全くそんなことはなかった。それもそのはずである。アテナタウンの前身、アテナビレッジはいつ頃できたのか知るものは少ないが、ザーフェルトは村の黎明期近くから三百年前までここにおり、その当時、既にセトがお爺さんの姿でいたと話している。
(逆に驚かされちゃったな)
「ン? ドウシマシタ? トウジ? マアトモカク、アテナニ報告シマショウ。イヤー、何モカモ懐カシイ」
耐蝕性が高い、古い時代からあるコントロールタワー内の金属の壁を触りつつ、ザーフェルトは、昔あった色んな事を思い出しながら、ゆっくり歩いた。
マザーコンピュータであるアテナが、涙を流すということはない。それでも、三百年ぶりにその足で戻ってきたザーフェルトを見て、モニター上の慈愛に満ちた彼女の表情からは、そうした感情に近いものが読み取られた。姉機であるテレジアに会えたマリアにしてもそうだ。
「姉サン! 直ッタノネ……良カッタ。コウイウ時、私モ泣ケタライイノニ……」
「デモ私達ハ、笑エルジャナイ。マタ会エテ良カッタワ。笑イマショウ、マリア」
遠い年月を経てテレジアとマリアは、お互いの顔を見ながら微笑んでいる。姉妹のその再会は何よりも美しく、また、人の心を動かすものであった。様子を見守るカツトシの方が、感涙してしまっている。
それぞれの再会を経て、アテナへの報告は無事終わった。トウジはアテナから出された課題を一つクリアしたのだが、まだもう一つが残っている。どういう難題であろうと、彼はこなすつもりだ。しかしながら、不安からくる身構えも、今のトウジには見える。
「トウジ。あなたの誠意と能力はよく分かりました。次の課題ですが、これは課題というより、儀礼と言った方が適当かもしれません。オールホープへ行き、イシュタルと会って来て下さい」
「えっ!? それだけ?」
「そうですよ。ですが、あなたにとって非常に意義深い出会いになります。イシュタルは遺伝子的に言えば私と同様に、あなたの先祖に当たります。ご先祖様の言うことはよく聞いておくのですよ」
うっすらとだが、その話は聞いたことがあった。可愛くて仕方がない子孫であるトウジを、アテナは優しく躾けるように諭す。だがもう、好奇心の塊のような青少年は、心の舵を次の冒険に切っており、上の空だった。




