第五十八話 愛情からの怒りと叱り
アテナからの課題を家に持ち帰ったトウジは、早速、ザーフェレジアへ向かう準備をしようとしているが、息子の様子がどうもおかしいことに気づいたエマに案の定つかまり、今までトウジがこんな剣幕の母を見たことがないような凄い怒り方で、彼女は母として怒っている。
「いったい何をしているのかと思ったら……何を考えているの!! あなたは!!」
「ちょっと待ってよ母さん……詳しく説明させ……」
「駄目に決まってるでしょ!! 止めなさい!!」
父のカツトシはともかく、母のエマには相当な反対に遭うことは覚悟していたトウジだったが、普段とても温厚で優しいエマがここまで怒るとは想像していなかった。
(これは困ったな……一筋縄にはいかないぞ)
もうエマは一時間近く怒っているのだが、トウジが頑としてザーフェレジアに行くのを曲げないので、その怒りは収まることがない。ただ、怒りという表現はこの場合適当ではないだろう。息子を心配する母親の愛情から来る激しい叱りに近い。
叱られっぱなしのトウジはエマとダイニングテーブルの席で向き合っているが、どこかに助け舟が来ないかと縮こまって待っていると、仕事を終え帰宅した父、カツトシが入ってきた。
「ただいま……おいおい、そんなに怒ってどうしたんだ? 珍しいな?」
「怒りたくなくても怒るようになります。この子がザーフェレジアに行くなんてことを言うから……」
「ええっ!? どういうことだトウジ!? 父さんにも話してみなさい」
カツトシは父親の視点から、トウジの話を一通りは聞いてくれそうだ。ここで頑張って説得しないと何もかも台無しになると考えたトウジは、なるべく冷静に順を追って両親に詳しい経緯を説明し始めた。
「アテナも困ったことを許したもんだな……。確かにお前はフラフラしてるが、機械いじりのセンスはある。そこは俺も認めるよ。だがな……」
「複雑な構造のアンドロイドをあなた直せるの? それに、アテナタウンをあなたの齢で出るのは危険すぎるわ。アテナが許したのであっても、お母さんは絶対に行くことを許しません!」
「うーん。そこを何とか……うまくいったら早くアテナタウンに帰れるかもしれないし……」
息子が申し出たこの危険すぎる冒険に、カツトシも頭を振って止めるように促すのだが、息子のトウジの決意は固い。フラフラした息子だが、こうなったら頑固なのを両親も知っていてほとほと困り果てている。
その後も、エマは全面否定で止めるように促し続けたが、カツトシは折り合いをつけるようにある提案をトウジにした。




