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永遠の架け橋  作者: チャラン
第一章 アキヒトの章
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第五話 マイクロメモリー

 ゲートまで来たアキヒトは、アテナとコンタクトを取ろうと思い、ゲートの右側に付いている、アテナと会話ができるモニターと集音装置を使用できるようにした。


「どうしましたアキヒト? 設備の保守点検中に何かありましたか?」


 小型のモニターを使用するとアテナのイメージCGがそれに現れた。若い落ち着いた女性の姿をしている。その姿はどことなく若い頃のサラに似ていた。ただ、瞳は黒い。


「うん、ゲートの上にある岩場の方に何かおかしなものがあるみたいなんだ。それを確認しに行きたい。ゲートをちょっとだけ開けてくれないかい?」


 アキヒトの頼みを受けて、アテナは暫く考えていた。


「ゲートは開けられません。このゲートを出ると、私の支援が受けられなくなります。あなたに万一のことがあった時に、あなたを助けることが出来ません」


 アテナはやや厳しい口調で答えた。考えていた計算結果で、アキヒトの身に起こる危険がゼロではないと出たのだろう。


「どうしても気になるんだ。よくは分からないけど見えてるのは生き物じゃない。何かの機械のようなんだ。こんな所に機械があるなんておかしいだろう?」


 アキヒトはなんとか確認に行きたいと思い、アテナの許可を得られるように説得している。


「機械……その機械は今、動いているように見えますか?」

「いや、動いてはいないよ」


 アキヒトの返事を聞いてアテナはまた少し考えた。


「分かりました。ゲートを一時的に開放します。ザーフェルトもそちらに向かわせます。一時間以内に戻ってきて下さい。時間をオーバーしたら、ザーフェルトに捜索してもらい、あなたを連れて帰ってもらいます」


 アテナはやや心配そうな表情をモニター内で見せていたが、ゲートを開くことに決めた。


「ありがとう、それでいいよ。ゲートを開いて……」

「アキヒト!」


 怒った声で呼ばれ、アキヒトはびっくりして左を見た。そこには明らかに怒った表情をしたマリーがいた。


「あなたは一人でどんどん勝手に決めちゃうのが悪い癖よ! 岩場の上まで行って大怪我でもしたらどうしようもないじゃない!」


 と、弟を叱る姉のような口調で怒っている。


「ごめんよ。なるべく気をつけるからさ。アテナの許可も一応出たし、大丈夫だよ」


 マリーは怒った表情から非常に心配した顔に変わり、


「危ないと思ったら途中でも帰って来なさいよ……」


 と、小さな声でアキヒトの目を見ながら言った。


「ではゲートを開けます。十分気をつけて行くのですよ」


 ゲートの自動扉が左右にゆっくり開いていく……




 岩場の間にゲートが位置しているので、ゲートを出てすぐ後、アキヒトは左の岩場に登り、見えていた物を確認しようとし始めた。


 アテナビレッジのゲートを出る者はまずいないため、その岩場に登るための道もつけられてはいないが、アキヒトは偶然、登るのに適した道筋を発見し登り始めた。ただ、その道はいくらか岩場を回りこむように登らねばならない。


 それでも順調に登ることができ、十分ほどで、岩場の頂上まで登ることができた。


(よし……まだ時間はたっぷりあるな)


 アキヒトは頂上につくとまず時計を確認した。アテナに区切られた時間は一時間なので、それまでに調査を終えて帰らなければならない。


 時間の余裕を見て少しホッとしたアキヒトだったが、前方にある物をはっきり確認できるようになると、表情は驚きに変わった。


「これは……ロボット?」


 そこに動かなくなっていた機械は、小型のロボットで、可変性があるキャタピラと、格納ができそうな六本足を持っていた。軽量化するためか、機銃など、戦闘用の装備は何もついていなかった。


「完全に動かないみたいだな、大きく壊れている部分がある。イノシシか何かの動物にぶつかって壊れたのかもしれない」


 アキヒトはロボットの調査を行い始めた。このタイプのロボットはアテナビレッジでは見ることがない。ただ、アキヒトは何かの偵察タイプのものだろうと見て取り、ロボットの隅々まで隈なく調べてみた。


「これは? マイクロメモリーだな?」


 調査した結果、ロボットの胴体部分から、マイクロメモリーを発見した。暫くそれをアキヒトは観察していたが、その記憶媒体が無傷なのを確認すると小さくうなずき、調査を終えて岩場を降り始めた。




 アキヒトが再び東ゲートまで戻ると、マリーとザーフェルトが心配そうに待っていた。


「無事戻ったよ」


 アキヒトは、まず二人に帰還を知らせた。二人は胸をなでおろした。


「よかった……」

「心配シマシタヨ」


 ザーフェルトはアキヒトの無事を確認すると、ゲートのモニターでアテナとコンタクトを取り、開放していたゲートを閉じ始めた。


「それで、何があったか分かった?」


 マリーの問いにアキヒトはうなずき、


「ロボットだったよ、それもここでは見ることがないタイプだった」


 そう答え、マリーに先ほど拾得したマイクロメモリーを見せた。


「これがそのロボットに?」

「うん、アテナに見せたら何か分かるかも知れない。コントロールタワーに行ってみよう」


 アキヒトとマリーの二人は車に乗り込み、コントロールタワーに向かった。それを見たザーフェルトも、


「アレ、待ッテ下サイ!」


 自分が乗ってきた車に乗り込み、慌てて二人の後を追った。

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