第四十五話 懐かしい面々
明後日。アテナタウンのコントロールタワーで落ち合う、トウジとリナの姿が見える。町として規模が大きくなり、コントロールタワーはアテナタウンの中心部でもあるので、三百年前より周囲に建物が多くなり、人やアンドロイドの往来も賑やかになっていた。
「コントロールタワーに入るのも、なんか久しぶりだな」
「そうね。セト爺さんやマリアも元気かしら」
トウジとの会話でリナが言っているが、アンドロイドのマリアはともかく、セトは相変わらずかくしゃくと生きていて、メディカルセンターで働いているのだ。
タワーの中に入るとコントロールルームはそれなりに賑わっている。この三百年の間に拡張工事をしたので、コントロールルームやメディカルセンターなど、タワー内の施設も広くなっていた。
「アラ?久シブリデスネ。トウジ、リナ」
「やあ、マリア。けっこう忙しそうだね」
「久しぶりね。ほんと賑やかで忙しそう」
「フフフッ。ソウデスネ。焦ラズノンビリヤリマスケドネ」
マリアはルームにいてあれこれ訪問客の対応をしていたが、トウジとリナが入ってくるのを見つけて、彼らに声を掛けてきた。三百年前と変わらず愛らしい少女の容貌をしているが、三百年、アンドロイドとして齢を重ねた人格的な落ち着きも窺える。
「トコロデココニ来タ御用ハ何デショウ? 何カ悩ミゴトデスカ?」
「いやいや、そんな大したことじゃないんだ。大したことじゃないんだけど、ハチギ山に登りたくてね。アテナの許可が欲しいんだ」
「ハチギ山デスカ……。危険ナ場所モアリマスカラ場合ニヨッテハ、アテナノ許可ハ貰エナイカモシレマセンヨ?」
「そうかあ……。それも困るな……」
「トモカク、アテナニハ取リ次イデオキマスノデ順番ガ来タラ戻ッテキテ下サイ。ソノ間ニ、セトト会ッテキテハドウデスカ? アノオ爺サントモ久シブリデショウ」
「そうね。ふふふっ、セトって齢のことを聞いたら怒るのよね」
「ソコハ触レナイデアゲテクダサイ。私モ齢ノコトヲ聞カレルノハ嫌デスカラ」
「そうかそうか、ごめんね。マリア」
アテナと相談をするため順番待ちをしている人々がルーム内のロビーに座っている。マリアはアテナの所へ取次にいってくれたが、それなりに待ち時間がありそうだ。トウジとリナはタワー内のメディカルセンターに行き、セトと久しぶりに会うことにした。
メディカルセンターも人口が多くなったことで、体調を崩したり病気や怪我をしたりする人々が増えたため、治療待ちの人々がまずまずいる。その中に慣れた様子でメディカルカプセルを扱い、治療の補助をしているセトの姿が見えた。生身の体のはずなのだが、容貌は三百年前と変わらない老翁である。