第四十四話 遠縁の幼馴染
トウジとリナは幼馴染……というより、元をたどると薄く血がつながっている。リナはアキヒトとネイの子孫にあたるからだ。彼女はマリー・サトル総合工科学校を優秀な成績で卒業し、そのまますぐ教員になった。どちらかと言えば工学実技系分野より、国語や数学、理科などの座学が得意なので、その分野の教師としてここで働いている。
「今は手が空いてるけど、まだ学校の授業があるのよ? トウジ?」
「そう思って来たんだよ。まあちょっとこれを見てくれ」
こういったことは度々あるようで、リナはやや呆れ顔だ。ちなみにトウジもこの学校をなかなかの成績で既に卒業している。工学実技系に至ってはリナより優れた成績を残し、その分野は学年で常にトップだった。彼にも学校から、工学実技系教員にならないかと申し出があったがそれを断っており、仕事は家や近所の手伝い程度にしてフラフラのんびりしている。
「へえ~、レーダー? 今度はまともそうな物を作って来たじゃない?」
「まともそうなとはなんだよ。いつもまともな物を作ってるじゃないか」
「そうね、ごめん。そういえばそうかも。一万年タイマーが付いた漬物石なんかいいアイデアだったわ」
「へへっ、そうだろ」
どちらもいくらか天然ボケが入っているのか、リナが言っていることに少し皮肉が入っているのか分からないが、二人が話をすると方向がどっちに行くか分からなくなることは多いようだ。多少、トウジが持っているレーダーのような物に興味を持ったリナは、それについて尋ねてきた。
「で、それはどういう風に使う物なの?」
「そうそう、それを話しに来たんだ。これは超高性能な埋蔵物探知レーダーなんだ。微小な波動をこのレーダーから発し、地面なんかに埋まっている物の形状や素材から決まる波動関数のゆらぎを感知して、何が埋まっているか調査できるシロモノさ」
「それは普通に凄いもの作って来たわね……。かなり驚いたわ」
「へへっ、だろ?」
考えていた以上の物を持ってきたトウジに、リナは目を丸くして驚いている。トウジは頭をかきながら得意そうな顔だ。
「凄いのは分かったんだけど、何か調べたいものがあってこのレーダーを作ったの?」
「うん。そのことも話しに来たんだよ。ただ……そこに行くにはアテナの許可が要るんだ。学校の仕事が休みの日に、一緒にコントロールタワーへ来てくれないか?」
「そうね。面白そうだし、あなた一人だとまた無茶をやりそうだから私も行くわ。明後日が休みよ」
「相変わらず信用されてないな……。まあいいや、ありがとう。じゃあ、明後日な」
リナを誘うことはできたが、自分の信用のなさから奥歯に物が挟まったような感覚がトウジに残った。一応は伝えたかったことを伝えられたので、彼は家にのんびりと戻っている。それを見送った後のリナは職員室に戻り、次の授業の準備を忙しくしていた。