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永遠の架け橋  作者: チャラン
第一章 アキヒトの章
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第四話 保守点検

 サトルは休憩していて、一服ついていた。


「ああ、修理が済んだか。これで会議室もちゃんと使えるな」


 アキヒトとマリーは一服ついているサトルの所へ行き、話をし始めた。


「あのくらいどうってことないわよ。端末系やモニター系の修理は私、得意だし」

「ははっ、子供の頃から直せてたよな。大して仕組みも教えてないのに」


 サトル達三人は笑っている。


「ところで、俺はこいつの整備で今日は手が空かないんだ。アキヒト、今日はマリーと点検に周ってくれないか?」


 サトルは整備中の車を見ながらアキヒトに頼んだ。


「いいよ、マリー一緒に行くかい?」

「私は今日はもうやることがないし、一緒に行っていいわよ。行きましょ」


 アキヒトとマリーは今日、一緒に行動することになった。


「じゃあ、外の車の鍵を渡しておくよ、気をつけて乗るんだぞ」


 サトルは工場の外の脇に停めてある、車のキーをアキヒトに渡した。




 アキヒト達は工場から出て車に乗り込んだ。この車はアキヒトのバイクと同様、電気で動く。アテナビレッジでは電気が十分に供給されるため、乗り物においても電動で動くものが非常に多い。反対に化石燃料を精製する設備は無く、そういったものは貴重になる。


「じゃあ南の発電所から行こうか?」


 アキヒトは車のキーを回し、動力を起動させて、運転を始めた。サトルの工場は、村のやや南に位置するので、村の最南部にある発電設備の点検からやった方が効率が良くなる。村には、超小型核融合発電所が南と北の二箇所にあり、それぞれから地下を通るケーブルを通して電力が送られている。これらは、まだ各地に人間が多かった時代に作られたもので、それを村の人間やアンドロイドが、代々大切に使っている。


 南の発電所には近かったので、程なくついた。


「じゃあ、ひと通り見るわね」


 マリーは工具や何かの測定器を持って車から降り、発電設備の点検を始めた。ただ、マリーにも核融合発電所の全ての仕組みを理解して修理ができるわけではない。ブラックボックスになっている部分がかなりあり、その部分は村の誰もがいじることができない。アテナだけは仕組みを知っているが、それを村民に調整方法まで分かるように伝えるのは難しい。


 マリーは各施設に電力を送るのに必要な計器類と、発電機の分かる部分のチェックをテキパキと行った。特に異常はないようだった。


「次は通信塔に行こうか」


 発電所の近くにある、情報を中継する施設に行くため、アキヒトは再び車を動かした。




 村の各施設の保守点検がひと通り済んだ頃には昼も大分回っていた。


 アキヒト達は村の東にあるゲートまで来ていた。ここから出るとアテナビレッジを出ることになり、アテナからの支援も行き届かなくなる。


「ご飯が遅くなっちゃったわね、食べようか」


 アキヒトとマリーはゲートの脇にあるベンチに腰掛けて、遅めの昼食を取り始めた。ゲートの周りには、低木や草花が多くあり、のどかな風景が広がっている。


「俺と母さんは十五年前に、このゲートから入って来たんだよな」


 アキヒトは後ろにあるゲートを見ながらそう言った。ゲートの高さはアキヒトの背丈の二倍強はあり、それは岩場に挟まれた所に設置されている。


「……サラおばさんはあなたを抱いて必死で逃げて来たらしいわね。見つかった時はボロボロだったって父さんが言ってた」


 マリーは話してはいるが、このことを話すのが好きではなかった。アキヒトの辛さを考えると、こっちも辛くなるからだろう。


「逃げ出して来たラストホープって所は、ひどい所だったんだろうな」


 アキヒトはゲートの上をじっと見ていた。色々な心境が混じり合っているようである。


「この話はこれくらいにしましょ! ご飯も食べたし、工場に戻ろうか?」


 マリーは話を切って食事の跡を片付けようとしていたが、アキヒトが、


「? 岩場の上の方に何か見えるな」


 と、何かに気づいた様子を見て手を止めた。


「何があるの?」


 マリーも見てみたが、よく分からなかった。


「生き物じゃないな……何かの機械のように見える。あそこまで行けないかな……」


 アキヒトは、村から出てはっきり確認しようと思い、ゲートへ歩いて行った。

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