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永遠の架け橋  作者: チャラン
第一章 アキヒトの章
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第三十七話 クローゼンの目

 凄まじい殴打を頭部に受けた武装型アンドロイドの機能は完全に停止した。クローゼンの目は、もう次の標的をどれにするか狙いをつけている。彼の桁違いの強さに、武器を構えている村民達は恐慌を起こしてしまいそうだった。


「ゲートの内側に撤退してください! 急いで!」


 今のままでは戦況が圧倒的に不利と見たネイは、ゲートを出て戦っている村民全員に、村へ退くように指示を出した。彼女もクローゼンという危険な存在は前もって知っていたが、ここまでの脅威とは思っていなかった。必死な声の中に焦りが見える。


 破損しているながら、まだ機能を維持している武装型アンドロイド四機を見捨てることになるが、このままではディドとクローゼンの前に全滅するのは必至だ。なんとか全員を村側へ収容できたが、ディド達がどう攻めてくるか、ネイにも想像が難しい。


「あなた方には眠っておいてもらいましょう」


 衝撃波で弾き飛ばした武装型アンドロイドは、さほどの脅威ではないとディドは判断しているが、銃撃などによる攻撃能力はまだ残っている。煩わしいというくらいなのだろう。クラッシュの超能力で四機それぞれの機能を沈黙させた。そして、ディドとクローゼンは東ゲートへさらに近づいてきている。


「ディド様、ゲートヲコジ開ケマスカ?」


 東ゲートは例えアンドロイドでも力任せに開けることは不可能な造りになっているのだが、クローゼンの恐ろしい性能なら破られるだろう。


「許可します。ですが、村内にいる人間たちには殺さないように手加減しなさい。特に、アキヒト、タツキ、サラの三人は絶対に殺してはなりません」

「難シイ御命令デスネ」


 旧時代のアンドロイドながらザーフェルトと正反対の性質を持つ残虐性の高い彼は、背中に担ぐように装備していた大口径バズーカ砲を東ゲートへ向け、躊躇なく撃ってきた。砲撃を受けたゲートは轟音を上げ大ダメージを負ったが、まだ中破の状態で村を守っている。


 クローゼンは撃ち終わったバズーカ砲を投げ捨てると超高速の瞬発力を使い、壊れかけているゲートへ突進して行った。ぶちかましを受けたゲートが破られるのは時間の問題だ。


 強引な突破攻撃を受け続けた結果、頑丈な厚い合金で作られた東ゲートはとうとう破られた。そして、感情の見えない残虐的な目で侵入して来たクローゼンは辺りを見回そうとしていたが、村内にある能動型コンピュータが、備え付けていた迫撃砲群を彼に向け全弾発射した。


「ムダダ!」


 エネルギーシールドで何事もなく防いだクローゼンだったが、そこに油断が生じた。砲撃後の煙と砂塵が舞う中でタツキが近づき、大口径ハンドガンをクローゼンに向けて連続で撃ち放った。とっさに彼は右腕で受けたが、その結果、頑丈な彼の腕は使い物にならなくなっている。


「チィッ! オマエハタツキダナ! 知ッテイルゾ!」


 残った左腕でタツキの喉輪をつかみ簡単に上にあげると、クローゼンはタツキをそのまま投げ飛ばした。壁に叩きつけられたタツキは気を失ってしまった。


「クローゼン! 手加減をしなさいと言ったはずです!」

「十分手加減ハシテイマス」


 ディドに咎められ彼はやや不服そうだが、タツキから思わぬ攻撃を受けたためダラリと下がった使い物にならない機械の腕を、左腕を使って自ら引きちぎりその場へ投げ捨てた。


「私ノ戦力ハヤヤ落チタガ……」


 砂塵が落ち着き視界が戻った中で、クローゼンは辺りを見回している。そしてネイを発見し、標的としてロックオンした。


「ディド様、指揮官ノネイハバイオノイドデアテナノ分身デス。殺シテモ構イマセンカ?」


 ネイが倒されればほぼ終わりだ。ディドはクローゼンに許可を与えるか少し迷ったが、


「仕方ありません。許可しましょう」


 右腕を失った今の戦力では、手加減をしてネイと戦わせるのは難しいと判断し許可を出した。ディドにも同族のネイを排除するのに抵抗があるようだ。


「有難ウゴザイマス」


 そう言うと何も迷うことなく左腕の機銃を構え、ロックオンしたネイを激しく撃ち込んだ。即座にシールドを張りネイはそれを防ぎきったが、予測の内だったと見え、クローゼンはまたしても瞬発的に加速してネイとの距離を無くし彼女を左腕で殴り払った。


「くっ! ……」


 クローゼンの膂力は凄まじいが彼女は瞬間的に体を引いたため、致命傷を受けるのは免れた。しかし、払い飛ばされ地面に倒れているネイの意識はもはや朦朧としている。


「オマエニトドメヲ刺セバ終ワリダロウ。生マレテ間モナイダロウガ死ンデモラオウ」


 ネイは何とか起き上がろうとしているが体がいうことを聞かない。容赦がない左腕をクローゼンが振りかぶる。と、その時!


「ナ、何ダ!?」


 痛覚がないクローゼンだが背後を切り刻まれ、自分の機能に多大な損傷が起きたことを感じ取り、初めて慌てて後ろを向いた。そこにはブレスレットを着けた左腕をクローゼンに向け、見据えているアキヒトが立っている。

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