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永遠の架け橋  作者: チャラン
第一章 アキヒトの章
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第二十七話 救出作戦決行

 また少し日にちが経ち、いよいよタツキ達の救出に必要な準備がほぼ整った。そしてネイは村のみんなを集め、自分が救出作戦を導くために生まれたアテナの分身であることを、ほぼ同時期に伝えている。村民はそれを聞いて驚くと共に、非常に強力な味方が現れたことにより士気揚々となった。


 作戦会議が綿密に行われ全ての準備が終わり、決行の日が来た。


「とうとうこの日が来たのか……」

「緊張していますか? アキヒト?」


 流石に普段と目つきが違い、うっすら妙な汗も滲ませているアキヒトを案じ、ネイが彼の背中に優しく手を当ててさすっている。


「ありがとうネイ。いつも通りとはいかないけど大丈夫さ」


 ネイの優しさを受け次第に落ち着き、アキヒトは微笑みを彼女に返した。


「仲がおよろしいことですね~」


 少し離れた所から、マリーが面白くない無表情気味に冷やかしを入れながらやって来た。マリーはネイが誕生してから、アキヒトとの距離が広がったような気がしていて気に入らず、ずっと機嫌が悪い。


「マリーも気負いすぎていませんか? まあ……その様子だと大丈夫そうですね」

「ご心配なく~私はいつも通りですよ」


 こんな感じでネイと話しても、引っかかった物言いしかいつもしていない。


「……私と合わないのは分かりますが、今日の作戦の総指揮を行うのは私です。すみませんが今日だけは従ってもらいますよ」

「分かってるわよ。アキヒトのお父さんの命がかかっているんだからそれとこれとは別よ」


 多少まだ引っかかっているが、マリーも今日の決意はしている。それを確認したネイは小さくうなずき。救出作戦に参加するメンバーに最終伝達を始めた。




「今まで一緒に暮らしてきた村民の皆さん、そして、新しくアテナビレッジの村民として生まれたアンドロイドの皆さん、これからのことをよく聞いておいて下さい」


 ネイのいつにない真剣な声に参加メンバー全員の表情が一変に改まる。


「これからラストホープの人間居住区に乗り込み、そこで管理されている人々を救出し、村で保護します。これは、非常に危険を伴う作戦で、作戦遂行が困難となりラストホープの反撃が行われる状況になれば、死傷者が出る可能性は否めません」


 誰しもその覚悟はできているという、引き締まった顔つきをしている。


「最終確認をします。救出作戦を私の総指揮の下、実行します。皆さん本当によろしいですか?」

「おう!!」


 全メンバーの心づもりはしっかりできていた。ネイは美しく幼さも残る若い顔を引き締め、皆を見回しうなずいた。


「分かりました。これからラストホープへ向かいます。それぞれの電動クルーザーへ各自乗り込んで下さい。東ゲートを開放します」


 アキヒト、サラ、マリー、ネイ、マリアの他、武装した男性村民数名と、新たにラインで作り出された戦闘能力に優れたアンドロイド数機が、これも作戦のために生産された大型電動クルーザーに割り当て通り乗り込み、タツキ達を救出するためのエンジンを始動させた。




 メンバーの非常な緊張感とは対照的に、今日はうららかな晩春の暖かさである。車を走らせながら見える低木や草花が作る和やかな景色がスピードに従って流れるが、今日のアキヒト達にはそれを楽しむ余裕はなかった。


 救出メンバーはラストホープ人間居住区の手前、二百メートル弱の距離にある、林の近くにそれぞれの電動クルーザーを停めた。ここからは徒歩で目的地へ近づいていく。


 いよいよ作戦が始まる。




 ここに至るまでの綿密な作戦会議で、メンバー全員とも最直近となる人間居住区辺りの衛星写真をしっかり確認しており、また、アキヒトとマリーが偵察時に持ち帰った映像の重要部分も暗記するほど事前に見ている。


「皆さんそれぞれキーカードは持っていますね?」


 ネイが目的地に着くいくらか手前で、最も重要になるものをそれぞれに確認した。それは、人間居住区に通じる扉を開けるキーカードで、偵察で録った扉の画像を最詳細にアテナが解析し、暗号化を解き偽造したものだ。ただ、解いた暗号が偵察時から変わっている可能性もあるため、このカードが通用する保証は今のところない。


「私とサラで扉に近づき、キーカードが使用できるか試してみます。皆さんは扉の開放が成功した場合、後に続いて速やかに入って下さい。失敗した場合は私達を支援しながらアテナビレッジへ戻ってください」


 ネイの指示を受け全員に緊張が走る。ここが最初で最大の賭けになるだろう。


 メンバーを三十メートル程離れた低木群の中に待機させ、ネイとサラは慎重に慎重を重ね、居住区へ通じる扉を開けるため、徐々に近づいて行った。


 二人は十五メートル程の距離まで近づいた所で止まり、ネイがサラに扉の左右上方それぞれに一台ずつある監視カメラを指し示し、作戦開始を合図した。あれらの監視カメラは事前の画像確認でそれほどの性能は持っていないことは分かっている。そのため、十五メートル外の距離なら、監視センサーが作動しないことも予測できていた。ネイとサラは同時に目をつむり、非常な集中を行う。


「クラッシュ!」


 二人が同時に超能力を使うと、監視カメラから小さな破壊音が起き、センサー部分だけが機能しなくなった。これで、近づいても監視としての機能は働かなくなる。

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