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永遠の架け橋  作者: チャラン
第一章 アキヒトの章
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第二十三話 意味深長なパスワード

「物心ついた頃からここに来てるけど、全然気づかなかった……」

「村に来て十五年間まったく気づかなかったわ……」


 呆然としているアキヒトとサラをアテナは静かに見ている。


「気づかないと思います。この村でCPUラインの存在を知っていたのはセトだけですから。隠し扉はパスワードを私に伝えることにより開きます。あなた達にも教えておきましょう。」

「あっ! ちょ、ちょっと待って!」


 アキヒトが慌ててメモ用紙を探していると、マリアがゆっくりとペンとメモ用紙を差し出してくれた。


「あっ、ありがとう。いいよアテナ。言ってみてくれ」

「では言います。パスワードは『永遠の架け橋』です」


 しっかりとメモを取った後、アキヒトは、


「すごく意味深長なパスワードだな……」


 と、しばらくメモをじっと見ていた。


「おそらくこのラインは、これからの村の鍵になってくるでしょう。あなた達の子孫の時代になってもそうなるはずです。そういう意味を込めたパスワードにしました」

「アキヒトの子孫の時代……」


 サラは息子の顔とその先を見ようとするような目で、じっとアキヒトを見ている。


 アキヒトはサラに見られているのも気づかず、柄にもなく考え込んでいるようだ。


「ともかく、隠し扉を開けましょう。パスワードを言って下さい。音声認証します」

「永遠の架け橋」


 二人が同時にパスワードを伝えると、


「認証しました」


 隠し扉が薄緑色に発光し、少しずつ未知の空間を隔てる壁を開き始めた。




 開かれ出現した空間は、コントロールタワーの構造上、そう広くはない。八帖程の広さである。その空間の壁面に、小窓のような投入口のような開閉式スペースが付いていた。他には何も見当たらない。


「えっ? ラインって?」


 サトルの工場で見てきた重厚な構造物を想像していたので、アキヒトもサラもどういうことなのか理解ができない。


「壁の小窓の中にCPUラインはあります。この部分は完全に私の管理でブラックボックスにします。村の皆さんには申し訳ありませんが……」


 CPUライン室内にもある、スピーカーを通して、アテナの説明が聞こえてきている。


「なるほどね。この小窓からCPUの材料を投入したら、後はアテナが組み立ててくれるわけね」


 サラは説明に納得がいったようだ。アキヒトも大方納得がいったが、一つ疑問があった。


「その材料って、やっぱりフューエルタンクにしかないんだよね?」


 少し間があり、アテナが答え始めた。


「主要な材料は、ほとんどフューエルタンクからの輸送に頼ることになります。そのため、ラインの稼働にはまだまだ時間がかかりますね。さらに、フューエルタンクにどの材料が欲しいかを伝えるため、度々連絡を取る必要もあります」


 いつも通りの冷静な答えだったが、二人には腑に落ちない点がある。


「連絡を取るって……どうするの? 何か方法があるの?」


 そこをサラが訊くと、


「はい。ちょうど今、マリアに連絡を取ってもらっています」


 その答えにまた驚き、二人とも隠し扉を急いで開き、コントロールルームへ飛び出すように戻って行った。




 コントロールルームにアキヒト達が戻ると、既にマリアはモニターと端末を通して、フューエルタンクとの通信を取る作業を始めていた。忙しく、キーボードをタイプしている姿がある。


「マリアちゃんはザーフェルトと一味違うの。ザーフェルトにはこんなことはできんかった」


 傍で作業を見ているセトは、いたく感心した様子でマリアの様子を見ている。


「?」


 おっとりとした普段のマリアには似つかわしくなく、テキパキと作業をしているのは分かるが、アキヒトとサラには言葉の意図がよく理解できなかった。


「人工衛星を通してマリアちゃんの体で、フューエルタンクとデータの送受信ができるようじゃ。そこに差し込んであるマイクロメモリーは、マリアちゃんの体にあったものじゃよ。送受信ができるシステムが内蔵されていて、データの処理もお手の物なんじゃな」


 二人はセトの説明を聞いて少し考えていたが、


「あっ! そういえば!」


 二人ともほぼ同時に、テレジアが言っていた言葉を思い出した。「妹ハザーフェルトサントハ異ナルタイプノアンドロイドデス」というものだ。


「そうか、マリアちゃんは通信能力がすごいという意味でそう言ってたのか」


 二人が納得している間に、マリアは通信準備の作業を済ませたようで、


「マイクロメモリー内ノシステムデータノ同期ト、映像データノ転送ガ終ワリマシタ。マズモニターニ、映像データヲ映シマス」


 と、マウスをクリックし、ある映像を開いた。その映像には、やや懐かしい者が映っており、マリア以外の村に長く暮らしている三人は、思わず喜びの感嘆をあげた。

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