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永遠の架け橋  作者: チャラン
第一章 アキヒトの章
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第十八話 アマテラス

 マリーの手際にアキヒトはいつもの様に見とれていたが、2、30分ほど経つと故障個所の特定と修理が終わったようで、分解していた機材を、元の形に組み立て直し始めた。


「一か所ショートしていたみたいね。思ったより骨が折れなかったわ。これで直ったはずだけど……」


 マリーは機材の配線を入念に再チェックし、


「電源を入れてみるわよ。どうなるかは、賭けの部分があるわね」


 慎重に手を伸ばし、電源のスイッチをオン状態にした。




 コントロールタワー全体にまず通電し、電源近くにあった大型モニターが起動した。


(オペレーティングシステムを再構築しています……18%構築……)


 モニターにはそう表示されている。どうやら、このタワー内のマザーコンピューターのシステムを再起動しているようだ。


(100%構築……アマテラスを復旧しています……)


 この表示後、モニターに、ある女性のイメージが映し出された。アテナやイシュタル、それにサラによく似た女性だが、やや旧時代で、どことなく和風な姿をしている。その顔は、アテナと同じように慈愛が感じられるものだった。


「あなた方が私を復旧してくれたのですね。ありがとうございます。私はフューエルタンクを管理するマザーコンピューターアマテラスです。設備の老朽化と故障で、私の機能は七十一年間眠っていました」


 アマテラスはアキヒト達四人に礼を述べ、語り始めた。


「フューエルタンクはアンドロイドの集落で、旧時代、他に存在していた、各都市に鉱物、石油資源を供給していました。しかし、二百五十年前に起こった、あるマザーコンピューターから発生した大暴走という事件により、この集落も大ダメージを受け、機能を保持できなくなっていき、私も停止してしまいました」


 アマテラスのイメージはそこまで語り終えて、アキヒト達を改めて確認した。




「伺いたいのですが、あなた達はどこから来られました? 七十一年前に私の機能が停止する直前には、この集落には既に人間はいませんでした。あなたがたの内、三人は人間……、いや、その女性は……」


 アマテラスはサラの体をじっくり見ている。


「あなたは人間ですが、バイオノイドでもありますね」


 自分の出生を見抜かれたサラは特に驚くことはなかった。赤ん坊だったアキヒトを背負ってアテナビレッジに来た当時も、アテナに見抜かれていたからだ。


「マザーコンピューターには私の出生が特殊なのが、すぐ分かるのですか? 私たちはアテナビレッジという、ここからかなり南東に位置する村からやって来ました。そして、私を生み出したのはラストホープのマザーコンピューターイシュタルです」


 アマテラスにサラは、ここまでの経緯を詳しく話し始めた。アマテラスのイメージは静かにそれを聞いている。




 この地域は厚い雲に覆われていたが、アマテラスと会話している最中に、雲が少なくなり、うっすらと陽が差し込んできた。それと共に、外気もほの暖かくなってきているようである。貴重な晴れ間なのだろう。


「なるほど、事情はよく分かりました。ラストホープからあなたの伴侶を救い出すために、この集落の資源が必要なのですね」


 アマテラスは少しだけ考えた後、


「全面的に協力しましょう」


 と、静かな表情で答えた。


「本当ですか! ありがとうございます!」

「やったぜ! 来た甲斐があった!」


 一同は思い思いに笑顔を浮かべその言葉を喜んだ。アマテラスはその様子をしばらく見守った後、


「ただ、この集落はかなりのダメージを負ったままです。私だけで、できることはかなり限定的です」


 と、「ただし」の言葉を後付けした。




「私はこれからシステムダウンしたままの設備を復旧する作業にかかります。各設備のオペレーティングシステムを再構築し、通電状態にします。これには、私の機能の大半を動員しなければいけませんので、しばらくの間、あなた方とこのように会話ができなくなります」


 アマテラスがしようとしていることは十分理解できたが、アキヒト達はアマテラスと通信が取れなくなることにやや困惑した。


「どのくらいの間、通信が取れなくなるんです?」


 マリーがメモを取りながら、アマテラスに尋ねた。


「四、五日間はかかります。その間は、この集落において私の支援は受けられないと思ってください。ただ、電力の復旧は早く行えると思われるので、その電力を使って、あなた方に手伝って頂くことで、集落の復旧が大いに進むこともあるでしょう。おそらく作業開始から一日で、通電状態は回復します」


 マリーは手慣れた様子で、メモを取り続けている。


「通電状態が復旧した後で、各設備の調整や修理を私たちが手伝えばいいのね?」


 手短に話をまとめ、マリーはメモ帳を閉じた。彼女は電子的な物も好きだが、紙とペンといった、アナログな物も同様に好きなようだ。


「はい。では、これから作業に取り掛かります。後の質問は、あなた方の後ろにいるアンドロイド、テレジアにお願いします。彼女はこの集落についてすべてのことを把握しています」


 アマテラスがそう言うと大画面モニターはスリープ状態になった。そして、アキヒト達が後ろを振り返ると、そこには、端正な顔立ちの女性型アンドロイドが立っていた。

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