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永遠の架け橋  作者: チャラン
第一章 アキヒトの章
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第十七話 探索開始

 空には厚い雲がたちこめたままだったが、その後の旅は順調に続いた。道を北に進むにつれ、車内から見える景色も寒冷地特有のものに徐々になっていき、低木も消えてきて、小さな草と固い地面が現れるようになっていった。


「何か見えてきたわ!」


 円筒系の貯蔵庫らしきものがサラの目に入り、何もなかった長い道と明らかに異なるその存在の発見に思わず声をあげた。


 さらに近づくにつれ、設備や建物らしきものの数が増えてきた。どうやらフューエルタンクに到着できたようだ。


「着けたな。だけど、コントロールタワーらしい建物がまだ見えないな」


 車を減速させ、周囲をよく見まわしているが、それらしい建物はアキヒト達にはまだ確認できていない。


「適当ナ所ニ車ヲ停メテ、コントロールタワーヲ探シテミマスカ」


 車をフューエルタンク集落内の中央部と思われるコンテナ付き大型電動クルーザーが十台は停められそうな広場に停め、探索を始めることにした。




「単独行動は危険だから、携帯で確認を取りながら、二人一組で分かれて探索しましょう」


 マリーの提案に他の三人も賛成した。


「じゃあ、俺と母さんは集落の東半分を探してくるよ。いいかい?」

「そうね、私とザーフェルトは西半分を見てくるわ。携帯の時計で二時間半経ったら一旦ここに戻って来ましょう。それまでにコントロールタワーが見つかったら、連絡を取って、ここで落ち合いましょう」


 アキヒト達四人はそう決めて、東と西、二手に分かれ、集落内の探索を開始した。東には、奥の方に標高がある山が見え、西には平地が広がっている。どちらを行くにしても、旧時代に敷設された道があり、移動はそれほど困難にはならないと思われる。




 空に暗雲が立ち込めているのもあり、探索している集落内の様相は暗い。長い間、様々な設備が稼働しておらず、廃墟化が進んでいるのもそれを増している。


 アキヒトとサラは東側の山に近づきながら探索を続けていたが、集落内の建物の間隔が、山に近づくにつれ広がっていくだけで、まだコントロールタワーを発見できていない。


「こっちは外れかもしれないわね……」


 発見の望み薄な感覚を二人はそれぞれ覚えたが、一応は隈なく探索を続けることにした。


 山へ近づくにつれ、その山が鉱山であるということが、麓にある施設からはっきり分かることができた。遠目にも、採掘用の機械と思われる様々な物が見えている。


 さらに鉱山へ近づくにつれ、建物の間隔もさらに広がったが、


「母さん! あれは……」


 アキヒトが何かに気付いた。


 それは、アテナビレッジにあるコントロールタワーとよく似た建物で、高さはそれよりはやや低い。ただ、通信アンテナなどの設備はついており、これがフューエルタンクのコントロールタワーだろうと考えられた。


「よし、調べてみるよ」


 と、言ったアキヒトをサラは、


「待ちなさい! アキヒト!」


 普段に似合わない厳しい声で止め、


「あなただけで調べるのは危険すぎるでしょ? マリー達と携帯で示し合わせて、戻って落ち合いましょう」


 息子をたしなめてから、マリーとザーフェルトに携帯で連絡を取り始めた。


 軽率な癖が久しぶりに出たアキヒトは、ばつが悪そうに転がっている小石を蹴っている。




 電動クルーザーを停めている広場で全員合流した後、改めて東のコントロールタワーと見られる建物の調査に入った。


 やはり、最初にドアをこじ開ける役目を担ったのは、頑丈なザーフェルトだ。腕力を使い、扉を開くことに成功した。


「危険ハ無イヨウデスガ……、オヤ?」


 ザーフェルトがあたりを見回すと、ここまでの道中に寄った通信施設にいた、少女型アンドロイドとよく似た型の機体が、静かに座っているのを見つけたようだった。


「あの施設にいた子と似てるけど、この機体の方が大人びた顔をしてるわね」


 サラがしゃがんでアンドロイドの様子をしっかり観察している。端正な顔立ちをしているのは、通信施設のアンドロイドと同様だが、こちらは少しだけ面長で、確かに大人びた美しさがある。


 マリーとアキヒトは一方で、コントロールタワー内部の詳しい調査を始めていた。アテナビレッジでもそうだが、集落内の電力を管理するシステムがここにあるはずと考えたので、まずそれを探しているようだ。


 外観から見て取れた通り、この建物の階層は高くなく、一階と二階しかない。ただ、広さがある総二階の構造で、一階の調査だけでも時間がかかりそうである。


「なかなか見つからないわね……。絶対あるはずだけど……」


 マリーは広い部屋にある様々な機材を一つ一つ調べている。アキヒトにも、電源管理を行う機材の特徴は伝えてあるので、それが見つかればマリーを呼ぶはずだ。


「これだわ! みんな来て!」


 しばらく調査を続け、ようやく電源管理機材をマリーが見つけた。アテナビレッジで使っているものと、ほぼ同型である。集落の心臓部とも言えるが、機能は完全に停止している。


「こいつが動けば万事オッケーなんだろうけど、直りそう?」


 しげしげとアキヒトが機材を見ているが、彼にはこれがどういう仕組みで、どう壊れているか、見当はつかない。


「パッと見て、厄介な壊れ方はしてなさそうだけど、少しバラしてみるわね」


 工具をその場に手際よく広げ、マリーは機材の分解を始め、故障個所の分析と修理に入った。

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