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永遠の架け橋  作者: チャラン
第一章 アキヒトの章
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第十四話 衛星写真

 その後、暫くの間、アテナビレッジ内ではいつも通りの生活が続いた。アキヒトは山や川でイノシシや魚などの糧を追い、サラはコントロールタワーで仕事を続け、マリーもサトルの工場を中心に、村内の機械に関する整備を行っていた。それぞれの胸の内につっかえているものは共通していたが、アテナの考えに任せ、ともかく生活を続けながら待っていた。


 そうした日が続いていたある日のこと。


 サラはアキヒトと途中で別れ、いつも通り朝からコントロールルームに来ていたが、数枚の写真が端末周辺にある、複合薄型プリンターから印刷されているのに気づいた。


(これは何かしら……)


 昨日も同じようにここに来ていたサラだったが、この写真を印刷した覚えは無いようである。確認しようと見ていると、アテナが声をかけてきた。


「おはようございます、サラ。早速ですが、この写真について説明しましょう。これらは私が、今現在の地球で使用できる人工衛星とコンタクトを取り、できる限りの解像度で撮影した衛星写真です」


 そう言われてサラは改めてまじまじとそれを見た。確かに広域を写した衛星写真に見える。アテナの努力もあり、かなり鮮明に写されてもいる。


「今、サラが見ている写真は、この村から北西に向かえる道のりを写したものです。写真に私がマーキングをつけているんですが、その部分が車で通れる道になります」


 写真には確かに赤いマーキングの線が引かれてある。それはアテナビレッジから北西にかなり伸びていて、ある地点で止まっていた。その地点には町か村のような形跡が見え、サラはややそれに驚いている。


「これは村落か何か?」


 サラが写真のその部分を指して訊くと、アテナは間をおいて答え始めた。


「はい。かなり昔は人間が住んでいた村でしたが、おそらく現在、生活している人間はそこにいないでしょう。その村落跡はフューエルタンクと昔呼ばれた所で、様々な化石燃料が豊富に採掘されていました」


 アテナは話を続けた。


「また、鉱物資源も大量にある場所です。ただ、採掘設備が稼働していたのは推定で七十年程前までで、今は全く動いていないようです」


 サラに、生みの親であるイシュタルからインプットされている情報には、全くそんな村に関することはなく、非常に興味深くアテナの説明に耳を傾けている。


「続けましょう。二枚目を見てください」


 サラは一枚めくり、二枚目を見始めた。




 二枚目の写真は衛星写真の解像度を最大まで使い、撮影したもので、フューエルタンクにある、おおよその建物の形まで確認することが、それを見ることによりできる。


「村内の拡大写真になります。いくつか建物が確認できると思いますが、村の中心部分として存在する一番大きな建物が、村のコントロールタワーです。すなわち、私のようなマザーコンピュータが、かつては機能し、様々な管理を行っていたのです」


 サラはアテナが話した言葉の一つに疑問を感じた。


「かつて?」


 一瞬、沈黙が両者の間に走ったが、アテナは答え始めた。


「推定で七十年前までは、フューエルタンクの採掘設備が稼働していたと言いましたが、村内のマザーコンピュータは、何かの原因のために、採掘設備が完全に稼働を停止する以前に、機能しなくなっていたようです」


 サラはそれを聞いて、納得した。


「管理が行えなくなった後も、暫くはフューエルタンク内の活動は行えていたけど、限界が来てしまったということね」


 アテナは「その通りです」と答え、話を続けた。


「なぜこのような話をしているかというと、タツキ達の救出計画と関連しているからです」


 思いがけない関連付けに、サラは驚いて、モニターに映っているアテナのイメージを見た。


「タツキを助けられる何かがそこにあるの!?」


 夫の救出の話がにわかに出たので、サラはやや落ち着きを無くしている。アテナはそれを見て、落ち着かせるような口調で答え始めた。


「あるとも言えます。正確には、フューエルタンクにある鉱物資源や化石燃料が必要になるのです。それらをアテナビレッジまで運び、輸送機器や新しいアンドロイドを作る必要があります」


 サラには、アテナが言っている話が見えてこなかった。


「よくわからないわ。どういうことなの?」


 アテナは説明を端的に続けた。


「今の村内にある車や、それを動かせる人やアンドロイドは、タツキ達をラストホープから救出するのには少なすぎますよね? そのために必要なんです」


 サラはピンと来た顔をして、


「あっ! そのために……」


 と、つぶやいた。


「分かって頂けましたか。このことは、村民全体で話し合いましょう。皆の意見や考えをまとめないといけません」

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