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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
最終輪「何色にも輝く未来へ!」
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星の間④〜ロメロとイカコ〜

「美しい眺めだ」

「ああ、そうだな」

 通称『星の間』でロメロとイカコは立ち並び、星々が輝く宇宙を見つめていた。

「だが、ここは安住の地ではなかった」

 民を人質に取られたイカコにとって〝(アク)(ハナ)〟の黒い巨大戦艦は、悪事を働かせられる象徴だった。

 ではなぜ現在、忌避していた元アジトにいるのかというと、私物の処理のためだ。イカコとタガルニナはユーリィのように強引に連れ去られたのではなく、特虹戦隊(とっこうせんたい)との戦いで敗れた後、一度ロメロ達と共にアジトへ来て、必要最低限の物を持ち出していた。今日は残した荷物の処理をしに訪れていたのだ。

「週一で貴様等が押しかけてくるのが、今思うと救いだったがな」

 イカコは皮肉げな笑みを浮かべる。

 最初はなんの冗談かと我が目を疑った。正義の味方が悪の秘密結社のアジトに堂々と乗り込んでくるなんて。非番だからと通すザッソー兵役の青年どももゆるすぎる。

 しかし、あれがあったからこそ必要以上に罪悪感に苛まれなかったのだと、もう気付いている。

「発案はロメロ、貴様だと聞いたが」

 隣に立つ十センチメートルほど背の高いロメロをイカコは見上げる。

「まあな。殿下達が脅されているのは分かっていたからな」

 ロメロは宇宙を見たまま答えた。

 それ以上は語らない。恩着せがましい言動は(おろ)か気遣いも悟らせないのは、出会った当初から変わらない。

「もう『殿下』じゃない。地位も居場所もない、ただのイカコだ」

 少し膨れっ面をして、イカコも宇宙に向き直った。

 イカコに下された刑罰は、『地球からの永久追放』と、故郷の『惑星王の王位継承権の剥奪』だった。セイカを魔法陣で召喚した実行役として、ソフィーよりも厳しめだ。

 ゆえに、本名から『イカコ・クー・クー』の『次代の惑星王』・『王太子』を表す真ん中の『クー』と、『王子』を表す最後の『クー』が取り去られ、今後はファーストネームの『イカコ』しか名乗れない。

 脅されていたとはいえ悪事を働いたのだから、イカコはその処罰を受け入れた。納得しなかったのはむしろ故郷の者達だ。民を鎮めるのには父王も相当苦労したらしく、愚痴を散々聞かされたとジイが嘆いていた。

「ただのイカコか。これからは何でもできるな。自由の身になった感想は?」

「……正直、なにをしていいのか分からぬ」

 幼少より帝王学だの公務だの、忙しくしていたイカコだ。昔は自由のある生活に憧れた。けれど、いざなんでも自由にできる身になってみると、どうしたらいいのか分からないのが現状だ。

 このひろい宇宙で、迷子でいる心持ちだった。

「じゃあ、こういうのはどうだ? 賞金稼ぎ(バウンティハンター)になって、オレとバディを組む」

 ロメロは(ようや)くイカコの方に顔を向けた。

 イカコは驚いて、ロメロを見上げる。と、自分を見る目が優しくて、心臓がドキリと跳ねた。

「この私が……賞金稼ぎを? 貴様と?」

「そうだ。宇宙を股に掛ける、賞金稼ぎだ。最初はオレが手取り足取り教えてやる」

 ガンベルトに両手の親指を掛け、肩幅に足を開いて立つロメロは頼もしく言った。

 なんだか『手取り足取り』に別の意味も含まれていると思えてしまって、イカコはカアッと赤面する。

「最終目標は、宇宙一最強のバディだ。──どうだ? オレと宇宙中を飛び回ってみないか? いろんな世界を見せてやるぜ?」

 今度はロメロから流し目を向けられた。

 至近距離で〝ハートブレイカー〟のカリスマが直撃し、未だに慣れないイカコはくらっとした。予想外の誘いも受けて、なにがなにやら解らない。

「き、き……」

「うん?」

「貴様はっ、任務で私を口説いていたのではないのかっ!」

 (たま)らずイカコは叫んだ。

 どの大幹部が文句を言おうともアジトに通い詰めていたロメロ達の目的は、それぞれのターゲットが時期が来たら特虹戦隊に来やすいように交流を図っていたと明かされている。その時、ロメロが天の邪鬼ですぐに喚く自分に辛抱強く付き合ってくれていたのは仕事だったからか、とイカコはがっかりしたものだ。

「寂しいことを言うな、殿下……いや、イカコ。オレは元々軍人じゃない。気のない相手に構う任務なんか受けやしないぜ」

 ロメロは力強い口調と、また流し目で攻めてくる。

 イカコの動悸が激しくなった。

「ほ、本当か」

「本当だ。でなきゃバディにも誘わないな」

 間髪を容れずロメロは肯定する。

 普段の言動は軟派だが、今この時、紺碧色の瞳は真摯だ。

「で? イカコ、返事は?」

 ここで答えるのか、もう将来を決めてしまうのか、と戸惑ったイカコだったが、そうしたい気持ちはもう爆発寸前だった。

「わ、分かった! なってやる!」

「……何に?」

「き、貴様のバディだ! でなければ賞金稼ぎなどなってやらん!」

 叫びつつ、なんで自分はこういう言い方しかできないのかとイカコは自己嫌悪に陥ろうとしたが──

「よし!」

「うわっ!?」

「イカコ、今日からユーはオレのバディだ!」

 喜色を浮かべたロメロはイカコの腰をガッチリ腕でホールドして持ち上げ、くるくる回りだした。

「ちょっ、落ち着けロメロっ! 目が回るっ!」

「むぶッ」

 とにかくイカコは近くにあった牛柄のカウボーイハットをずらして、ロメロの顔に被せた。と、すぐに回転が収まる。

「すまない。オレとしたことが、はしゃぎすぎたぜ」

 そっとイカコを床に下ろし、ロメロはカウボーイハットを被り直した。

「ふん! そんなに嬉しいのか!」

「もちろんだ。セイカがこの世界に来る前に、召喚の下調べなどでザッソー兵達と各地に出没する大幹部のユーとは度々会っていたが、アジト(ここ)に乗り込んで()()()()()()()()()()()()()()のは、セイカが『法則』を見つけたからだな。約一年越しの努力が報われたんだぜ?」

「!」

 大幹部になってもイカコはずっと自分は次代の惑星王だと言い張っていたが、その身分は剥奪されるだろうと分かっていた。それをロメロは、そこから先のイカコの身の振り方を考えてくれていたというのか。

 しかも、記憶を無くしたロメロは「誰とも(つる)まない」と言っていた。なのに…………。

 イカコは胸がギュッとして、苦しくなる。

「ユーの気が変わらないうちに、ハンターギルドへ登録しに行こう」

 ロメロはイカコの手を取った。

 賞金稼ぎのギルドは、この月にもあるという。

「名前は……そうだな、『イカコ・ザ・ブルーローズ』なんてどうだ?」

 ファミリーネームを失ったイカコに、ロメロはいとも簡単に名付けてしまった。 

「可憐なユーにお似合いだと思うが、〝悪ノ華〟を思い出して嫌だったら──」

「いい。それでいい」

 〝悪ノ華〟の大幹部として犯した罪は、一生背負っていくつもりだ。それに可憐かどうかはさておき、付け方がロメロの故郷・デュラム星流なのも嬉しい。

「オレの『ハートブレイカー』は改名するか」

 ロメロはイカコを見つめて訊く。

 イカコが嫌なら改名までする気らしい。彼はどこまでも優しい目をしている。

「不要だ。貴様は貴様らしくあればいい。…………そんな貴様に惚れたのだからな」

 最初は毅然とした態度で言ったが、最後は流石に恥ずかしくて視線を落とし、声も小さくなってしまった。

「あー……」

 ロメロは上を向き、

「イカコが可愛すぎて、辛い」

と、繋いでいない方の手で顔を覆う。

 途端、イカコの赤面が増す。

「早く登録しに行こう。すぐに行こう」

 手を引いて、ロメロは歩き出した。

 長身の彼が大股でずんずん進んでいくので、イカコは懸命について行く。こちらを気遣うのがいつものロメロなのに、そんなに切羽詰まっているのだろうか。

 イカコは手を繋いでいる状態より、心情的にドキドキしてしまう。

「そして帰ろう。オレ達の愛の巣に」

 やっぱりロメロがおかしい。『愛の巣』ってなんだ。

「仕方のない奴だな」

 ()えて訂正はせずに、イカコは苦笑してロメロについていくのだった。


 賞金稼ぎのギルドでは当然、登録時に大騒ぎになった。片っ端から誘いを退けて、単身で活動していたあのロメロ・ザ・ハートブレイカーが、バディとしての青年を連れてきたのだ。それも、いわくつきの新人だ。

 噂はあっという間に宇宙を駆け巡り、ロメロとイカコは注目のバディとなった。

 始めの頃、イカコは妬み嫉みで嫌味を言われたり、嫌がらせをされたりもした。だがイカコは結果を出すことで、それらを黙らせた。

 ついには宇宙最強、宇宙で一番有名な賞金稼ぎのバディとなる。

 あまりにも注目を集めすぎて仕事に支障を(きた)し、『スティーヴ&マックス』あるいは『ステファーノ&マッシモ』と偽名を使ったが、なにぶん特徴も存在感もある二人なのでたいして効果は無かった。

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