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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
最終輪「何色にも輝く未来へ!」
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星の間②〜ヴァリーリアンとトミー〜

「ふう。やっと落ち着けますね」

 ヴァリーリアンは八つある応接セットの中から表面が布製のソファーを選び、ぐったりと座り込む。

「手間をかけたの」

「いえ、これも任務ですので」

 すぐに運ばれてきたアイスティーを、返事をしつつヴァリーリアンは三分の一ほど飲み、喉を潤した。

 トミーに下された刑罰は、『天の川銀河からの永久追放』と『魔法陣を作成・使用禁止・他者への提供不可』で、宇宙政府軍に所属し、ヴァリーリアンの監視下に置かれることとなった。

 ゆえに今日はトミーのラボから必要な物の回収をする任務で、月面の外れの都市に係留されている〝(アク)(ハナ)〟のアジトであった巨大宇宙戦艦を訪れていた。

 予想どおりラボは様々な物で溢れかえっていて、全部必要だとトミーは言う。頭が痛い光景だったが研究者として解らないでもなく、ヴァリーリアンは後から選別すると決めて、隊員にとりあえず全て運び出すよう指示をした。

 そして(ようや)く、休憩がてら噂の『星の間』に来られた。

「見事ですね…………『星の間』とは、よく言ったものです」

 黒い天井や壁面、床に星々が映り、宇宙空間に浮かんでいるようだとセイカやイクシアから聞いていたが、まさしくそのとおりだった。

 いるのは二人だけなので、贅沢な気分になる。

「わしは初めて来たの」

 トミーは今ハマっている抹茶ラテを両手で持ち、ストローで飲む。一人掛けのソファーに座り、床に届かない脚をぶらぶらさせて。

 フリフリのフリル付き白色ブラウスにサスペンダー付き半ズボン、ガーター付き靴下を穿いた、本日も紛うことなきショタっぷりである。

「そうなのですか? 勿体なかったですね」

「興味がなかったからの。それに、魔法陣やプラントロイドの製作に忙しかったしの」

 研究に夢中になっていると時間があっという間に過ぎてゆく。暇があったら研究に費やす。

 物作りをしている者や研究者あるあるだった。

「僕は貴方とこうして過ごすのも悪くはないと思うのですが……」

 半年弱、ラウンジで語り合った日々も気に入っているヴァリーリアンである。トミーは違ったのかと残念な気持ちになったのだが。

「わしも悪くはないと思うておるぞ。おぬしと議論するのも新鮮じゃし、ゆっくりするのも好きじゃ」

 トミーの研究分野は多岐にわたるも、ヴァリーリアンの知識量は半端ではなく、いつまでも話していられる。

「おぬしに世話を焼かれるのも心地よい」

 甘いものを食べては汚れた口元を拭ってもらったりするのは、ここ宇宙戦艦のラウンジでも特虹戦隊(とっこうせんたい)のダイナーや司令室でも、もはや日常風景と化している。

「そ、そうですか」

 沈みかけたヴァリーリアンは予想外の好意を向けられて、照れを誤魔化し眼鏡のブリッジを押し上げた。

 内心焦り、動悸よ治れ……と自分の心臓に言い聞かせる。

 ただでさえ金髪巻毛の美少年で天使みたいなのに、イクシアとセイカに王子系ゴスロリファッションでコーディネートされて、とんでもないショタコンホイホイに仕上がっている。

 それで実際は大人で、例に漏れず興味のあるものについて長々と語ってしまう研究者としての自分を分野が違うと嫌がらず、話も合い、悪の組織から足を洗ったとくれば、遠慮をする必要はない。しかし、恋愛などとは無縁の人生だったヴァリーリアンには、どうしたらよいのか分からなかった。

 実際には、スペクス星人の特徴を持ち青白い顔色をしているも、他の人種にもインテリ眼鏡のイケメンだと密かにモテていたのだが、知らぬは本人ばかりなり。稀少人種にしか目を向けなかったヴァリーリアンは、恋のアプローチを無意識にスルーしまくっていた。

 この見事な『星の間』に興味がなかったトミーを、どうこう言えないヴァリーリアンである。

「リアン」

 動揺している間に抹茶ラテを飲み終えたらしいトミーは、ひょこっとソファーを降りてヴァリーリアンに近寄り、両腕をまっすぐ伸ばした。『抱っこ』を強請っているのだ。

 これまでよくしてきていたので、別段珍しくもない。けれども「今か」とヴァリーリアンは参ってしまう。

「なんじゃ。もうわしを甘やかしてはくれんのか?」

「い、いえ。そうではありませんが……」

 二百二十五歳にもなって甘えてくるトミーが可愛すぎて、辛い。ヴァリーリアンはすっかり合法ショタの虜になっていたが、今はまずい。

「もうよい。自分で上がる」

 いつも脇の下に手を入れて持ち上げ、抱っこしてくれるのに、一向にその気配のないヴァリーリアンに痺れを切らしたトミーは、靴を脱ぎ散らかしてソファーに上がる。

「ト、トミー」

 なぜだか焦るヴァリーリアンを余所に、トミーは彼を跨ぎ、両腕を脇の下に、両脚を胴に回して、ギュッと抱きつく。

 まるで動物の仔が親にしがみついているようだと、仲間や素顔のザッソー兵達に微笑ましく見守られていた。が。

「…………リアン」

「済みません…………」

 巻きついているトミーの身体は当然、ヴァリーリアンの脚の付け根に乗っている。躊躇った原因が服越しに判った。

「若いの」

「……本当に済みません」

 超間近で見つめられ、気まずいなんてものじゃないヴァリーリアンは顔を逸らして片手で覆った。

 トミーの臀部の下は、やけに硬く盛り上がっている。

「謝るでない。むしろ感心しておるぞ。このわし相手に、()()()()()()()()が起こるとはの」

 ヴァリーリアンがショタコンでないのは、この半年弱の付き合いで知っている。合法ショタだからといって嬉々として手を出してくる輩とは違うと。

 トミーはますますギュッとしがみついた。

「うっ……、ト、トミー……!」

「わしは嬉しい。子供扱いしないおぬしが()()()()()()()()とは」

 首と肩の間にぐりぐりと頭を押しつけて、トミーは甘える。そして、

「わしが処理してやろうかの?」

と、ヴァリーリアンの唇をペロリと舐めた。

「トっ、トミーっ!」

 非難するヴァリーリアンの意志とは裏腹に、下腹部の盛り上がりは更に酷くなった。

 トミーにしては珍しく、声を上げて笑った。


 その後、鼻歌でも歌い出しそうなご機嫌なトミーと、彼に手を引かれているやけにぐったりしたヴァリーリアンが下船していった。

 巨大戦艦の入り口で立哨していた二人の宇宙政府軍の軍人は、幻とさえ言われるソレイナム星人でありマッドサイエンティストでもあるトミーを伴ってのラボの片付けには相当疲れたのだろうと推察し、ヴァリーリアンに向かって「お疲れ様です!」とビシッと敬礼した。

 真実は他人(ひと)に知られたら大変まずいことをしていたのだが、運良く誰にも目撃されなかったのだった。

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