決着
長かったのか、短かったのか。
〝青の薔薇〟とロメロは、二人だけの闘いに没入していた。
その末、ロメロが放った一撃で、刀身が折れて飛び、近くの植え込みに刺さった。
「……勝負がついたな」
柄を握った〝青の薔薇〟は、中程から刃が無くなった剣をじっと目にし、やがて鞘に戻した。
最初から勝てるとは思っていなかった。
記憶をなくす以前も今も、ロメロは手加減をしていた。
ただ一度、負けるにしてもはっきりと、決着をつけておきたかったのだ。完全に〝青の薔薇〟の我が儘だ。
「…………ありがとう」
ロメロは変わらず付き合ってくれた。
どうってことないぜ? と嘯き、くるくる回して二挺の拳銃をホルスターに収めるロメロに、〝青の薔薇〟は改めて胸が一杯になるのだった。
一方、セイカと〝白の廃園〟の闘いは──
「よし! 手を出しましたね!」
素早く連続して蹴りを入れ続けていたセイカの攻撃は、どんどん速度とキレを増し、さしもの〝白の廃園〟も危険を感じて漸く手で受け止めた。
「まったく貴方は……驚異の集中力ですね」
〝白の廃園〟は苦笑する。こちらは攻撃も反撃もする気はないと伝えている。特別に好かれていると思っていたのは間違いだったのか。
なんにしても若いなあと、セイカを眺めてしまう。
今は特虹戦隊の制服姿だが、普段のロリータファッションでも躊躇いなく闘いに突入していただろう。それが解るくらいには短いようで長い付き合いだ。
「気は済んだかしら」
頃合いと見てとったシャーリー司令官が、モデル歩きでこちらに来た。
「ソフィーさん、やりましたよ!」
「見事な連続技だったわ……素敵。わたくしと郷で戦士として一緒に暮らすべきよ」
ディヴァースパープルは変身を解いてセイカに近寄ると、どさくさに紛れて抱きついた。
セイカは足技を強化すべく、ソフィーに教えを乞うていたのだ。
「貴方の指南でしたか。というかセイカさんを離してください。変に誘惑もしないでください」
「なぜ……? セイカは嫌がっていないわ」
まったく余計なことをしてくれたと、〝白の廃園〟は冷めた目でかつての同僚を見下ろす。ソフィーはソフィーで小煩い蠅を無視する体で、抱きしめたセイカを愛しそうに見つめたままだ。
視線は合っていないのに、火花がバチバチ散っている。
「あのネ、そういうのは後で存分にやってちょうだい」
シャーリー司令官は天を仰いで、額に手の甲を当てて呆れた。
「〝青の薔薇〟と〝白の廃園〟、宇宙政府軍に従ってくれるわネ?」
「ああ…………」
「若の御心のままに」
〝青の薔薇〟は力無く了承し、〝白の廃園〟はあくまでも従者の姿勢を崩さない。
シャーリー司令官は頷き、
「〝青の薔薇〟と〝白の廃園〟を、確保!」
と二人に向かって手を伸ばし、特虹戦隊の隊員に命じた。
「は!」
変身しない通常の隊員達は〝青の薔薇〟と〝白の廃園〟の両腕を各一人ずつ拘束し、前後にも身張りが配置される。手錠がされないだけマシな対応と言えるだろう。
「ソフィーちゃんもアタシと一緒に、彼らについていてもらえるかしら」
「……シャーリー以外のオスは嫌いだけど……セイカは今から忙しいものね」
「その通りヨ! 物分かりがいいコは好きだワ!」
すっかり特虹戦隊に馴染んでいるソフィーである。
二十代半ばのソフィーを『子』扱いするのも、シャーリー司令官らしい。
「じゃあロメロさん、仕上げにいきましょう!」
「O.K.リーダー、変身ブレスだな?」
「そうです! いきますよ!」
『ディヴァースチェンジ!』
セイカとロメロは仲間の元へ走りながら変身した。
「……記憶喪失なのに、息が合うな」
「アラアラ、嫉妬しなくてもいいのヨ? あのコ達は一年近く共に戦ってきたの。アナタも間近で見てきたデショ? ちょっと記憶が無いくらいじゃ、ディヴァースⅤの絆は揺るがないワ!」
特虹戦隊の上官であるシャーリー司令官は得意顔だった。実際、自慢の部下達だ。バラバラで強烈な個性の塊であるというのに、お互いを尊重し纏まっているという、奇跡のごとく素晴らしいチームなのだ。
四人をスカウトした末に、セイカが加わった。彼女を召喚したのは〝悪ノ華〟だが、保護ではなく戦士にスカウトしたのは自分だ。自画自賛する訳ではないが、自分の人を見る目が確かだったのも誇らしい。
『スーパーファイナルDブラスターショット』
シャーリー司令官をはじめソフィーと非戦闘員の隊員達、〝青の薔薇〟・〝白の廃園〟が見守るなか、五人の戦士はブルーコーンロイドに必殺技でトドメを刺した。
その後、セイカによってバトルフィールドが展開され、巨大化したブルーコーンロイドは五本の指の中からポップコーン爆弾を放ってきたが、ディヴァースロボは剣で全てを切り捨て、必殺技『ハイパーレインボービーム』で倒した。
ブルーコーンロイドの最期の言葉は「みんなが食べているトウモロコシの一粒一粒は種だぞ────!!」だった。




