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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第44輪「二人は二度恋をする」
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湾岸の決斗

 〝(アク)(ハナ)〟が攻めてきたのは、その週ギリギリの日だった。やはり記憶喪失のロメロを擁する特虹戦隊(とっこうせんたい)を慮ったのだろう。

 悪の組織に気遣われるヒーローとは。

 セイカは遠い目をした。

 今日は快晴。青空にさぞ爆発が映えるに違いない。

 いや、ここではあまり派手な爆破は多用できないか。

 特虹戦隊ディヴァース(ファイヴ)は今、近年の特撮のロケ地では定番中の定番である、外側に四、五本の歯が抜けた櫛を横にして地面に突き立てたようなモニュメントがあるビルが背後に見える広場に、〝青の薔薇〟と〝白の廃園〟、そしてプラントロイドとザッソー兵達に相対していた。

 この場所を〝悪ノ華〟が指定してきたのだ。

「………………」

 風が吹き、対峙する両軍の間にタンブルウィードが転がってゆく。

 完全に西部劇状態だ。

 場所が近代的な(まず地面が土じゃない)のに、なんであんな物がと思ったら、風上からザッソー兵の演出班が数個のタンブルウィードを放っていた。

 セイカは更に遠い目をした。

「宇宙政府軍から連絡は入ったデショ? アナタ達の惑星は解放されたと」

 今日もショッキングピンクが目に優しくないコートを着たシャーリー司令官が、中央の一番前にモデル立ちして問いかけた。

「〝青の薔薇〟──アナタのお父サマも姿を見せて、直接話せたはずヨ」

「……ああ。分かっている」

 〝悪ノ華〟の中央に立つ〝青の薔薇〟は目を閉じて応えた。そして、

「これは、私なりのけじめだ」

と言うと、強い瞳でロメロを見た。

 (しば)し、両者は無言で視線を交わす。

 ここは絶対マカロニウエスタンな曲が流れるよね、とセイカは番組の編集を予想した。どんな戦隊モノでもマカロニウエスタン調の曲は必ずある。子供向けのアニメでも一曲は入っていることが多い。

 どれだけマカロニウエスタンが好きなんだ日本人、西部劇全盛期に生まれていない作曲家も編集者も多いのに。始まりは日本映画界の巨匠が作った映画だが、イタリアを経由して帰ってきたらとんでもないブームになった。音楽だけでなく、「どこだよこの日本!」とツッコミ満載の西部劇風映画がそれはもう沢山作られた。叔母に観せてもらったので、セイカは知っている。

 特虹戦隊の戦いを纏めた毎週の番組でも、ロメロが主に活躍した回はマカロニウエスタン的な曲が使われる。

 どうやらこちらの進んだ世界でも、まだまだマカロニウエスタン好きの熱は冷めていないらしい。

 ま、それはともかく。

「戦うしかないようだな」

 〝青の薔薇〟の瞳を見返すロメロは彼の意を汲んだ。

 宇宙政府軍に(くだ)るとしても、勝負の決着をつけたいのだと。

「〝青の薔薇〟様、他の奴等はこのブルーコーンロイドにお任せを」

 頭部は一見してトウモロコシと判るが色が珍しく青で、頭頂のひげがちょっと可愛さを醸し出していなくもない、粒が綺麗に並んだ実に悪い顔がついたプラントロイドが、一歩前に出た。

「作戦どおり、プラントロイドとザッソー兵はボク達で!」

「セイカさんとロメロ、健闘を祈ります」

「はい!」

「ああ。なんとかやってみるさ」

 ロメロはカウボーイハットの座りを直した。

『ディヴァースチェンジ!』

 イクシア・ヴァリーリアン・エフェドラに、ソフィーを加えた戦士達が変身する。シャーリー司令官は後方に下がった。

 セイカとロメロは、素顔の戦士でいる。

「なぜ変身しない!」

 ディヴァースオレンジ達とブルーコーンロイド率いるザッソー兵達が戦う中、〝青の薔薇〟が腰に履いた剣を抜いてロメロに向ける。

「ユーがしていないのに、オレが強化して戦ったら、格好悪いだろ?」

 ロメロは左右の回転式拳銃(リボルバー)をホルスターから抜き、くるりと一回転させて手に収めた。

 そして、どちらからともなく相手に向かって走りだした。

「おっと」

 接近したロメロが攻撃の範囲内に来ると、〝青の薔薇〟は剣で突く。それを余裕で避けて、〝青の薔薇〟の懐に入ろうとしたロメロは、横に薙いだ次の攻撃を二挺の拳銃で受け止めた。

 力が拮抗し、火花が散る。

「貴様っ、記憶は戻ったのかっ!?」

「いいやッ、まだだなッ」

「そうかっ」

「ッと」

 急に剣を引かれ、その刃で足払いがきた。ロメロは押していた力を利用して前転し、刀身から逃れて地に右膝をつけ、拳銃を構える。

「どうした! 撃ってこい!」

「いやいや殿下は撃てないな」

「……っ!」

 剣での攻撃を躱したり受け流したりして、合間に攻撃ができる機会があっても、ロメロは拳銃を一発も撃たない。しかも記憶をなくす前と同じことを言う。

 〝青の薔薇〟は内心、動揺した。


「今日こそ闘ってもらいますよ、〝白の廃園〟さん!」

 こちらも変身していないセイカが、勢いよく〝白の廃園〟に向かっていった。

 この機会は最初で最後かもしれないのだ。

「やれやれ。お転婆なお嬢さんですね」

 いつも後ろの腰の辺りで手を組んでいる〝白の廃園〟は、弱った顔をした。

 あれだけセイカとは闘えないと宣言しているのに、嬉々として攻撃してくる。

「わたしの一年近くの修行の成果を見てください!」

「解りました。見るだけですからね?」

 セイカと〝白の廃園〟の闘いは、武器の使用はなし。素手での勝負だ。

「────ッ!」

 予想はしていたが、セイカの攻撃は一発も当たらない。突き、打ち、回し蹴り、足払い……あらゆる攻撃を〝白の廃園〟は両手を後ろで組んだ格好で、すいすい避けてしまう。

 ──強い。

 拳法映画の師匠と弟子だ。せめて攻撃を手でいなすか受け止めるくらいはさせたいが、〝白の廃園〟は足捌きだけで相手をしている。本当に「見るだけ」の状態だ。

 セイカはギリ、と奥歯を噛んだ。

「決斗」は「決闘」の間違いですが、あえて西部劇の雰囲気を出すために「斗」にしました。

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