お土産は
〝紫の百合〟率いる〝悪ノ華〟の一団が現れたとの報があり、五人の戦士と一角獣人の長老、そして長老の護衛としてシャーリー司令官も共に出撃した。
場所は、特撮ヒーローモノの初期には頻繁に使われていた採石場だ。これは爆発が派手に多用される予感がする。
「ハーハッハッハ! そらそら食え!」
「そっ、そんなっ。メインの肉はっ!?」
「付け合わせだけだなんてっ!」
「しかも紫っ!?」
「もごもごもごっ!」
「肉や魚ばっかり食って、キャベツを残す奴には罰だ!」
ザッソー兵は採石場で働く人々を捕まえて、こんもりと盛られた千切りキャベツのみの皿から、キャベツを箸で摘んで食べさせている。そのキャベツはお馴染みの緑ではなく、切り口が白くて輪郭が紫色だった。
「やめなさい!」
「肉に添えてあるからこそ、美味しく食べられるというのに……」
「イイ男は付け合せも残さないぜ?」
「紫でしょ? せめてサラダにしようよ!」
駆けつけたセイカ達はザッソー兵を蹴散らして、人々を解放する。
「さ、早く逃げて!」
「あっ、ありがとうっ」
「もごもご!」
労働者を避難させると、紫キャベツに悪い顔がついた頭部のプラントロイドが憎々しげに言う。
「出たな〜ディヴァースⅤ! 俺様はムラサキキャベツロイド!」
「長いな」
「長いですね」
「早口言葉?」
「あの頭、剥けそうネ」
離れたところから見ていたシャーリー司令官まで口撃に参戦した。
「ええ〜い、うるさい! 勝負だ!」
「望むところです!」
『ディヴァースチェンジ!』
セイカが掛け声をかけなくても皆揃って変身する。十ヶ月も一緒に戦っていれば、自然と息も合ってくる。
「異世界からの勇者! ディヴァースレッド!」
「カワイイは正義! ディヴァースオレンジ!」
「眼鏡は衣服です。ディヴァースアクア!」
「調教されたい奴は誰だ? ディヴァースシルヴァー」
「デュラムから来た用心棒、ディヴァースゴールド!」
〝悪ノ華〟の演出班に懇願され、昭和方式で急斜面の上で名乗る。
下からのカメラに映るにはギリギリで立たなくてはならないため、キメポーズの動きが激しい戦士は結構危ない。けれどもディヴァースオレンジは平気で後方宙返りをし、片足立ちの猫ポーズを決めた。立って眼鏡のブリッジを中指で押し上げるだけのディヴァースアクアの方が兢々としている。
なお、一本鞭の柄を左手で、右手でピンと張るように鞭を持ったキメポーズのディヴァースシルバーは、見下げるアングルでドS度が倍増、宇宙中のドMファンが悦んだことを付け加えておく。
「希望を架ける虹の戦士!」
『特虹戦隊ディヴァースⅤ!』
背後で虹色の大爆発が起こった。
爆風も足場的に危ないが、小柄なセイカもなんとか耐えた。
「たあ!」
「とうっ!」
「ソ───ッ!!」
そのまま戦いに傾れ込めば、案の定、やられたザッソー兵は次々と砂利でできた急斜面を転がってゆく。
今日はやけに張り切っているなあ……とセイカは戦いながら思った。たぶん、エフェドラの部下が手を回しているのだろう。
そうしてザッソー兵を倒して下の広場に五人全員が揃うと、待ち受けていた〝紫の百合〟がプラントロイドに命ずる。
「ムラサキキャベツロイド、やっておしまい!」
「お待ち」
そこに特虹戦隊の誰でもない声が響いた。〝紫の百合〟がピクリと反応する。
「ソフィー、苦労をかけたね」
「……長老さま!?」
五人の後方──シャーリー司令官の背後から、ぐるりと巻いた持ち手の木の杖をついた老女が姿を現した。
「何故ここに!?」
「あの胸糞悪い傭兵団を宇宙政府軍が潰してくれたからさ。集落はどこも解放されたんだよ」
「嘘…………」
〝紫の百合〟は驚きすぎて動けない。
その隙に、ディヴァースⅤの五人は目配せして、ディヴァースオレンジ以外の戦士はムラサキキャベツロイドを抑えにかかった。
「お前さんのことだ、素直に信じられんと思って、こうしてワシが老骨に鞭打って遥々地球までやってきたのさ」
「お姉さん、これを視て!」
シャーリー司令官からタブレット端末を受け取ったディヴァースオレンジは、助走をつけて跳び上がり、空中で一回転して一気に〝紫の百合〟との距離を詰め着地すると、現地の様子が映っている画面を見せる。
『あ! ソフィーお姉ちゃんだ!』
『ホントだ! ソフィーお姉ちゃん、元気?』
『こっちはみんな元気だよー!』
我先にと、短い一本角が額にある子供達が寄って集ってきた。明るい声が沢山聴こえる。
『こらこらお前たち、村の様子を見せなきゃ駄目だろう』
『そうだった!』
『見て見て! お姉ちゃん〜! 村は平和になったよ!』
『あのね、あのね。うちゅうせいふぐんとかゆーひとたちが、あのヤなやつらをおいはらってくれたの!』
『ぜぇ〜んぶの村、からだよ!』
「………………」
言葉もなく、〝紫の百合〟は画面を見入っている。
『ソフィー、辛い役をさせてしまったな。こちらはこの通り、もう大丈夫だ』
『宇宙政府軍の方々のおかげで、どの集落も平和を取り戻したわ。欠けているは、あなただけよ』
〝紫の百合〟の友人なのか、同じ年頃の立派な角を持った男女も現れて呼びかけた。
離れたところで戦っているムラサキキャベツロイドやザッソー兵が「キャベーッ」とか「ソーッ」とか悲鳴を上げているが、まったく聞こえていない。
画面に映るのは、家々の前で雑談をしながら家事に勤しむ人々。走り回る子供たちを年長者が見守る、以前と変わらぬ長閑な村の姿。
夢みたいな光景が、そこにあった。
「夢じゃないよ、ソフィー」
長老が〝紫の百合〟の心を読んで、一歩前に出る。
「もういいんだ。もういいんだよ」
「長老さま…………」
労りの言葉をかけられて、〝紫の百合〟は胸の辺りで右手をぎゅっと握った。
「〝紫の百合〟、いえ、ソフィー」
今度はシャーリー司令官が進み出て、
「諸悪の根源に一矢報いましょう。──長老サンからの『お土産』よ!」
と高らかに声を上げ、頭上で指を鳴らした。
すると、どこからともなく宇宙政府軍のヘリコプターが現れた。下に涙型の何かがぶら下がっている。




