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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第40輪「紫の戦士!」
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一角獣人の長老

「初めましてだのう、特虹戦隊(とっこうせんたい)の方々よ」

 その人は(しわが)れた声で挨拶した。

 折り曲がった腰に持ち手がぐるりと巻いている木の杖をつき、床に届きそうなほどの長い白髪をした、ファンタジーに出てくる隠者ような姿をしていた。頬まである前髪で両目が確認できないのが、額の真ん中から螺旋状に伸びた白い角の存在を一層際立たせている。

 一目で一角獣人(モノセロス)と判る御仁だ。

「コチラ、見てのとおり一角獣人の長老サンよ」

「気軽に『長老』と呼んでくだされ」

 シャーリー司令官が手で指し示すと、長老は「ヒヒヒヒーン」と笑った。

 隠者ではなく魔女感が強くなった。

「モノセロスの長老さん!? てことは……!」

 イクシアが期待に猫目石色クリソベリル・キャッツアイの瞳を輝かせる。

「そう。(ようや)く一角獣人を見張っていた傭兵団を駆逐する許可が出て、集落の全てを解放できたの」

 ちょっと得意げにシャーリー司令官は朗報を伝えた。

「やった!!」

「よかった……!」

「めでたいぜ」

 イクシアは両手を握り、セイカはホッと安堵し、ロメロは人差し指と中指を揃えて牛柄カウボーイハットの鍔を少し押し上げる。

「一人の瑕疵もなく、済んだのでしょうね?」

 ヴァリーリアンは慎重だった。宇宙人類学者は新しく見つかった種族の保護について厳しい。

 〝紫の百合〟から判るとおり、一角獣人は美しい容姿をしている。有閑令息達(うえ)から止められていても、()()()()()()使()()()()()がバレなければいいと無体を働くのは明白だ。

 それに答えるのはシャーリー司令官ではなく、長老だ。

「そこのお若いの。われらを侮るでないぞ」

 杖の持ち手をヴァリーリアンに向け、

「あの様な脳みそまで筋肉でできておる馬鹿どもに、遅れをとるわれらではないわ!」

と、凄まじい怒気を放った。

 その小さな老体のどこにそんなパワーがあるのかと、ヴァリーリアンを始めセイカ・イクシア・ロメロも驚く。

「ミンナ、〝紫の百合〟を、彼女の身体能力──特に蹴りを思い出して? 彼女は一角獣人の中で一番強い戦士だったから大幹部にさせられたワケだけど、他の人達も相当ヨ? 幼い子でもね、強烈な蹴りで奴等を撃退していたワ」

「そのとおり。無礼なオスどもなんぞ、村には一歩たりとも入れとらん」

「もちろん、誰も連れ出されたりもしてないわヨ。軍で見守っていたのがムダだったくらいヨ?」

 ユニコーンって本来、乙女以外には獰猛だものネ。とシャーリー司令官は頬に手を当てて言う。

 確かにそうだ。子供向けのキャラクターや『ゆめかわいい』のシンボルになったりしているので忘れがちだが、元々ユニコーンは伝説の危険な生き物である。

 一角獣人も多分にその性質にあるようだ。

「われらは穢される事態に追い込まれようものなら、自刃を選ぶものである」

 長老は杖をとん、と床につけ、ぐるりと巻いた持ち手に両手を置いた。

 ヴァリーリアンの軍の対応を追及する一言が、逆に彼女を怒らせた。とても誇り高い種族と分かる。

「失礼しました。(いち)軍人の心配など無用でしたか。お詫び申し上げます」

 六角テーブルの席に着いていたヴァリーリアンは立ち上がり、頭を下げた。

 日本人でもない彼がそうして謝罪するのは、長老だけでなく一角獣人を敬ってのものだ。

 シャーリー司令官も援護する。

「長老、彼は宇宙人類学者なの。アナタ達を見縊(みくび)って発言したんじゃないのヨ」

「ふむ……謝罪は受け取った。ではこの話は終わりだ」

 長い前髪の向こう、鋭い眼差しが和らいだのが感じられる。

 戦士四人は胸を撫で下ろした。

「でネ、長老サンにわざわざお越しいただいたのは、〝紫の百合〟に一角獣人は解放されたと信じてもらうためなの」

「方々が伝えても、あの子は信じぬだろう。ワシらは疑り深いからのう」

 長老はまた「ヒヒヒヒーン」と笑う。

「なるほど、そこで長老の出番なんだな」

 ロメロは指を鳴らした。

 セイカも頷く。

「直に言われれば、信じない訳にはいかない、と」

「そうなの。それに加え、コレで現地と通信して、生で彼女の知り合いや集落の様子を見てもらうつもりヨ」

 シャーリー司令官はA4サイズくらいのタブレット端末を肩の高さに掲げる。そして、

「今週は〝紫の百合〟が出てくる番。そこで満を持してイクシア、アナタの出番ヨ!」

と、名探偵が犯人を特定するみたいな気合でイクシアを指し示した。

 フリースペースにいたイクシアは、二、三歩助走をつけて飛び上がると前方宙返りして六角テーブル前でスタッと着地し、

「この時を待ってたよ! もう、遅いくらいだよ! ソフィーお姉さんのフォローはこのボクに任せて!」

 左手をぐっと握って変身ブレスをしている腕を見せる。

 やっとだ。この十ヶ月、〝紫の百合〟にアプローチし続けて、けんもほろろな状態からまともに接してもらえるまでになった。

 それだけ頑張っても、まだセイカや『乙女の花園』の女の子達には負けるだろうけれど。

「絶対にソフィーお姉さんを悪の組織から救ってみせるんだからっ!!」

「ヒッヒッヒッ、頼もしい()()よのう。ソフィーが邪険にするのも苦労しただろうて」

 長老が魔女的な笑いをし、意味深な発言をした。が、イクシアは意気込んでいて残念ながら聞いていなかった。

「ま、『お土産』もあるコトだし、大丈夫だとは思うけど。百パーセント成功させるために、作戦会議といきましょ」

 両手を斜めに合わせて、シャーリー司令官は言った。

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