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異世界で戦隊ヒーローのレッドをやっています!〜特虹戦隊ディヴァースⅤ〜  作者: 天ノ河あーかむ
第31輪「二人の過去」
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詳しすぎる愛好会

 それを見つけたのは偶然だった。

 大幹部の地球征服の作戦を立てること、そして自らも出撃するのが〝緑の指〟としての仕事だ。けれどもそれが終わると、自由である。しかも結構時間がある。

 自分の出撃は来週だし、作戦も来月分まで練り終わっている。後は〝黄の庭師〟が造ったプラントロイドの確認作業がちょくちょく入るくらいだろう。

 なので、暇ができると故郷のルーツである地球の現状を調べていた。興味が涌けば、現地にも降りる。

「──は? 『機械生命体愛好会 会員募集中』!?」

 〝緑の指〟は信じられないものを目にして、思わず声を上げた。それくらい、有り得ない内容だった。

 だが、何度見直しても、そのホームページは幻として消えたりしない。画面の表示が変化したりもしない。

 最初に持ったのは、疑惑だった。

 確かに、故郷の人間の大半は祖先が地球人だ。

 遠い昔、彼等が故郷の惑星に降り立ち、隈なく調査した結果、巨大な機械生命体を発掘した。それには操縦席があり、兵器と思われた。だが、蘇った機械生命体には意志があり、動物と何ら変わりなかった。

 彼等は自然に棲むもの、己の意志で乗せる人間を選ぶもの、単に軍用の兵器・愛車的に使われるものもおり。エンターテインメントのバトルなどでも活躍し、故郷の人間は自分の機械生命体を持つことが一種のステータスとなっている。自然の動植物と共生しているものは、機種によっては生態系の頂点に立つ。

 ──それが、この遠く離れた地球にいる、だと?

 機械生命体は大昔から輸出禁止だ。

 ホームページには、愛好会の熱意が認められ、祖先の故郷に友好の証として特別に贈呈されたとある。堂々と会員を募集していることから密輸などではないだろうが、表向きではなんとでも言える。

「一度、行ってみるか」

 〝緑の指〟は機械生命体乗りのライダースーツに着替えるべく席を立った。

 心が真っ赤に燃えるようだ。

 思い出すのは、()()()の焦燥と怒りだ。

 しかし、平静を装わなくてはならない。自らの目で、真実を見極めるために。




 その地は荒野に赤茶けた奇岩が点在する、ありふれた故郷の風景に非常に似ていた。

 ここならば、巨大な機械生命体同士のバトルが気兼ねなくできるだろう。

「やあ、よく来てくれたね。私は会長の松平だ」

 そう言って、焦茶色の髪に青い瞳の男は右手を差し出した。

 歳の頃は三十代後半くらいだろうか。なかなかの美丈夫だ。人を纏めるに相応しい懐の大きさを感じさせる。

「よろしく頼む」

「それはこちらのセリフだ。まさか、地球で本物のライダーに会えるとは思ってもみなかったよ。きみで二人目だがね」

 〝緑の指〟がその手を握り返すと、松平はギュッと力を込めた。

 ──二人目?

 嫌な予感が過ったが、まずはこの愛好会が白か黒かの見極めだ。

「ですね、会長! 本場の戦いが生で見られる日が来るなんて!」

「いや〜、やっぱり本物のライダーは違うな! 俺たちのこのライダースーツも君の故郷から取り寄せているんだが、どうしても『着られてる』感が強くてな」

「うむ、本物のライダーは違和感なく着こなしていますな!」

 他の会員達も寄ってきて、キラキラした目を向けてくる。熱烈大歓迎である。

 〝緑の指〟として顔は売れているし、今更隠すのも馬鹿らしいかと名前だけ偽名にして、懐かしいから乗りにきたと告げたらこの反応だ。

 そう。今日は飛び入り参加も可能な日なのである。

 ホームページに記載されていた活動内容によると、バトルをするのは月に四回。第一土曜日は一般人参加可イベントを開催。第二・第三土曜日は愛好会の会員のみでのバトル大会。第四土曜日は本場のバトルを観戦後、チーム戦を行うとあった。

 今日は第一土曜日で、『キミもライダーにならないか!?』『エントリー受付中』と告知されていたとおり、初心者でも試乗が可能らしい。他にはバトルを見学でき、子供が操縦席に乗れる(座れるだけだが)のも人気だ。

 ライダー姿の会員やその家族、子供連れの一般客も多く、来場者目当ての屋台やキッチンカーも出ていて大変賑わっている。

「地球でもあなたの故郷のバトルが観られるようになりましたからね! オレ達、その日は集まって、生放送に齧りつきですよ!」

 なんでも、愛好会がコネや権力を使いまくって各方面に働きかけた結果、遠い地球でもエンターテインメントのバトルがライヴ放送されるようになったのだとか。

 ──こいつ等、純粋に機械生命体フリークか?

 ホームページには会発足の経緯(いきさつ)・活動の歴史・機械生命体の全機種について詳細な解説が載っており、非常に機械生命体への愛が伝わってきた。

 正直、故郷からこんなに離れた地球でここまで機械生命体に詳しい奴等がいるとは! と驚いた。

 そして実際に会ってみれば──コレだ。

 ライダーをしていたから判る。熱狂的なファンだ。マニアである。

 だからこそ、それがどんなに難しくとも正攻法での実現を目指すのか。違法な手段を用いてでも我が物にしようとするか。

 彼等からは前者の自負が、誇りが、どれだけアホそうに浮かれていても感じ取れる。

「十二機も所持しているらしいが、どこでそんなに調達したんだ?」

「おや、警戒させてしまったかな? 機械生命体は昔から輸出禁止だからね」

 ズバリ切り込むと、松平は怒る風でもなく、

「まあ、我々の熱意が伝わったとしか言いようがないな」

と、肩を竦めた。

 食えない男だ。この辺境の惑星で詳しすぎる愛好会の会長をやっているだけはある。

「後ろ暗い会ならとっくに宇宙警察や宇宙政府軍に潰されてるっすよ」

「……そうだな」

 これだけ大っぴらに活動していれば、それらに見逃されるはずもない。

 ()()()()()()があったから、尚更だ。

「きみの故郷以外ではこの地球にしかいない、というのが我々愛好会の誇りだ」

 松平は自信を持って〝緑の指〟に相対する。

 ホームページにあったように、故郷の星に住む人々の殆どが地球人を祖先としているからこそ、譲り受けられた。しかしその実現は、我々愛好会の真摯な熱意があったからこそだ、と。

 自分を前にして、愛好会の誰もが堂々と誇り高くいる。

 どうやらこの会は、白とみていいだろう。

 〝緑の指〟が納得したと察した松平は口を開く。

「ではボル君、今日は試乗ということでいいかな?」

「ああ」

 ボルとは、〝緑の指〟の偽名である。

 〝(アク)(ハナ)〟の大幹部にしては地味で人気がないのは自覚しているが……彼等は気付いているのか、あえて知らないふりをしているのか。

 ()()()()()()についても、詳しすぎる愛好会が把握していないとは思えないが──

「どの機種に乗っていた? うちが所有している中にあるかい?」

「俺が乗っていたのは、翼竜タイプの機竜だ」

 機械生命体には機竜・機獣・機鳥・機魚・機虫などの種類がある。

「おおっ、空のライダーっすか」

「運がいい。一機所持しているが、乗り手がいなくてな。前からライダーを探していた」

 是非乗ってやってくれと勧められる。

 どの機種にも個体差はあるが、空を飛ぶタイプは操縦が難しい。特に竜種は気位が高く、ライダーが気に入らないと暴走する危険もある。

 本場のライダーとしてのお手並み拝見という空気が伝わってくるので、ここはさらっと乗りこなしてやろうじゃないか。

 〝緑の指〟は八年ぶりに機竜に乗れるとあって、らしくなく高揚していた。やはり元ライダーとしての血が騒ぐ。

「それから、もう一人の本物のライダーだが」

 フィンガーレスグローブを締め直していると、松平が気になっていた情報を口にする。

 半年くらい前にふらりと現れた『ミズタニ』と名乗ったその人物は、仕事柄素性は明かせないとしながらも月に一度は必ず顔を出し、バトルに参戦しているという。

「我々も熱意では負けないつもりでいたが、全員で掛かっても全く歯が立たん。きみと同じで久し振りに乗ると言っていた初回から……な」

「ああ……アレはないっす」

「ジェノサイドかってくらい、容赦ないよな」

「毎回な」

 その時々の惨状でも思い出したのか、松平とその仲間達は遠い目をした。

「今日はちょうど来てるっす」

「バトルフィールドのどこかにいるはずだ」

 戦闘ができる場所は当然危険なのでここから遠く離れたところにあり、一般人はこの会場に設置された大型屋外ビジョンで観覧できる。

 愛好会が所持している機体は兵器とみなされるのを避けるため、素体のままのものが多い。それでも各種武器を使うため、危険なことには変わりない。

「だからボル君、きみには期待している」

 ぽん、と肩に手を置かれ、〝緑の指〟は呆れた。

 何が「だから」なのか。気持ちは解らなくもないが、今日の自分は試乗体験の身である。

「いや、俺も八年のブランクがある。あまり期待されても困る」

 そう言い置くと、初めて乗る翼竜タイプの機竜をすんなり操って、バトルフィールドへと飛び立つのだった。

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